連載第3回 若草幼稚園「すくすくの森」と子どもたち・・・知的好奇心を育む(その1 子どもと知的好奇心)
高知市若草幼稚園 園長 岡林道生 執筆 〔『保育の実践と研究』(第15巻第4号)より転載〕
3.知的好奇心を育む
(1)子どもと知的好奇心
人は皆、知らないことを「知りたい」という欲求や「知る」ということの喜びを持っています。周りに起こる事象に興味や関心を寄せて、なぜだろう、どうしてだろう、と考えます。
そして、人に聞いたり、図鑑で調べたり、様々な方法で知的好奇心を満たしていきます。知らないもの、知らないことに出会う喜び、なぜ、どうしてを考える楽しさ、調べる時の期待感、わかった時の満たされた感情は、また新たな探究心を育みます。その繰り返しは、生きる喜びの一つと言っても過言ではないと思います。
すくすくの森には、季節の移り変わりの中で起こる事象の変化やそこに暮す多くの動植物との出会いがあります。行く度に、「これ何?」「あれは?」「どうして?」が繰り返されます。
すくすくの森では、年少児も、年中児も、年長児も表現の仕方は違うものの、知的好奇心に促されて身体も心も躍動しているのが良く分かります。そして、年齢を重ねる毎に、知的な働きは深まりを帯び、広がりを見せるようになります。
(2)年少児の出会い方
①言葉にならない出会い
今日は、すくすくの森に行く日だと先生や保護者から聞いていても、最初は、何のことか想像もつきません。けれども子どもたちは、先生の声の調子やバスに乗って行くことですくすくの森には、楽しいことがありそうだと感じているようです。
バスを降りるとセンダンの木の下に集って、先生から「森のお約束」を聞きます。でも、何のことを話しているのか、余りよくは分かっていないでしょう。初めて見る森の景色にびっくりして、四方をキョロキョロ見回し、落ち着きのない子どももいます。
先生の話が済むと、森では一番平坦な三角広場へと進みます。子どもたちは、新しい物や出来事に出会うと、まるで呼吸を忘れたかのように息を呑み、目を瞠ります。何も言いません。唯、驚くばかりです。
Mちゃんは、保育室でも園庭でも新しいことに出会うと興味を持ってよく見、よく質問してきます。そのMちゃんが、びっくりした様子で指をさして、じーっと見つめているものがありました。何だろうと近寄っていくと、大きなムカデが斜面を登っていくところでした。「ムカデやねー。」と私が言うと、「ムカデ?」と首をかしげて問い返し、「そう、ムカデ。」と答えると「ふーん、ムカデ」とつぶやいて、その動きから目を離しませんでした。赤黒い大きなムカデは、ゆっくり、ガサゴソと草むらの中に消えて行きました。Mちゃんは、「フー」とため息をつくとその場を離れ、日のあたる方へ駆け出して行きました。
離れて見ていると、また立ち止まり、しばらくすると動き始め、また立ち止まるということを繰り返しています。Mちゃんは、この日何度目を瞠り、息を呑み、ため息をついたでしょうか。きっと休む暇もなく驚き続けたに違いありません。Mちゃんの経験は、どの子どもの経験でもありました。
お昼ごはんを食べる時や帰りのバスの中で「楽しかったですか?」と聞くと数人が「楽しかった」と答え、「恐かったですか」と聞くと数人がこっくりと頷き、「びっくりしましたか?」と聞くと「びっくりしたー」とMちゃんや元気な男の子が答えてきました。そして、「また来たいですか。」の質問に、先生の手を一時も離さなかったKちゃんも「また来る。」と小さい声で答えました。初めての森は年少児の子ども一人ひとりに大きなインパクトを与えたようです。
HN:ちるどれん
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