読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

天才の遺伝子コードは存在するか

2013-02-19 09:42:52 | 科学
By GAUTAM NAIK
wsj日本版から
 香港の元印刷工場の跡地で、趙柏聞(20)という名の神童が、厄介で物議を醸す可能性のある研究に着手した。それは天才の遺伝的特徴を発見することだ。

 趙氏は高校を中退し、中国のビル・ゲイツと称されている人物だ。彼は中国政府などから資金援助を受けている民間企業のBGIの認知ゲノミクス研究所のトップを務めている。


Alex Nabaum
研究によると、IQを構成する要素のうち少なくとも半数が遺伝することが示されている

 この香港の施設では、100台を超える強力な遺伝子解析装置が約2200のDNAサンプルを解析、一度に32億の塩基配列を解読している。これらは普通のDNAサンプルではない。大半は米国で最も賢い人々、つまり、知能という点で並外れた部類に属す人々のサンプルだ。

 大半のDNAサンプルは、知能指数(IQ)が160、あるいはそれ以上の人々から採取された。ちなみにある集団におけるIQの平均は100に設定される。ノーベル賞受賞者のIQの平均は145前後だ。この香港プロジェクトのサンプル参加者と同等の賢さを持つのは3万人に1人だ。そのため、サンプルを探すこと自体、困難を伴った作業だった。

 趙氏は「人々は長い間、知能の遺伝的特徴を無視することを選んできた」と述べた。同氏はチーム初の研究結果を今夏公表できることを望んでいる。同氏は 「とりわけ西側諸国では、これが物議を醸す話題だと信じられているが、中国では違う」と指摘した。中国ではIQの研究がより科学的な問題だと捉えられるため、資金を集めるのが比較的容易なのだという。

 知能のルーツは謎だ。これまでの研究では、IQを構成する要素のうち少なくとも半数が遺伝することが示されている。しかし、科学者らはIQを著しく低下させる可能性のある遺伝子の一部、例えば知的障害に悩む人々に存在する遺伝子を特定しているものの、通常のIQに影響を与える重要な遺伝子はまだ特定できていない。 

 香港の研究者たちは、極めて高い水準のIQの持ち主の遺伝子と、一般人から抽出した人々の遺伝子を比較してこの問題を解決しようと希望している。2つのグループの遺伝子要因を研究することによって、彼らはIQの背後に存在する遺伝的要素の一部を抽出しようと期待しているのだ。 

 彼らの研究で結論が出れば、それは人の遺伝的な認識能力を予測する遺伝子テストの基礎を築くかもしれない。こうしたツールができれば、利用価値はあるが、同時に賛否両論の議論が生じるかもしれない。

 英国ロンドンにあるキングズ・カレッジのロバート・プロミン教授(行動遺伝学)は「もし学習に困難のある見通しの子どもを特定できれば」、その子どもの人生の早い時期に特別の学校教育やその他のプログラムを通じて「介入できる」と言う。 

 しかし、これに批判的な人々は、IQに関連した遺伝子データは誤って解釈されるか、あるいは誤って利用されやすいと懸念する。マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置く監視団体「責任ある遺伝学協議会」のジェレミー・グラバー会長は、知能科学の研究は過去において「特定の人種グループないし個人を標的にし、彼らを非合法化する」のに使われてきたとし、「遺伝学の世界で還元主義(生物学的な作用を物理・化学で説明しようとする主義。過度に単純化しようとする主義)的で決定論的な傾向が依然として極めて色濃く存在しており、このようなプロジェクトではそれが前面に押し出されるだろう」と警告した。

 趙氏自身、生まれつき非凡な人だ。遺伝学上の業績に加え、同氏は完璧に近い英語を独力で学んだと言う。遺伝学者としてのキャリアはキュウリの遺伝子研究から始まった。2007年、同氏は北京の学校の午後のクラスを抜け出し、中国農業化学アカデミーでインターンとしてスタートした。

 キュウリの遺伝子研究が09年に専門誌ネイチャー・ジェネティックスで公表された際、同氏は15歳で、共同執筆者として登場した。 

 遺伝学に魅了された趙氏は高校を中退して、世界最大級の遺伝子研究センターであるBGIでフルタイムで働き始めた。BGIは深�祁に本部がある。翌年、BGIは認識遺伝学センターを香港に設置し、同氏を所長に任命した。

 香港プロジェクトの大半のサンプルはこれまで、中国以外から来ている。主たる供給源は前出のプロミン博士のキングズ・カレッジだ。同博士は自らの研究のためにIQがチャートからかけ離れた約1600人からDNAサンプルを収集していた。


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