ゴルゴ13総合研究所『俺の背後に立つな!』

ゴルゴ13の全ストーリーを解説

ゴルゴ13第46巻-1国王に死を

2007-02-11 22:24:51 | 第046巻~第050巻

■国王に死を(第162話) 発表1979年10月

評価     ★★★★

依頼人   スイス”ナショナル銀行”会長(ドワイト・D・グリンヒル)

ターゲット  イラン ムハマド国王

報酬     300,000スイスフラン

今回弾丸発射数       1/ 通算弾丸発射数 1,011

今回殺害人数         1/ 通算殺害人数     924

今回まぐわい回数     0/  通算まぐわい回数    74

<ストーリー>
イラン革命で追われた国王の預金払い戻しで揺れるスイス”ナショナル”銀行。スイス銀行の伝統と信頼を揺るがすデフォルトを防ぐために、銀行会長が下した決断とは・・・

<この一言>
あんたは、そんな投機的な人間じゃなかったはずだ・・・

<解説>
イラン革命を題材にしたストーリー。1979年1月16日、イラン「ムハマド国王」はモロッコへ脱出、同日「フセイニ師(史実ではホメイニ師)」がメッセージ『世界の諸銀行の国王とその一家に対する資産払い戻しの禁止』『国王に死を』というメッセージを発表する。
イラン新政府はスイス”ナショナル銀行”の会長と頭取に、国王一家の資産は新政府に帰属するため国王一家への払い戻しをしないよう要請する。一方のムハマド国王側は即時の資産払い戻しを要求、顧客を守るスイス銀行の伝統と信頼を維持すべく支払いに応じる。
しかし、ムハマド国王の資産は「ボロ株」で運用されており、このままではデフォルト(債務不履行)に陥ることが発覚。「親子の情に溺れ、能力のない息子に頭取の椅子をゆずった」会長の世襲経営がスイス銀行全体の信用不安を誘発する事態となったのである。

思い悩んだ会長は、ムハマド国王の殺害をゴルゴに依頼する。ゴルゴは頭取に対し「あんたは、そんな投機的な人間じゃなかったはずだ・・・」と辛辣な言葉を投げつける。依頼を受託したゴルゴは国王の狙撃に成功、直後に頭取は事態の責任を取るべく自殺する。何も知らないどら息子の頭取は、国王の死を知ると父親の早まった自殺を嘆き、葬儀に向かうのであった。

第2巻-5『南仏海岸』第3巻-6『最後の間諜-虫-』 に登場したスイス”ナショナル銀行”頭取が、息子に頭取の座を譲り会長として登場する。『南仏海岸』で、銀行の名はスイス”ナショナル銀行”、会長の名は「ドワイト・D・グリンヒル」と紹介されている。また、ゴルゴの口座番号は『最後の間諜-虫-』で「F5R6I5D1A3YX」と記されており、これは「FRIDAY」×「ゴルゴ13」のアナグラムになっている。口座番号は本作時点でも変更はないとゴルゴが明言している。

登場回数こそ少ないが存在感のあるサブキャラクター「ドワイト・D・グリンヒル」が本作で死を迎えてしまうのは残念だ。だが、1979年に彼が残した教訓と問題提起は、今日のビジネスシーンにおいても大きな課題となっている。
○銀行の守秘義務とマネーロンダリング
スイス銀行に限らず銀行には顧客の秘密を漏らさない守秘義務が課せられる。同時に、犯罪行為などで得た資金の隠匿を目的としたマネーロンダリング(資金洗浄)の防止と報告が義務づけられている。昨今、日本のメガバンクがアメリカでマネーロンダリングの監視が甘いと指摘される事例が散見されている。二律背反的な守秘義務とマネロンの報告義務は、銀行に忠実な運用が求められる大きな課題であろう。
○債務不履行
銀行の不良債権問題は片がついたと報道されているが、今後、銀行が投資銀行的なスタンスを強めていくと不良投資資産が問題となるだろう。銀行本体での投資規制はなされているものの、収益確保に邁進する銀行は投資業務への比重を増していく。不良投資先が原因で預金者に対するデフォルトが発生したら、「銀行は、そんな投機的な組織じゃなかったはずだ・・・」と批判されるに違いない。
○世襲問題
いつの世にも、どの組織にも排斥することのできない問題。世襲の全てが悪ではないが、一度問題がおこれば世襲であることの批判を受けることを覚悟しなければならない。親子の情に溺れ能力のない子息に権力を移譲するのはそれなりの根拠と覚悟が必要だ。がんばれ、スイス”ナショナル銀行”頭取!

ズキューン

ゴルゴ13 (46) 巻掲載
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
残念ながらラストシーンまで頼りなさが抜けていな... (ゴルゴサウルス)
2011-04-07 21:55:01
残念ながらラストシーンまで頼りなさが抜けていないこの頭取の元では、”ナショナル”銀行の未来は明るくないでしょう。少なくともゴルゴはもうこの銀行に預金してはくれないでしょうしね。
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ゴルゴザウルスさん、こんばんは。 (賛美歌13番)
2011-04-10 22:11:15
ゴルゴザウルスさん、こんばんは。
>頼りなさが抜けていないこの頭取
いわゆる”スイス銀行”も顧客の守秘義務とマネーロンダリング摘発との狭間で揺れていますから、”ナショナル”銀行はダメでしょうね。ゴルゴ資金がおろされたら、一気に経営が傾くでしょうし(笑)
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