アメリカン航空はタブレット型端末を早期に導入した。その結果、どこで使うのが最適なのか、またどういった場合に不具合が生じるのかを多く学んだ。
たとえば、1種類のタブレット型端末がすべてのニーズを満たすわけではないことを早い段階で理解した。パイロットは紙製の航空図などに代わる洗練された端末を欲した。一方、整備工やエンジニアにはもっと頑丈であること、客室乗務員には小さくて軽いことが重要だった。ファースト、ビジネスクラスの旅客には新作映画を再生できるものを貸し出した。違法コピーのリスクがないモデルだ。
タブレット型端末を導入する企業は増えている。フォレスター・リサーチは世界中で仕事に使用されているコンピューターのうち約25%はタブレット型もしくはスマートフォン(多機能携帯電話)でPC(パーソナルコンピューター)ではないと推測する。
1種類のタブレット型端末がすべてのニーズを満たすわけではないことを早くに理解したアメリカン航空
ただ、従業員がどう使うのが最適なのかを事前に十分調査しなかったり、導入コストやITネットワークに接続することで発生する導入後の問題を低く見積もったりといった同じような間違いを犯している。
以下にその代表的な5つの過ちを紹介する。
1、事前調査不足
実に多くの企業が明確な戦略なしにタブレット型端末を導入する。
大々的に機器を導入する前に、まず少人数ながらも重要な従業員グループに機器を持たせ、どんな仕事が可能で、どうすればもっと良くなるのかを検証すべきだとアナリストは提案する。
また事前に、誰が機器を所有し、どう管理するかといった問題を明確にしておくべきだ。
タブレット型端末を使うハイアットホテルの従業員
2、タブレット型端末の向き不向きの理解の不足
タブレット型端末は多くの能力を持っているが、全てに向いているわけではなく、多くの場合まだノートブック型端末の代わりができるわけでもない。旧来型コンピューターのプログラムの多くはタブレット型では使えないうえ、PCから携帯機器へ送信した書類からは重要な特性が失われている可能性もある。
3、必要なアプリを簡単に入手できるとの期待
自分たちに必要なアプリを簡単に入手できると考える企業もある。しかしほとんどの企業はアプリを製作する手段を持たないうえ、継続的に携帯アプリをアップデートすることもしない。またアップルの「iPad(アイパッド)」やグーグルの「アンドロイド」のオンラインストアは、他の人気のないタブレット型端末に比べて多くのアプリを提供するが、それら機能には限界があることさえある。PC用プログラムほどの機能が備わっていない場合があるのだ。
ニーズに合ったアプリを見つけるのは時間がかかる
4、タブレット型はノート型よりも安いと見積もる
1台500ドル(約4万1000円)のタブレット型はノート型やデスクトップ型に比べて魅力的に見えるかもしれない。しかしそれは重要な要素を見逃している。タブレット型はPCより頻繁に交換する必要があるということだ。
ソフトウエア大手のSAPは従業員に1万4000台のタブレット型端末を配布したが、ソフトおよびハードの最新版を利用するため、また仕事上やむを得ない理由があれば1年半から2年ごとに交換するという。また無線接続やアプリ利用の全てに費用がかかる。
5、セキュリティーに対する甘い判断
携帯機器に多くのデータを入れておくのは実用的に利用する上で必要なことだが、その情報が安全であることを確実にする手段を構築する必要がある。
管理方法の問題もある。従業員が仕事で使用する個人のタブレット型端末が盗まれた際に、企業のITスタッフは遠隔操作でハードドライブの情報を消去することができるだろうか。従業員は自身で多くのプログラムをダウンロードできるため、企業のネットワークシステムにとってはセキュリティー面で悪夢だ。また企業が基本ソフト(OS)やアプリをアップデートする際には互換性の問題を引き起こすことになる。
つまり企業は、タブレット型端末は新種の機器で、マネジメントには新しい手法が要求されると理解する必要がある。アクセンチュア・モビリティ・サービスの戦略責任者、ラーズ・カンプ氏は「タブレット型端末を、今あるITシステムの蓄積されたものの延長だと考えてはいけない。そうではないのだから」と述べた。
記者: Shara Tibken