GOODLUCK'S WORLD

<共感>を大切に、一人の男のスタンスをニュース・映画・本・音楽を通して綴っていきたい

「黒部の太陽」を見て。

2009年04月05日 | Weblog
 敗戦から立ち上がり復興を果たし、高度経済成長を目指す中、日本全国が絶対的電力不足に悩んでいた。ついに関西電力、太田垣士郎社長(中村敦夫)は、黒部川最上流域に日本一のアーチ型ダムを擁する、黒部川第四発電所建設に着工することを決意。前人未踏の黒部上流域に分け入り、日本一のダム建設を実現するため、関西電力は熊谷組を始め信頼できる建設会社を、日本の将来のため、と口説いていく。

 ついに未曾有の予算、規模によるダム建設に着工することとなる。黒四建設という重大任務を託されたのは、様々な難工事を成功させている滝山薫平(小林薫)だったが、滝山は二の足を踏む。しかし社長からまでもくどかれた末、黒四建設事務所次長に就くことを決意する。滝山は、黒部川第四発電所の建設の中でも、ダムサイト工事現場へ資材を運ぶために北アルプス山中を貫く大町トンネル掘削工事を任されることとなる。関西電力は「トンネルの熊谷」とトンネル掘削では輝かしい実績を上げている熊谷組に大町トンネル工事を依頼する。

 既に佐久間ダム建設に成功し名をあげていた熊谷組工事課長の木塚一利(ユースケ・サンタマリア)にも声がかかる。木塚は、新しいトンネル掘削工法を習得しており、佐久間ダムなど新ダム建設成功の立役者であった倉松班の親方、倉松仁志(香取慎吾)に白羽の矢を立てる。… (http://wwwz.fujitv.co.jp/kurobe/index.htmlより抜粋)


 香取慎吾が演じた若い親方が素晴らしくいい。最初のキャバレーのシーンから彼の演技はかつて一度も見たことがないくらい輝いて見えました。あの親方の役(かつては映画で石原裕次郎が演じた)は骨太の演技が求められ、他のスマップも仲間も誰もできないであろうと思えました。ユースケ・サンタマリヤのような線が細い役者は何人もいますが、名の通った若い役者でキムタクのようにエリート役は演じられても、土方の親方は難しい骨太演技を要求されます。しかも名だたる名演技者が名を連ねており、葉すっぱな演技ではドラマが崩れてしまいます。あの役はまさに映画の心棒たる役柄です。周囲は小林薫、津川雅彦、伊武雅刀、火野正平、中村敦夫ら年配の芸達者が脇を固めており、今までは浮いた役がら多かった慎吾にとって将来を切り開くような凄い役です。「黒部の太陽」に慎吾の未来を見た!そんな感じです。きっとこんな役柄のオファーが増えると確信します。

 見逃した人はきっとすぐに再放映されると思いますので、その機会にぜひともご覧下さい。そしてDVD化も決定してるようですので、レンタルして見て欲しいと思います。慎吾の演技だけではありません。昭和の発展を支えた電力マンと彼らを支えた家族、建設に命を賭けた男達の熱いドラマはきっと見た人の心を熱くするでしょう。

 トンネル工事中に香取演じる親方の部下が事故で死亡します。彼は父親の反対を押し切って日本一のダム建設に参加したのです。そこには下請けのトンネルマンとしての<誇り>があったのです。関西電力の黒四建設事務所次長(小林薫、かつては三船敏郎が演じた)が「日本の電力のために、日本の発展のために頑張ってくれ!」と慎吾親方に熱く語りますが、慎吾親方は怒りながらこう言い返します。

「俺達は誰かのために掘っているんじゃない。
 死んだ彼も誰かの犠牲になったわけじゃない。
 そんなのあまりに悲しいだろう? 
 俺達穴掘りは、自分の誇りのために穴を掘っているんだ!
 それが仕事だから掘っているんだ!」
          (セリフは少し違っていると思いますが、思い出す限り…)

 この言葉はネクタイ連中全員の横っ面をおもいっきりはったように感じました。現場という死と生の狭間で働く男達の<誇り>、資格や金にもならない<誇り>という熱い言葉に、全員がはっとする名場面です。(この時の慎吾は最高でしたよ)

<誇り>という言葉を最近よく耳にします。映画の「クライマーズ・ハイ」、「感染列島」や「252 生存者あり」、「ジェネラル・ルージュの凱旋」です。その主人公達は自分の仕事に対して強い<誇り>を持って仕事をしています。だからこそ、緊急や辛い試練の場面でもやるべき使命感を持って立ち向かえたのです。誇り高き人達には、裏切り、欺瞞、不正、私利私欲や出世欲のような病原菌は寄りつかないようです。

 誇り高き人達は常に孤高です。そしてそれは宿命です。

 その孤高に堪えかねて多くの人は下野してしまいます。現在も孤高の人は現場に沢山います。昔と違うのは共感する人の数のような気がしてなりません。もっと多くの人が孤高の人に共感すれば、山は動くと私は信じています。そして<誇り>という言葉をもう一度胸に刻みたいとこのドラマを見ながらそう感じました。