つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

愛すべきやつら(2)

2006-06-14 20:09:28 | 思ひ出ぼろぼろ
同じ釜のめしを食う仲間に対して
「やつら」とは失礼千万なのだが
あえて親しみを込めてそう言わせてもらった。
さてもう一人私の目に止まった“面白い”人は、
やはり忘年会で目立つ存在だった。
彼は本社、私は少し離れた支社の工場と、
職場が離れているので、一同に介する忘年会
でないとなかなか出会えないのである。
彼は酔っ払うと大声でわめき、卑猥なことを
連呼したりする。こう聞くととんでもない人間
と思われるかもしれないが、私にはそれも
なんだか面白かったのである。
もちろんそんな目で見ている奴がいるとは
つゆ知らず。彼は真っ赤な顔をして
二次会へと消えていった。
彼とは飲み仲間でもないので会話をする機会も
少ないのだが、日曜日など本社へ手伝いに
行くので、そこで会話を交わしたりする程度だった。
あれで彼は「仕事師」と呼ばれる程、仕事に関しては
なんでもよくできるのだった。
ただ無類の酒好きで、アルコールに溺れるのがたまに傷だった。
しかし去年肝臓を病み、大好きなアルコールを禁じられたのである。
忘年会で、酒を一滴も飲まない彼には、さすがに痛々しい感じがした。
今年私の身にも何が起こったのか、一ヶ月足らずの内に
新聞に二度も載ってしまったのだ。
それで会社の人達に、私の絵の個展の事や
自然に目を止めて俳句を作る事等、よろしく記事になっていたので、
みんなに周知されてしまった。
そんな折、本社の手伝いでゴミ焼却をやっていると
彼がひょっこり顔を見せ、「新聞見たよ」とぼそりと言った。
そして「おれ尊敬するよ」と何時に無くまじめな
目をして言うのである。私はなんだか照れくさくなって、
「いやあ…」と頭をかいていると、「おれも何か好きなものが
あるといいんだけど、おれの場合博打っぽいのばっか
だからなあ…」とぼやくと「じゃあな」と去っていった。
彼も人生の心の憩いをどこかで求めているんだなあ…
と思いつつまたゴミ焼却を始めた。すると
また彼が戻ってきて「なんかさあ…こう心に残るような
俳句ないかなあ…」と言うのである。
私はとっさには思い浮かばず、「さあねえ…」と言うと
「そうか」と言って彼は去って行こうとした。
「あ…」私は思いついて彼を追いかけ、「一つだけ…」
“幸せがこの指止まれ赤とんぼ”と言うと,チラッと私を見て
「…」無言でうなずき、そのまま去って行った。
果たしてあの一句が、彼の心に届いたのか定かではないが、
彼に幸せが止まるのを願ってやまない。
思えば私の目に止まる人というのは、どこか“まっとうでない人”の
においがするのだ。私は自分の中にある
まっとうでない嗅覚でそれを嗅ぎ分け、同類を探していたのかも
知れない。そして、その心の内に本当にまっとうな輝きを
信じて、見つめようとしていたような気がするのだ。
まっとうでない人達よ、まっとうな心の輝きを信じて…

コメント
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