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羽生結弦選手の演技動画でジャンプを見分ける! その1 ~ジャンプの種類と特徴~

2020-10-13 | フィギュアスケート技術と羽生選手

このページは、2015年2月に初掲載したページです。

それまで、フィギュアスケートでは、某人気選手に対する、一部の「色気目的」の自称ファンばかりが激増し、その人たちが長年にわたって羽生選手を散々馬鹿にし続け、ジャッジをこきおろし、文句を言い続け、ネット上でも現実の場でも、羽生選手へ侮辱と暴言と悪魔呼ばわりを繰り返し、徹底的に苦しめてきていました。

「羽生選手が好き」だというと、こちらを一方的に「にわか」と決めつけて馬鹿にしてくるような人たちが大勢いる、そんな「異常な状態」が続いたのです。いやいや、その人たちよりもはるかに、ずっと長く見ていた人たちの多くは、羽生選手の凄さにとっくに気づいていたと思いますけどね!

当時の誹謗中傷は、本当にもの凄かったのです。でも、当時、誰かこれをきちんと止めた人がいたでしょうか?

そのうち、その人気だった某選手自らが、「どんなに騒がれても、本当に応援されている気がしない」と、公の場で、明確に言い出すようになりました。これにより、その一番ひどい人たちの一部は姿を減らしていきました。某選手は、大変だったと思いますけど、これは本当に、有難かったですね…!

また、2014年の中国杯で羽生選手が大怪我を負った際、その状態で無理をすると将来が危険だと、立場を思いやって言いにくいことをハッキリと言って下さったのが、他でもない、プルシェンコさんと、この某選手だったんですよね。私はよく覚えています。誰よりも覚えているのは、羽生選手ですよね…♪

例えば、体操選手たちがもし、もっと女性の目を引く、人気が出るような「衣装」「体操着」に変えたなら、騒ぐ人たちはいくらでも出るでしょうし、今よりはるかに注目も浴びるでしょう。

でも、それをしないのはなぜですか?

内村選手がもし、首回りに「立体装飾のバラ」を大量につけて現れたら、それまでとは違う人たちが注目して、大いに騒ぐことでしょう。でも、そうしたら、彼の最高の技術は殺されるのです。たとえ怪我していなくたって、動きや回転が狂うから、当然、勝てなくなります。

そんな、当たり前すぎるほど当たり前のことがわからなくなったら、それは競技でもスポーツでもなくて、スポーツ風の、ただのショーです。

フィギュアスケートで、かつてないほどの高難度技術を羽生選手に求めておきながら、そしてかつてないほどの芸術性をも同時に求めておきながら、どちらをも同時に根底から破壊するようなことを、意図的に平気で煽り続ける人たちがもたらす結果は何でしょう?

その人たちが、その競技のことも、選手の努力もその背後にある人生のことも、大事に思っていないのは明らかです。

 

懐かしいので、再UPしておきます…♪

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初掲載 2015年2月27日

 

さて、今回は、羽生選手の演技動画で、ジャンプの種類と名前を覚え、

さらには「スロー再生動画」を使って、ジャンプの技の詳細を確認し、見分ける訓練をちょっとだけしてみたいと思います。

 

(フィギュアスケートは、技の詳細を全然知らなくても、観ている分には十分に楽しめます。 

でも、見分けるのが無理でも、ジャンプの種類と名前、難易度ぐらいは覚えておいた方が良いだろうと思います。 

羽生選手が何をやっているのか、どのくらい難しいことなのか、少しはわかってくると思うからです。 )

 

素晴らしい動画を作成して下さっている方がいらっしゃるので、そちらをまずはご紹介。(動画主様、ありがとうございます!!)

 

まず、ジャンプの種類の説明です。(かなり基本的な内容です)

ジャンプは、「トリプル・アクセル」 のように呼ばれますが、最初の言葉 「例:トリプル(3回転)」が回転数で、その後ろの言葉 「例:アクセル」が、ジャンプの踏み切りの種類を表します。

ジャンプは、踏み切る時の足と、使われるエッジ、踏み切り方で、6種類 に分かれます。

1回転(シングル)、2回転(ダブル)、3回転(トリプル)、4回転(クワド、またはクワドルプル)、と呼ばれ、どれかが頭につきます。

5回転より上は、現在、公式試合で成功した人間はいません。 

 

 

次は、踏切です。

”一般的に”やさしいと呼ばれている、踏み切り方法の順番から。

 

トーループ(トウループ)  →  サルコウ(サルコー) →  ループ  →  フリップ  →  ルッツ  、そして、最後に最難関の、 アクセル です。

 The Toe Loop            →       The  Salchow    →    The Loop  →     The Flip   →    The Lutz            →           The Axel

 

アクセルジャンプは、+半回転が加わったジャンプなので、同じ回転数の中では最も難しく、レベルが高いです。

現在のところ、最難関は4回転ジャンプ(ほぼ男子のみ)で、その次に難易度が高いのが、3回転の中でも、3回転アクセル(トリプル・アクセル)です。

トリプル・アクセルも男子が中心で女子選手はほとんど跳びません(普通は跳べません)が、浅田真央選手(バンクーバー五輪で計3度も成功)や伊藤みどりさん(女子史上初のトリプル・アクセル・ジャンパー)をはじめ、女子でも過去に、数人程度が跳んだことがあります。

 

ジャンプは、基本的に必ず、「後ろ向きに」着氷します。 (靴の構造上、前向きに着氷は不可能。)

 

ですから、基本的には踏み切るときも、「後ろ向きに踏み切って」跳び上がり、回転を開始します。

しかし、アクセルジャンプ「省略記号:A 」は、半回転多く回るために、踏切が「前向きスタート」になります。

逆にいうと、素人目にも、最も「見分け」やすいです。

もし、選手が前向きにジャンプを跳びあがったら、それは、「○○・アクセル」ジャンプです。

現在までのところ、試合で、「4回転アクセル (クワド・アクセル)」 を成功させた人間は、まだいません。 

(羽生選手は、今後跳べる可能性の最も高い選手だとみられていて、練習中。 少し回転不足程度にまでは既に回れているらしいです。 )

 

ジャンプの難易度については、選手個人の個性からくる、得手・不得手もあるため、選手一人ひとりにとって異なり、必ずしも上の通りになるとは限らないようです。

羽生選手は、4回転トーループは非常に成功率が高く、昨シーズンまでは、全選手中で成功率がトップです。前回のグランプリファイナルでも成功した4回転サルコウも出来ますし、試合ではまだ入れていないものの、アイスショーでは今年、4回転ループまでは成功させています。

そして、4回転フリップよりも、通常はもっと難しい、4回転ルッツのほうに取り組んでいて、練習では既に4回転ルッツは跳べているそうです。(成功率までは不明。)

 

しかし、かつて高橋大輔選手は4回転サルコウやループには挑戦せずに、4回転フリップのほうに挑戦していて(バンクーバー五輪シーズン)、公式練習では成功させていましたし、

一般的にはトーループが一番やさしいと言われますが、サルコウのほうが得意だという選手もいれば(安藤美姫さん・村上大介選手等)、

4回転トーループよりも、3回転アクセルのほうが苦手になってしまう選手も、何人もいらっしゃいます。

 

羽生選手は逆に、アクセルが非常に得意で、3回転(トリプル)アクセルまでは助走もなしで跳べてしまうほどです。 

羽生選手もかつてはトリプル・アクセルを跳ぶのにかなり苦労したようですが、浅田真央選手が実際に跳んでいるところを間近で見ていて、

「タイミングで跳んでいる!」と分析して、それを見て覚えて、真似してコツをつかんだら出来るようになったそうです。

 

アクセルが苦手な選手は、前向きに跳びあがるのが怖いからだという話をよく聞きますが、羽生選手は基本的にリスクを恐れない勇敢なタイプですから、なるほど、極めて得意になるのも納得ですね。

 

ちなみに、この「アクセル」という名前は、最初にアクセル・ジャンプを跳んだ、ノルウェー人の名スケーター、「アクセル・ポールセン」さんの名前からきています。1882年にウィーンで行われた、最初の国際競技会でアクセルを跳んだそうです。

 

 

 

使われる足、エッジ、踏み切り方の違いは、以下の通りです。

今回は基本、羽生選手が跳んでいる、普通の「左回り、または反時計回り」に回転していく「普通の」選手たちのケースで説明します。 

反対回りをする選手もたまにいて、その場合、全て左右が逆になります。

 

ジャンプは、トウ・ジャンプと、エッジ・ジャンプに分かれます。

トウ・ジャンプというのは、トウ・ピック(スケート靴のつま先部分・ギザギザになっている箇所)を氷について、その勢いをも使って跳ぶジャンプです。

エッジ・ジャンプというのは、エッジ(スケート靴の刃の、縦長方向の端)を使って踏み切り、跳びあがるジャンプです。

 

 

 トウ・ジャンプ >                          

トーループ(トゥループ)(左足のトウ +右足・外側(アウトサイド)エッジ)

フリップ (右足トウ + 左足・内側(インサイド)エッジ)

ルッツ (右足トウ +  左足・外側(アウトサイド)エッジ)

 

< エッジ・ジャンプ 

サルコウ(サルコー) (左足・内側(インサイド)・エッジ踏み切り)

ループ (右足・外側(アウトサイド)・エッジ踏み切り)

アクセル (左足・外側(アウトサイド)・エッジ「前向き」踏み切り)

 

 

次に、使われる足の違いです。 

 

まず、トーループ(トウループ)と、ループについて。 

これはどちらも、右足の外側のエッジ(右足・アウトサイド・エッジ)を使って後ろ向きに滑ってきて踏み切る点は同じです。

(ループ(Loop)というのは、「輪」という意味ですので、そのように見えるジャンプと、それに「トウ(トー)」(Toe)をつけ加えたジャンプという、形を表した表現だと思われます。)

 

トウループ(トーループ) 「省略記号:T 」――――― 右足のアウトサイドエッジで踏み切り、左足のトウを突いて跳び上がります。

                                   全てのジャンプの中で最も目にする機会が多いのが、トーループです。 4回転や、連続ジャンプ(コンビネーション・ジャンプ)の後続ジャンプで、最も沢山跳ばれるジャンプです。 左足のつま先(トウ)をついて身体全体がまっすぐに伸び上がり、きれいに自然に跳び上がっていくように見えます。

世界初の4回転トーループは、1988年の世界選手権で、カナダのカート・ブラウニングさん(羽生選手のEXプログラム「Hello,I love you」の振付師)によって、成功されました。

 

ループ 「省略記号:Lo 」 ―――――  右足のアウトサイドエッジで踏み切ります。 

                           左足が右足の前に出て交差し、ひざを曲げて深く腰掛けたような形から跳びあがります。

                           滑ってきた勢い、または、氷上でつけた半回転の勢いを利用して、エッジで踏み切るのが、ループです。

ループは、基本的な回転のポジション(足の交差のさせ方、腕の収縮のさせ方、左肩の上への頭をもっていき方)を学び覚えるのに、特に有効なジャンプと言われます。 回転のための上半身のコントロールが、カギとなります。

ループは、滑っている足(=スケーティング・レッグ)と反対側の自由になっている足(=フリー・レッグと呼ぶ、この場合は左足)を前に出し、跳ぶ瞬間、膝を深く曲げるため、腰をかがめて椅子に座るような形に見え、左足が前方でクロスするように見えます

このように、跳び上がる直前に左足が前に出て、クロス(交差)したように見える形で踏み切り、跳んだ直後も、両足がねじれ輪のように交差して絡まりながら跳んでいくように見えることが多いのが、ループです。

 

トーループ と ループ この二つの違いは、跳ぶ瞬間に、左足のつま先をつくかどうか、と、左足(踏み切らないほうの足)の、位置がどこにあるか、です。 

 トーループは、左足が後ろに下がって、(つまり両足が前後に開いて)、左足のトウをついて跳びあがります。 

 ループは、左足が右足の前に出て交差(クロス)し、ひざを曲げた状態から、トウをつかずにそのまま踏み切って跳びあがります。

 ループとトーループはかなり形が違うので、トーループだけでも見慣れてくれば、ループを見ると明らかにトーループとは何かが違うとわかるようになるはず。 

 羽生選手のキレイな4回転トーループを沢山見慣れれば、ループは跳ぶ直前の形がかなり違うので、”なんか違う”と確実にわかるようになると思います。

 

 

では、具体的に、羽生選手の演技動画で、4回転トーループだけを見てみましょう。↓ (動画主様、丁寧なスロー化、ありがとうございます!)

 

これは、1年前(2013年年末)の、全日本選手権での羽生選手のSP「パリの散歩道」での4回転トーループです。

左足のつま先をついて跳びあがっています。 

離氷時(スタート時)の、右足のブレード(刃)の角度、 さらには、着氷時のブレードの角度まで、丁寧に示されてあります。

今、動画を動かさない「静止状態」では、羽生選手の、「着氷時の瞬間」が映っているはずです。

両足ともに黒く映っているので見難いとは思いますが、前方に伸びているのが左足です。

そして、この時、滑っているのは、折れ曲がって見えるほうの足で、それが「右足」です。 その外側(アウトサイド)エッジを使っている状態です。

 

着氷時ですので、斜め後方へと滑っていますが、右足首が右奥に傾いているので、右足の外側(アウトサイド)エッジに体重が乗っていると解ります。

こうすると、氷の上では、反時計回りの緩やかな孤を描くことになります。(この 画面上では、奥のほうへとカーブを描く)

 

 

 

次に、「ループ」の動画です。 こちらは、羽生選手が練習で4回転ループを跳んだものを、スロー化した動画です。↓

トウはついていないことをご確認下さい。 ひざが曲がり、腰が低く、「座るような体勢」からスタートしています。 

左足を前に出して交差させ、後ろになっている、右足の外側エッジで踏み切ります

 

 

トーループとループ、この二つは、連続ジャンプ(コンビネーション・ジャンプ)の、後続(2番目)のジャンプにも、よく使われます。

ジャンプの着氷は、全て右足の外側(アウトサイド)エッジを使いますので、最初に跳んだジャンプで着氷した足(右足)の外側エッジを使って、そのまま続けて、踏み切って跳ぶことができるジャンプは、この二つだけだからです。

(ループを後ろにつけるほうが、より難しく、そのジャンプの性質から回転不足も取られやすいので、最近では避ける選手が多いですが、浅田選手はソチ五輪・フリーで、この難易度の高い3回転ループを後続につけることを、臆することなくやっています。)

 

 

次に、羽生選手が2種類目の4回転として、必ず演技に取り入れている、4回転サルコウについて、見ていきます。

 

サルコウ(サルコー)「省略記号:S 」――――― 左足の内側(インサイド)エッジで踏み切り、右足の太ももを左足の上に勢いよく振り上げて、跳びます。 

                                反対の足のトウは使わない、エッジ・ジャンプです。

                                跳ぶ直前、足が、スキーでいうところの、「ボーゲン」の形のように、カタカナの「ハ」の字のように一瞬開きます

                                (内側(インサイド)エッジを使っている状態です。)

                                つま先(トウ)をつかずに跳ぶことと、一瞬「ハ」の字形に両脚がなること、右足を勢いよく振り上げて跳んでいくのがポイント。

羽生選手の4回転サルコウは、そのスピードのせいか、ハの字になってから、さらにスキーのパラレルの時のように、身体全体が右側に大きく傾いて、両足が一瞬平行な形にまで見えるほどに傾いてから、ガッと右足を振り上げて、一気に跳びあがっていくように見えることもあります。

同じエッジ・ジャンプの「ループ」との違いは、サルコウの場合、跳ぶ直前に両足は少し開いた状態で、跳び上がる時になって初めて、右足が左足の上に重なっていきますが、ループは跳びあがる前に、左足が前に出て、氷上の段階で先に両足が交差しています。 (注:サルコウは左足のエッジで、ループは右足のエッジで跳びます。)

 

 

では、羽生選手の4回転サルコウを、スロー動画で確認してみましょう。 ↓

次の動画では、羽生選手がショーで、かなりの高難度である、「4回転サルコウ+3回転アクセル」 のジャンプ・シークエンス(ターン等、体重移動を挟む、連続ジャンプのこと)を見事に跳んでいますが、動画主様がそれをスローにして下さっています。

「1分00秒過ぎ」からの、羽生選手の4回転サルコウのスローモーションが、非常にわかりやすいと思います。 

両足が、きれいなハの字になってから跳びあがっています。  

(ついでに、続けて、左足に踏みかえてから前向きにジャンプする、3回転アクセルのスローも見ておいてください。)

 

ここで羽生選手が後続ジャンプとして跳んでいる「アクセル」ジャンプは、前向きスタートのジャンプなので、別のジャンプの後ろに続けて跳びたい場合、第一ジャンプの着氷の「後ろ向き・右足アウトサイドエッジ」状態から、前に向きを変えなければならないため、着氷そのままのエッジで踏み切って跳びあがらなければならない「コンビネーション」(結合・接続・合体、のイメージ)とは、呼ばれません。 

足を踏みかえて、体重移動(くるっとターン)をしてから跳ばなければならないため、「シークエンス」(連続・つながり・一連の)と呼ばれる、連続ジャンプになります。

 

 

次の動画の、3分30秒からも、羽生選手が4回転サルコウを跳ぶ映像が、スローにされています。

この説明・スローは、とてもわかりやすいと思います。  ↓ こちらも、参考までに。

https://www.youtube.com/watch?v=0YowxQ-tkCM

 

サルコウという名前は、最初に、スウェーデンの「ウルリッヒ・サルコウ」さんという、1900年から1911年の間に10回も世界王者となった人によって開発されたジャンプなので、こういう名前がついています。

 

次の動画は、ソチ五輪のフリー「ロミオとジュリエット」の、公式練習時の、動画です。

以前、最高おススメ演技集の中でも紹介しましたが、ここで羽生選手は「4回転サルコウ」を成功させています。(本番は残念でしたが。)

最初に登場するジャンプが、「4回転サルコウ」です。 確認してみて下さい。  ↓ 

 

 

 

次に、フリップとルッツについて 見てみます。

フリップルッツは、どちらも、左足のエッジで踏み切り、右足のトウ(つま先)をついて跳ぶ、トウ・ジャンプです。 

違いは、踏み切る時の左足のエッジです。

フリップ 「省略記号: F 」――――― 左足の「内側」(インサイド)のエッジで踏み切り右足トウ(つま先)をついて跳びあがる。

ルッツ 「省略記号: Lz 」――――― フリップとは逆で、左足の「外側」(アウトサイド)のエッジで踏み切り右足のトウをついて跳びあがる

 

また、フリップ とは、単に 「トウの補助をつけた、サルコウ・ジャンプ」であり、だから、ヨーロッパでは、「トーサルコウ」(Toe Salchow)とも呼ばれている・・・と、私の持っているやや古い英語の解説書には書かれてあります。

(左足のインサイド・エッジで踏み切るという点では、サルコウとフリップは同じです。)

最初にこのジャンプを開発した人は「ブルース・メイプス」さんであり、それゆえ、フリップ・ジャンプは最初は何年も「メイプス」(Mapes)と呼ばれていたそうです。

しかし、トウをつくことで、ジャンプ・テクニックについては、サルコウとはかなり異なっていきました。

英語の「フリップ」(Flip)には、「ピンとはじく」とか、「パッとめくる」というような意味があるので、このジャンプの見た目の形態を表した名前なのだろうと思われます。

 

一方、ルッツ は、第二次世界大戦前に、ウイーン・スケーティング・クラブ(Viennese Skating Club )のメンバーだった、「アロイス・ルッツ」さんという方によって開発されたので、「ルッツ」と呼ぶようになっています。 アクセルを除いた、後ろ向きスタートのジャンプの中では、最難関ジャンプです。

 

先に、ルッツを見てみましょう。

次の動画の、33秒のところで動画を静止して見て下さい。 跳びあがる直前のところで止めて下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=884tV7DCm00&feature=player_embedded

これは、羽生選手のソチ五輪ショート「パリの散歩道」の時の映像ですが、ちょうど33秒~34秒のところから、3回転ルッツ+3回転トーループを跳びます。

その3回転ルッツを、羽生選手の正面から撮影してある映像なので、そこで静止すると、跳ぶ直前の体勢&エッジの傾きがよく解ります。

左足首が身体の外側に傾いている(=アウトサイドエッジを使っている)のが解り、右足は、大きく後ろへ下がっていて、トウをついています。これがルッツの踏切です。(フリップは逆に、左足首が身体の内側に傾きます。=インサイドエッジを使うため。)

ルッツの、横から見た形については、一番上に載せた最初の動画で、再度ご確認下さい。

こちらは、ロシアの技術説明動画の、「ルッツ」です。

 

ルッツが難しいと言われ、アクセル以外では最難関とされるのは、後方滑りの左足のアウトサイド・エッジで滑ると、時計回りの流れのゆるやかな孤を描いて滑っていくことになるのですが、跳ぶ瞬間に右足のトウをつき、そこから、それまで滑ってきた流れとは反対周り(反時計回り)の方向へ回転をつけて跳んでいかなければならないから、逆方向へ回転をかけることになるので、難しいと言われます。

ルッツは、左足のアウトサイドエッジを使うために、左腕をしっかりと前に出して右腕は後ろに大きく引き、跳ぶ直前に、滑っていないほうの自由な足(フリーレッグ)である「右足」を後ろにぐいっと引き下げて、左肩をぐっと下に落として左ひざを深く曲げる前傾姿勢をとってから(=左のアウトサイドエッジに乗る)、ドーンと右足のトウ(つま先)をついて跳びます。

横から見ると、左足で後ろ向きに滑ってきて、そのまま右足を大きく後ろに引き下げ、前のめりに構えた体勢になってから、右足のつま先(トウ)をついて跳んでいくように見えます。これが、ルッツです。

中には、後ろ向きに右足で滑ってきて、直前に左足の外側エッジに切り替え、パッと右足のトウをついて跳んでいく選手もいます。これだと、フリップと印象が似ていて、見分けにくくなると言われます。

 

しかし、フリップは、直前に氷上でくるりと、またはくるくると、跳んでいくのと同じ方向(左回り・反時計回り)にターンをして、後ろ向きのインサイド・エッジになったところで、そのまますぐに、同じ回転方向へと「ポン」と跳びあがるような準備態勢をとるのが普通なのに対し、

ルッツは最初から後ろ向きに直線的に滑ってきた姿勢のまま、グイッと右足を後ろに下げてドーンとトウをついて跳びあがっていくように見えるのが一般的です。 また、ルッツの方が、逆回転をかけるために、跳ぶ直前の構えの姿勢が、フリップより大きくなるのが普通です。

一番上の動画で、羽生選手はルッツを跳ぶ時、滑る足を右足から左足に入れ替え、右足と右腕を大きく後ろに引いて前かがみになり、左肩を落とした体勢になってから(=左足のアウトエッジに乗る)、右足のトウをついて勢いよく跳んでいきます。

 

フリップは、たいてい最初は前向きに滑ってきて、跳ぶ直前にパッとターンをして、後ろ向きになります。 

しかし、直前にターンをしたら何でも「フリップ」なのではなく、その直前に行う動きの流れの最後に、インサイドとアウトサイド、どちらのエッジに乗る形になることが自然になる動きをしているのか、あるいは、どちらのエッジに乗るための動きなのかを見れば、どちらを跳ぼうとしているのかがだいたいわかると思います。

「左足・前向き・アウトサイドエッジ」スタートからのスリーターンを使うと、後ろを向いた時には、左足の内側(インサイド)エッジに乗っており、かつ、フリップジャンプで回転していくのと同じ方向への回転の勢いもついているので、フリップの場合は、普通はそれを先にやってから跳びます。

向きを変えた途端、やや内股気味に軽く構えた形になったところで、直ちに右足のトウをついて、直前と同じ回転方向へ、ポーンと跳んでいきます。

羽生選手のフリップは、氷上でくるくると回転を繰り返してから、そのまま同じ回転方向へ、右足トウをついて、ポンと「軽く」跳んでいくように「見え」ます。

 

 

最後に、最難関の「アクセル」ジャンプを、羽生選手のスローモーション動画で、じっくり見てみましょう。

次の動画の、0分28秒過ぎから、羽生選手のトリプル・アクセルの、スロー動画が見られます。 これはオリンピックの時の公式動画です。↓

https://www.youtube.com/watch?v=bwS9BuAJVYw&feature=player_embedded

 

左足のブレード(刃)の、「外側(アウトサイド)エッジ」(=outside edge of blade と動画には書かれてあります)

「前向き回転に」踏み切っていて、(=Forward rotation & take off)

空中で3回転半して(3.5 rotations) 、1260度回ってから、

着氷が、踏切とは逆の足の(=landing on the opposite leg to take off) (羽生選手の場合は右足)、「外側(アウトサイド)エッジ」になっているのを、動画でご確認下さい。

 

この動画で最初に登場するのは、ソチ五輪銅メダリストのデニス・テン選手で、その後に登場するのは、「初代3冠王」の、アレクセイ・ヤグディン選手です。(プルシェンコ選手のかつてのライバル)  

注)羽生選手は昨年、ヤグディンに続く、二人目の3冠王になりました。(3冠とは、グランプリ・ファイナル、オリンピック、世界選手権の、世界3大大会を同シーズンに全て制覇したことを指しています。)

 

(上の、サルコウのところで紹介した、「4回転サルコウ+3回転アクセル」の動画でも、アクセルのスローモーションを見ることができます。)

 

次の動画は、羽生選手の過去の、3回転(トリプル)アクセルばかりを集めた動画です。 約2年前までの映像を集めたもの。

これだけ沢山見れば、前向きに跳び始める特徴の、トリプルアクセルについては見慣れてくる・・・はず。(笑)

 

 

 

 

 上に書いたこととほぼ同じ説明ですが、全ジャンプの図解が簡単にされている動画を、おさらいと参考までにどうぞ。↓

 

 

 

フリップと、ルッツの見分けが最も難しいと言われています。

エッジ・エラー(=エッジを使い方が間違っていると判定される)を取られる選手も多いことからも、跳びわけそのものも難しいのだと思います。

この点については、以下の、鈴木明子選手が詳細に説明してくれている動画のHPが参考になるかと思います。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/special/figureskate/video/jump

フリップ と ルッツだけでなく、トーループ等の他のジャンプの説明動画も、上のページの下の方についています。 参考にどうぞ。

 

 

 

以上、ジャンプの見分けを少し紹介してきたものの・・・

個人的には、ジャンプの見分けに執着しすぎて、そこにしか意識がいかなくなったりして、ジャンプ前後の全体の美しさや流れ、表現されているもの、プログラム全体の面白さを見落としてしまうのは、非常にもったいないと私は思っています。

 

選手や選手候補の子供たち、スケートをスポーツとして実践していて技の習得に励んでいる人たちには、

とても重要な技の見分けですが、そうでない一般人で観ているだけの場合は、そこまで気にしなくてもハッキリ言って、十分に楽しめます。

『 次に、羽生選手は「4回転サルコウ」というのを跳ぶらしい・・・』、『 へえ、そうなんだ 』 程度でも十分に楽しめます。(笑)

 

見分けたい人はそれでいい。  ですが、何もやっきになる必要はない・・・というのが、私の個人的な考えです。

ストレスになるくらいなら、無理しないで気楽に見たほうがいいと思います。

楽しく見ようよ、フィギュアスケート!って感じですね。(笑)

 

ジャンプの回転不足や成否は、点数に大きく影響しますし、競技としては非常に重要なのは間違いないのですが、そこにばかりに注目して意識を集中させすぎて、他の美しさ、プログラムの工夫、音楽との調和性等、プログラム全体としての出来や魅力などにまで注意が払えなくなってしまうと、フィギュアスケートの魅力を半減させてしまって、もったいないように私は感じます。

 

選手が何のジャンプを跳ぶのかは、試合のプログラムとして、あらかじめ決まっていますし、時に、アクシデントや体調等その他で、演技中に急遽変更することもありますが、そんなに多くはありません。 

あらかじめ「次に何を跳ぶのか」を知っておけば、十分かなとも思います。

 

どちらにしても、選手たちは最善を尽くして頑張っていると思うので、楽しく見られて、その努力を称えられるといいですね!