読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

年齢とともに失われていく嗅覚、阻止する方法も

2013-02-20 09:18:14 | 健康
人間の嗅覚は年齢とともに衰える。多くの人は30代になるまでに、それとわかるほど嗅覚が落ちる。食品の異臭やガス漏れにも気付かないほどにまで、徐々に衰えることもある。

 一方で朗報もある。嗅覚を守り、さらにはより鋭くするために家庭でできることがあるのだ。シカゴにある嗅覚味覚療法研究財団のアラン・ハーシュ氏は「色覚障害の場合、赤と緑を一日中ながめていても色がわかるようにはならない」としたうえで、「だが匂いのことに関しては、実際に神経のつながりを活発にし、おそらく以前はわからなかった匂いがわかるようになる場合もある」と話す。

 嗅覚はそれを失うまで、完全にはそのありがたみがわからないものの1つだ。シカゴの元警察官でウィスコンシン州シャロン在住のパトリック・コリンズさん(62)は4年前にひどい風邪を患ったとき以来、香りのない生活に慣れようとしてきた。風邪が治った際、コリンズさんは嗅覚も一緒に消えたことに気づいた。これは比較的珍しいケースだ。医師らは風邪のウイルスが神経にダメージを与えたとコリンズさんに伝えた。

 コリンズさんはガス漏れ警報器を設置し、残り物を食べる前には妻に聞くようにしている。生後4カ月の孫娘と過ごす時間さえもその影響を受けている。「赤ん坊の匂いを嗅ぐことができないんだ」とコリンズさんは話す。

 嗅覚を失うと、たいがい味覚の一部も失われることになる。嗅覚と味覚の両方があって味がわかるのだ。ペンシルベニア大学の嗅覚味覚センターで責任者を務めるリチャード・ドティ氏は「口で噛んで飲み込むときに、食品から出る揮発性の分子が鼻腔の奥を通って鼻蓋にある嗅覚のレセプターに届く」としたうえで、「鼻をつまんでチョコレートを口に入れても、チョコの味がしないだろう」と指摘する。

 上気道の感染症、汚染、頭部外傷、それに糖尿病を含む病気はすべて嗅覚を悪化させる可能性を持っている。たばこの煙や化学的な煙霧といったもので一時的に起こる場合もある。

 だが、もっと油断ならないのは時間だ。専門家によると、視力や聴力が年齢とともに衰えるのとちょうど同じように、嗅覚も衰えるという。60歳になるまでに、約半数の人は嗅覚の衰えを感じ、80歳になるまでにはその数は4分の3に増える、とハーシュ氏は指摘する。嗅覚味覚療法研究財団は設立25年を迎える財団で、患者の診察のほか、製薬会社や民生製品を製造している業界向けの調査に加え、独自調査も行っている。

 米国では300万から400万人が嗅覚障害や完全な無嗅覚症、もしくは嗅覚の能力減退と診断されている、とハーシュ氏は予想する。ベビーブーマー世代が高齢になると、この数字は飛躍的に上昇するのではないかとみられている。

 嗅覚の能力が減退しつつあるベビーブーマー世代を対象にした、際立って香りの強い製品を販売することは企業にとって商機であろう。ただ、製品の差別化を図るため珍しい植物の香りを製品に使う企業も一部にはあるが、製品数はあまり増えていない。

 コンサルティング会社ブーズ・アンド・カンパニーで小売り部門の戦略責任者を務めるトム・ブリショク氏は「今、とてつもなく大きな商機があるのに、彼らは取り逃がしている」したうえで、「民生用の製品を作っているもっと多くのメーカーが、高齢になりつつある消費者が製品の風味や香りを楽しめる方法を見つける必要がある」と述べた。

 香りの違いを嗅ぎわけるために脳を鍛える方法としてハーシュ氏が勧めるのは「スニフ(匂いを嗅ぐ)セラピー」だ。自分の好きな香りのタイプを3種類から4種類――例えばシャンプーやせっけんに使われる花の香り、ベリー類やバナナなどの溌剌としたフルーツの香り、さらに別の種類、例えばコーヒーの香りなど――を選ぶ。たまねぎやアンモニアといった刺激性の香りは避ける。これらは嗅覚の能力を阻害するためだ。

 それから選んだ香りを1日に4回から6回頻繁に嗅ぐ。そうすると、最終的にさまざまな鼻のレセプターが活性化されるのだ。

 食べ物の香りを嗅ぐことはもはや生き残るために必要なスキルではないが、生物学的な目的をまだ果たしている。「危険を最初に警告するシステムだ」と指摘するのはモネル化学感覚センターの教職員パメラ・ダルトン氏だ。同氏はまた、「実際、香りにはより効果的に食物の消化と代謝を促す作用があるかもしれない」と話す。


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