極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

八つ手と不都合な税制

2009年11月24日 | 政策論



年頭の 反故の誓いに 苦虫の 八つ手を他所に ボジョレーヌーボー



【消えた成長モデルの復活は】

TV-news and impotant items

行政刷新会議の事業仕分け生中継という新しい仕掛
けが評判は結構良い。当初これを「公開裁判」との
守旧派からの批判はなりを潜め傍観しているが、さ
すが、ノーベル賞受賞者の野依良治は「外国から買
って来ればという人がいるが、それはその国への隷
属を意味する。歴史の法廷に立つ覚悟があって言っ
ているのか」(国粋派 vs. 国際派?)との批判等が
相次いでいる。当然、政府担当者は配慮済みで参加
型民主主義を実践し「低成長時代のリアリティに向
き合う政治意識
」への確認ステージとして設定して
いるだろうし、「根本的な財政再編」に収斂させよ
うとしているようだ。



Assorted international currencies.jpg 租税

【低成長時代の税制改革】

  伊集 守直

経済状況に合わせて国の経営、とりわけ財政は重要。
しかし、日本の税制は複雑・煩雑すぎるという思い
根底にあった。もった簡素化できないかと(→リス
クを負い、自助、互助、自制的に国の富を生み出す
国民の負担を出来る限り小さくし、必要とする富を
国民に公平に再配分する)。そこで、「低成長時代
の成長モデル」を考える好機としようということで、
伊集守直の『公平と効率が調和した税制の構築に向
けて』(「現代思想-特集 政権交代」、青土社、
09年10月号)などを元に考えてみる。

ISBN978-4-7917-1203-8.jpg

(1)現行税制の問題点

高度資本主義社会では、消費税導入と税の捕捉が重
要だと考えてきた。或いは、伊集守直が指摘するよ
うに、所得税と消費税を二者択一の選択肢として考
えてきたようにも思える。言いかえれば、
税の公平
と効率の対立の歴史
であったが、負担の公平の観点
からは、消費に回されない貯蓄を非課税とする消費
課税が批判され、効率性(経済的中立性)の観点か
らは、貯蓄と貯蓄収益がともに課税される所得課税
が批判されるからである。所得税は支払い能力に応
じた公平、富裕層ほどより高い租税負担を負うとい
う垂直的公平を重視した特徴をもつ。

(2)所得税の問題点

所得税は支払い能力に応じた公平、富裕層ほどより
高い租税負担を負うという垂直的公平を重視した特
徴をもつが、1990年代前半のアメリカは、財政赤字
に悩まされていたが、
所得税の最高税率の引き上げ
ることにより90年代後半の景気回復に合わせて税収
が伸び、財政再建に寄与したという経緯
をもってい


(3)消費税の問題点

消費税は所得税と比較して、効率性を重視した租税
とされ。消費税から所得税に対する批判として、

実現利益
の課税が困難であること、インフレ調整が
必要であること、世代間の再配分には無力であるこ
となどが指摘されているが国の消費税には解消すべ
き課題が多いとされる。単刀直入にいうと消費税に
は「益税」と「滞納」の問題がある。

消費税の益税とは、消費者が負担した消費税の一部
が国庫に入らず、事業者の手元に残ってしまうこと。
これは、年間売上高3千万円以下の事業者について
納税が免除されていることと、年間売上高2億円以
下の事業者を対象に簡易課税制度が設けられている
ことがその原因です。特に、年間売上高3千万円以
下の免税制度は、消費税導入以来一度も見直されて
いない。免税事業者は全事業者の6割強の368万
言われ、これらの免税事業者の一事業者当たり平均
売上高を2千万円(第2種小売業・簡易課税制度適用
の場合)と仮定すると、7千億円もの消費税が免税
事業者の手元に残る
計算となるといわれる。

消費税の滞納額は、ここ数年の景気低迷を受け、現
在6千億円といわれ、事業者の消費税納付は年4回
(中小事業者は年2回)で、消費税を預かっている
期間が長く、資金繰りに苦慮すると、つい運転資金
に流用されるケースが多いためといわれる。そこで
納付回数を増やし、消費税が事業者の手元に滞留す
る期間を短くすることが検討されている。因みにフ
ランスやドイツでは毎月納付する仕組みをとる。


 H22年度税制改訂

その1つが帳簿方式による仕入税額控除の問題。消
費税(付加価値税)は一般的に仕入税額控除を適用
しているといわれる。その仕組みは、各事業者の売
上にかかる消費税額から仕入にかかる消費税額の控
除を認め、実質的な課税ペースを付加価値(=課税
売上高-課税仕入高)とし、各事業者の実質的な課
税ペースから算定された税額を合計することだが、
先進諸国の多くが採用している前段階税額控除方式
(=インボイス方式)では、仕入にかかる納付税額
表(インボイス)の受領を条件に、仕入にかかる税
額の控除を認めている。そのため、仕入にかかる前
段階までの税額が正確に控除され、消費税の買い手
への転嫁が容易となり、事業者間取引の相互チェッ
クも可能となる。

(4)所得税の改革

総合課鋭化による長所は5つになると指摘する

①総合課税の対象になる所得から分離課税の対象と
なる所得に転換する租税回避が無意味となる。

すべての所得を合算して累進税率を適用するので、
所得の低い場合には低い税率を、所得の高い場合に
は高い税率を自動的に組み込むことができる。低所
得階層の租税負担が軽減され、高所得階層の負担が
高まるので累進課税の理念にかなう。

最大で年間約二兆円の増収効果を見込めることか
ら、結果的に財政再建にも寄与する


④景気の変動による所得の増減に応じて恣意的に税
率の引き上げや引き下げを行う必要がなくなる。累
進税率が適用されるので、景気がさらに回復すれば
更なる自然増収も可能となる。景気回復が本格化す
る前に、累進性や所得弾力性の高い租税構造を再建
することが目指すべき方向である。

⑤所得税の短所とされる勤労世代の負担を軽減できる。

(5)社会保険料の改革

伊集守直の提案は、一元化して報酬比例でまかない
所得階層別にみた逆産的負担は解消される。また、
比例拠出率での負担の場合、雇用者負担と雇用主負
担の割合の問題が生じるが、その割合の内訳は労使
間の協議により策定することが望ましく、税体系全
体からみた税負担の配分の観点からも重要である。
高齢世代の低所得階層には所得税の課税最低限が機
能するので負担増にはならない
。また、この課税方
式を勤労世代と高齢世代という世代間の負担として
とらえると、高齢世代の中で高所得を得ている階層
の租税負担を適正化し、その分を動労世代の租税負
担の削減に振り向けることができるとする。

(6)消費税の改革

また、消費税率の大幅な引上げには、信頼性、確実
性を高める改革がまず必要。社会保障拠出金(社会
保険料)の負担・給付関係の透明性を確保した上で、
消費税の増税を検討した上。インボイス方式の導入
を行えと指摘。但し、消費税を社会保障目的現化す
る以下の点で望ましくないとする。

①消費税は、基幹的な租税の一部と考えられるため、
目的税という発想はなじまない。

②目的税は財政運営の硬直化を招く。特定の歳出と
歳入をリンクさせることを認めれば、議会の役割は
低下を免れない。

③何らかの手段で消費税の逆進性の緩和をしない限
り、所得再分配的な要素の強い支出の財源にする場
合には、理論的整合性を欠いたものとなる。

④消費税の社会保障目的鋭化の主張の一部に、企業
による社会保障負担の抑制という意図があるとすれ
ば、雇用者と雇用主との間での負担のバランスが損
なわれる。

⑤消費税を社会保障目的鋭化するということは、社
会保障の受給は個人単位で行い、財政負担は世帯単
位で負担する消費税で行うことを意味するので、給
付と負担の単位の不一致が生じ、給付・負担の対応
関係が切断されてしまう。

(7)資産課税の改革

資産課税の目的は、富の集中防止による機会の均等
の確保、所得税・消費税の補完にあるとされる。一
般的に、持ち家比率や株式保有率は勤労世代よりも
退職世代の比率が高い。そのため、帰属家賃や未実
現キャピタルゲインを所得税等で課税できれば、そ
れにより世代間格差の是正もできるが、所得税改革
と消費税改革の成否は、資産課税改革の程度と密接
に関わる。所得税および消費税の改革が進むほど、
資産課税の役割を最小化できる


①資産移転税である相続税・贈与税は、課税ベース
を適正化することに加えて、生前分与の弊害を正す
ため、相続と贈与を統合して、死亡時までの贈与累
積額を相続額に加算した資産移転累積額に課税する
のが合理的である。

②資産保有税として純資産税(経常的財産税)を再
導入して資産移転税を補完する。

③税務執行面では納税者番号制度により透明性と信
頼性を確保する。

これらの資産移転税と経常的財産税は累進課税を適
用するが、基礎控除を設けることで低・中所得階層
を課税対象から除くので、高所得階層を中心とする
ものとなる。所得税・消費税の改革が進展すれば、
累進税率のフラット化も可能となる。

(8)法人税の改革

 

S法人の段階で課税されないS法人の所得が高所得
階層に集中し、それに超過累進税率が適用されたこ
とも大きな要因となっている。これら二重課税の調
整を意識した課税方式では、個人段階での所得税の
課税が適正になされていることを大前提にしている。
現在、法人段階で課税せず個人段階で課税するパス
・スルー課税
が議論されているが、個人所得税が機
能不全であれば、個人段階にパス・スルーされた所
得への課税が捕捉されていないとされる
。法人税だ
けを取り上げるのではなく、社会保障負担も含めた
全体としての企業負担に着目し、家計・雇用者と企
業との間で税負担をバランスよく配分し、課税の公
平性を保つことが重要であると指摘しているが、営
利法人もまた社会的財産で、法人の規模に関わらず、
限りなく免税に近づけろとするわたし(たち)の考
えとは異なる。
 
(9)税務執行面の改革

要点を整理すると、①納税者番号制度の導入、②イ
ンボイス方式の導入、③社会保障拠出金の所得比例
化などがあげられる。公平と効率を調和させるとい
う視点から論じてきたその方法の1つとして、消費
税を増税する際にその税収を地方に配分し、地方の
基幹的な財源とすることを指摘しているが同感であ
るが、税制法体系全般の整理整頓を行い、簡素化(
業務量の縮小)につとめることを5つめに加えなけ
れば意味がない
。また、「低成長時代」には所得税
の比率を多く取ることに躊躇はいらないと考える(
その裏付けは充分にそろっている)。







娘子らが 織る機の上を ま櫛もち 掻上げ栲島 波の間ゆ見ゆ
  
              作者未詳/万葉集 (巻7・1233


八つ手(学名:Fatsia japonica)は、ウコギ科の常緑
低木。20cm以上もある大きな葉をつける。葉はつや
があり、やや厚手。形は文字通り掌状だが、7つま
たは9つ(奇数)に裂けており、8つに裂けることは
無い。学名のFatsia は日本語の「八」(古い発音で
「ふぁち」か)または「八手(はっしゅ)」に由来
するという。花は晩秋に咲き、球状の散形花序がさ
らに集まって大きな円錐花序をつくる。



花びらは小さいが花茎を含めて黄白色でよく目立つ。
他の花が少ない時期に咲くため、気温が高い日はミ
ツバチやハナアブ、ハエなどが多く訪れる。果実は
翌春に黒く熟す。反省なき自堕落な歌を総括に一首
を詠める。今年のワインの出来は最高だと少ない経
験だが彼女に報告すると、大きな八つ手のビンタを
喰らい、『お酒は控え目に』の短冊が壁でゆれてい
ると。庭木に使われるウコギ科の「ヤツデ」。花言
葉は「分別」。

                  



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