読書など徒然に

歴史、宗教、言語などの随筆を読み、そのなかで発見した事を書き留めておく自分流の読書メモ。

続「白川静の恋文」

2009-12-25 09:35:10 | 読書

平成十六年四月、白川静氏のつる夫人は九十一歳で死去した。妻の死に際し白川静氏は七十首の歌を詠んだ。臨終の病室を去りかね「立ち去らば千代に別るる心地してこの室中(へやぬち)を出でがてにすも」から最後の「意識絶えて今の言(こと)はきかざりしまた逢はむ日に懇(ねんごろ)ろに言へ」。長い年月を連れ添った妻への感謝を込めた歌であった。白川氏の初期の論文はみなガリ版刷りで、費用は全て自腹を切ったものだった。本を出すたびに家族は耐乏の生活を余儀なくされた。が奥さんのつるさんは一言も愚痴を言わなかったと言う事だ。
文芸春秋2008年1月号「世紀のラブレター50通」から