「ぷらっとウオーク」 情報プラットフォーム、No.210、3(2005)
{ラスト・サムライ}
出典: ラスト・サムライ
ラスト・サムライを見ましたか。「トム・クルーズが扮するオルグレン大尉は南北戦争の英雄であるが、原住民討伐の戦いに失望して、酒浸りになっていた。近代化を目指す明治政府に招かれて日本にやってくる。
明治維新の理想と異なるとして、政府の考え方に反対した反乱軍との戦いで負傷し、捕虜となる。ここで渡辺謙が扮する勝元盛次と出会う。誇りを失っていた彼は、信念を貫く武士たちの静かで、力強い精神に心を動かされ、武士道の精神を吸収していく。そして皆が美しく滅びて行く」があらすじである。
ダンス・ウイズ・ウルブスを見ましたか。話の筋立てはラスト・サムライと重なってしまう。「南北戦争の最中、ケビン・コスナーが扮するダンバー中尉はアル中の上官の命令で、既に見捨てらている辺境の無人の砦へ赴任する。文明とはほど遠い草原の中での生活が始まる。そばに居るのは愛馬シスコだけである。
やがて野生の狼とダンスを踊るまでになり、コマンチ族とは対立から交流へと進み、「ダンス・ウイズ・ウルブス(狼と踊る男)」の通称で呼ばれるようになる。そしてコマンチ族に育てられた白人女性と恋に落ちる。
プライドの高い、毅然としたインディアンの文明に接して、お互いに心を開いていくのである。そして彼らの仲間としてなくてはならない存在となる。やがて、彼の所属していた過去と対決することになる」があらすじである。話の始まりはいずれも南北戦争である。
最近、本屋で「武士道」に関する本を見かけることが多い。タイトルは「いま、なぜ『武士道』か」「いま、新渡戸稲造の『武士道』を読む」などである。読んだ方も多いのではないだろうか。明治維新から急速度で近代化を進めるときに、クリスチャンである新渡戸稲造は危機感を持って伝統的精神である「武士道」を100年前、世界に紹介したのである。
新渡戸が心配したように、日本人は尊皇攘夷で始まった明治維新の文明開化の中で、本来の武士道を忘れ、富国強兵を進め、いくつかの戦争を繰り返し、最後は敗戦を迎える。戦後の民主化の波の中で、軍国主義に利用されたことを理由に、武士道精神までも完全に忘れようと努めた。
そして、攘夷を目的としたように経済発展を賛美し、アメリカに追いついた、追い越したと勘違いをしたとたんに、バブルが崩壊したのである。この経済成長の中で日本人の心も荒んでしまった。
ラスト・サムライが契機となって、いま欠けてしまっている「武士道精神」や「葉隠の心」を日本人に思い起こさせた。武士道精神は、ノブレス・オブリージュ(高貴なものの義務、上に立つ者の義務)を掲げる騎士道と同じであり、プロテスタントの信条とも通じる。
勝元盛次のモデルは間違いなく西郷隆盛であろう。西郷隆盛の言葉を一つ紹介する。「維新の立役者たち、戦争までして政権を取った連中は、実に豪華な生活をしている。これでは戦争で亡くなった同志に申し訳ない」
なお、アメリカの南北戦争は1861年~1865年であり、明治維新は1868年、西南戦争は1877年である。ポツダム宣言受諾(敗戦)は1945年、バブル崩壊は1990年である。
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