「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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きのこ散歩道⑦ マツタケその③

2011-01-06 | 島崎俊弘さんの きのこ散歩道

さあ、マツタケ狩り

 かれこれ十数年にもなるだろうか、当時、一番見つけたかったキノコはホンシメジだった。なぜホンシメジかと言えば、マツタケより発生場所がはるかに少なかったからである。したがって、マツタケはいずれどこかで見つけるだろうから、まずホンシメジだった訳だ。やがて念願は成就して、いよいよ本命のマツタケの番が来た。

 もともと、高嶺の花になってしまったマツタケにはしらけ気味だったが、ある出来事がっきっかけで一目惚れとなったいきさつがある。仲間から無線が入り、登山途中で見つけたキノコを鑑てもらいたいと言う。数種類のキノコを鑑たあと、つまみ上げた最後の一本が「こりゃあマツタケじゃいか!」、「やっぱりそうかね」と、何ともドラマティックな一齣だった。おすそ分けをポリ袋に入れて冷蔵庫に保管したが、ポリ袋も冷蔵庫も意に介さぬがごとく台所はマツタケの香りが漂った。味がまたすばらしく、標高約1500Mがこの香りと味を育んだろうと感激したことだった。後日談だが、地元の人によれば、ここのマツタケは標高の高い岩場で採れるので肉質が締まって丹波産に匹敵するのだそうな。

 他人が見つけたマツタケには現地でも何度かお目にかかったが、いよいよ自分で見つける番が来た。ここはマツタケ山だが一部の場所を除いて特に制約のない山、子供4人を含む10人のキノコ狩りでついに感動の初対面が実現した。それも一挙に5本が円形に生えている信じがたいような目くるめく光景である。大人たちの異様な興奮をいち早く察知した子供たちは、自分の手で抜き取るマツタケを早々に決め、写真撮影の終了を今や遅しと待っていた。

 松葉を押し上げ堂々と姿を現したマツタケは、すぐに抜き取られる運命にあるのに悠揚迫らず実に貫禄がある。誇り高き香りの王様も気象事情なのか今年の発生は激減した。名人たちは地中の中の物まで目ざとく見つけるが、傘が開いて胞子を落とさなければ子孫は繁栄しない。聞けば、早く採らないと誰かに採られるからと言う。無論おっしゃる通りだが、何事も共存は難しい。

 森ときのこを愛する会 

 島崎俊弘 

 

島崎俊弘(森ときのこを愛する会会長) さんの記事





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