GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

<心のフィルター>

2011年09月20日 | Weblog
 水切りやザル、コランダーという厨房用品がある。コランダーはなくても何処の台所にも他の二つはある。食器の水分を取る、食材を乾燥させるという作業は、調理においても食材の保存や食器類の保管のためにもとても大切なことだ。特に食材貯蔵の原則の<乾燥させる>という大事な役目を果たしている。水分による菌の繁殖を防いでいるからだ。

 水分は生物の生存の為にはなくてはならないものだが、過分になれば、たとえ大切な要素であっても負の要素となる。塩分も酸素も過分になれば、身体に悪影響を与える。そう考えると、お金も親の愛も大切だが、過分になれば負の要素になってしまう。
         
 ザルやコランダーを身体の部分で表現すると、心のフィルターと云える。読んで・見て・聞いて・感じる情報の中には、不必要なものや不健全なもの、悪魔の囁きのようなものまである。それを心のフィルターが取り除く役目を果たさなければならない。このフィルターの精度はとても繊細で、しかもとても重要だ。不必要なものや不健全なもの、悪魔の囁きのようなものを取り除く能力は、自分の未来に大きな影響を与えかねいないからだ。

 心の中で人はとんでもないことを考えてしまう。これが人間の習性だ。夢や妄想、希望や絶望、嫉妬や称讃、好きや嫌いという感情もすべて心の習性だ。この習性を容易にコントロールできる人などこの世に存在しない。このことをまず人は認める必要がある。

 誰かを好きになりすぎたり、その恋が実らなかったり、裏切られた時、憎んだり恨んだりの感情が充満してくる人がいる。何百回もの悪戯電話やストーカー行為はその典型と言える。既に心は平常心を失っており、小さなことまで気になって心の調整力を完全に失い、負の感情だけが暴走しているのだ。心を持たない他の動物は、こんな状態にならない。感情ではなく本能が支配しており、その本能が獲物を追い、自らの身体を守ろうとする。喜びや悲しみの感情がない為に行動は常にシンプルと言える。

 人は歳を重ねると心のフィルターがとても繊細になってくるものだ。涙もろくなるという現象がそれを象徴している。水切りやザルの目が小さくなってしまい、目詰まりをおこしかけていると状態と似ている。感性が豊かになるがゆえの効能とも云える。掃除機のフィルターが目詰まりを起こして、モーターが過熱している状態はとても危険だ。

こんな状態になったとき、人によって行動が違ってくる。
1)耳や目を塞ぎ、心の窓を閉ざしてしまう。
2)人とのつきあいを止めてしまう。
3)愛玩動物や趣味やスポーツに没頭する。
4)旅行に出る。
5)衝動買いをして自分の所有欲を満たす。
6)食べたい物をどんどん食べて食欲を満たす。
7)他人にあたりだす。
8)悪意が充満し妄想の世界が現実感を失わせていく。
9)他人を傷つける。
10)自分を傷つけ、やがて自分を消滅させたくなる。

 心のフィルターの目詰まりが、心の作用をおかしくする。このことを意識しているか、しないでは大きな違いが生まれてくる。幸せになるためにはこの意識が欠かせないと思う。1)~6)は自分の中でこのフィルターの目詰まりを気づいているように思うが、7)~10)の行動を起こしてしまう人は、非常に危険だ。そんな人は意識して水切りやザル、コランダーの目を大きくし風通しのいい心へと変化させる必要がある。以前小泉元総理が、若い真摯な安倍元総理に<鈍感力>の必要性を説いたことがあった。とても的確だと思った。しかし、自分ではもうどうにもならない状態になっており、人の助言に耳を傾ける余裕などない場合が多い。結局は自らを律する清浄作用こそが、自らを守ることになることを知っておいて欲しい、そんな状態になるまえに…。

 過度な神経質的性格は心を蝕み崩壊させていくが、鈍感な性格は周囲からの失笑や蔑みの視線を受けることがある。しかし、自らの心を守ることができる。生き延びるために鈍感力を発揮するべき瞬間があるように思う。生き延びてこそ新たな道が見つかる。

 ギターの弦は張らなければいい音は出ないが、張りすぎると切れてしまう。Aの音叉を使ってギターの調弦を行うが、私はこの静かな行為がとても好きだ。心が落ち着き澄んでくるように感じるからだ。心のフィルターの役目とはこの調弦に似ているような気がする。どんな名曲でも音の合っていない楽器で奏でるのは不可能だ。人には水切りやザル、コランダーの役目をする<心のフィルター>が必要だと思う。そして心を調弦できる自律力を育てるべきだと思う。