読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

フォークランド諸島がまた火種に

2012-04-01 10:51:52 | 新聞

1982年のフォークランド紛争で使用されたアルゼンチン軍の大砲
短期間ながら流血の戦闘となった英国とアルゼンチンとのフォークランド諸島紛争から30年がたつが、両国はまた外交の場で激論を交わしており、同諸島における英国の権益が重圧を受ける可能性がある。

 1982年4月2日、当時のアルゼンチン軍事政権は同諸島に侵入。これに対して英国は軍隊を派遣して、2カ月にわたる戦争が始まった。この戦争では両国合わせて1000人近くが死亡した。
フォークランド諸島は引き続き英国の領土であり、英国は軍隊を置き、地域住民は自分たちの政府を選んでいる。しかし、過去の緊張はまだ残っている。アナリストは新たな軍事衝突を予想していないが、開戦30周年が近づくにつれて非難合戦はエスカレートしており、お互いに植民地主義者とののしり合っている。

 例えば、アルゼンチンは3月入って、同諸島で石油探査に当たっている複数の英企業に法的措置を取ると脅し、英国の副首相は今週、アルゼンチンは南大西洋に英国が核兵器搭載の潜水艦を展開させたとほのめかして「根拠のないあてこすり」をしている、と批判した。

 両国関係は今後数カ月間、凍り付いたままになると見られる。特にブラウン英外務閣外相が終戦30周辺を記念して諸島を訪れる6月半ばごろが冷え込むと予想される。

 アルゼンチンのキルチネル政権は最近数カ月、英国批判を強め、南米での英国の外交的孤立化を画策して、同国を交渉のテーブルに引っ張り出そうとしている。英国の当局者は最近、記者団に対し、キルチネル大統領はこのようにして有権者の関心を、景気鈍化など一連の国内問題からそらそうとしていると述べた。大規模な石油・天然ガス資源が諸島沿岸部で有望視されていることも、緊張を高める要因になっている。英国の数社は石油開発のための掘削を行っている。

 アルゼンチンは、スペイン語でマルビナスと呼ぶ同諸島への歴史的、文化的権利を主張するとともに、その石油と漁業資源が英国によって略奪されていると訴えている。こうしたアルゼンチンの立場は米国の俳優・監督ショーン・ペン氏や英国の歌手モリッシー氏ら、南米のナショナリズムの支援者の支持を得ている。

 英国は、アルゼンチンから約300マイル(480キロメートル)離れたフォークランド諸島を1833年から支配しているが、アルゼンチンはこれに異議を唱えている。アルゼンチンは、主権をめぐる英国との穏やかな交渉を求めるとしている。これに対して英政府は、島民が望まない限りこれを拒否するとの姿勢だ。

 英国出身者が圧倒的に多い約3000人の島民は英語を話し、英国の市民権を持っている。82年の英国の勝利は、当時サッチャー首相が率いていた英国政府の支持を押し上げた。

 安全保障問題の専門家は、現在の外交的対立が軍事行動につながる公算は小さいと言う。アルゼンチンでは諸島の主権は人気のある問題ではあるが、非平和的手段を使うのは人気がない。両国とも戦争は望んでいないとしている。

 アナリストによると、英国にとってより大きなリスクは南米で同国を外交的に孤立化させようとするアルゼンチンの狙いだとし、これによって英国の南米での戦略的権益が打撃を受ける可能性がある。英国の現政権が貿易を重視していることから、これは重要なことだ。

 アルゼンチンには、かつての欧州の植民地主義に反発する近隣諸国を味方に付ける力がある、とアナリストは見ている。現在の緊張は、アルゼンチンが昨年12月に、ブラジル、ウルグアイなどメルコスル(南米南部共同市場)加盟国に、フォークランド旗を掲げた船舶の入港を禁止するよう説得したことから始まった。その後ペルーは、英フリゲート艦の寄港許可を取り消した。ペルー外務省は、フォークランド諸島をめぐる領有権紛争でのアルゼンチンへの連帯からこれを決定したとしている。

記者: Cassell Bryan-Low