世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

インドIPO企業、121社が「行方不明」 not in the same jungle .

2009-07-15 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月15日(水)

インドの検察当局は、1990年代に上場を果たした企業で、上場を維持するための報告義務(regulatory filing requirements)を果たせず、「行方不明」になったものに対する調査を行っているが、その対象になっている会社数が121社に達していることが判明したと、Financial Timesが報じている。

また同時に、株式市場の監視機関であるインド証券取引監視局(the Securities and Exchange Board of India)が過去5年間に上場廃止を命じた会社は100社、資本市場での活動を禁じた取締役は378人に達することを明らかにした。

90年代に株式市場の自由化が行われ、甘い規制を利用して基準を満たしていない数千社に上る会社が、続々と新規上場(IPO: initial public offerings)した。そして、そうした泡沫会社の経営が破たんし、多くの投資家が損失をこうむった例は枚挙にいとまがない。

超大型の粉飾決算が突然露見して、史上最大の損失を投資家に与えた詐欺事件で逮捕されたSatyam社の会長のざんげの言葉が思い出される:「トラの背中に乗って暴走した。食われないようにするため、降りるにも降りられなくなった」

インドの会社にはまだ、企業統治(governance)の概念が希薄であるし、上場審査のためのデュー・ディリジェンス(due diligence)も、それを行うべき投資顧問会社が殆ど適切に行っていないのが現状だとの指摘がなされている。

所轄大臣は、最近の会見で、「これから会社と取締役に対する規制を強化していく。特に一族経営の会社の情報開示(disclosure)を強化する」と述べているが、これまで、こうした企業犯罪を、検察が告発した例がないのが、インドの特徴である。

ムンバイに本社を置く証券会社の幹部は、「規制は、確実に強化された。事態は改善されつつある。われわれは、もはや1990年と同じジャングルの中にはいるわけではない」(“Regulation has definitely improved. We are not in the same jungle as in 1990.”)とコメントしている。

このような言葉だけで、インド株式市場の透明性に関する信任が回復されるわけはないのは当然である。

中国、鉄鉱石価格交渉が贈収賄事件化 Stealing Steel Secrets

2009-07-14 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月14日(火)

先週中国政府は、鉄鉱石の多国籍企業Rio Tinto社の上海事務所従業員である、豪州人1人と、中国人3人の合計4人を、「スパイ容疑」で拘束した。続いて今週に入って、中国の鉄鋼業大手5社の幹部7人が、収賄容疑で取り調べのため拘束されていることが、中国の新聞報道で明らかになった。

この事件の背景には、二つの重大な出来事が先行して起こっていることに注意が必要である。

ひとつは、宝鋼集団などが加盟する中国鋼鉄工業協会による国際資源大手との鉄鉱石の価格交渉で、中国側は33%の価格引き下げを提示する資源大手のリオ・ティントに対して、中国側は、40%超の値下げを強行に要求して、決裂状態にある。

今中国の鉄鉱石を買い付けるお客の立場にある、製鉄業界は、この4人の逮捕事件後、パニックの状態にあるらしい。幹部級に取材した、上海在住の外国人アナリストによると、「次は自分の番かと、戦々恐々としている」ということである。

鉄鉱石価格交渉に当たって、鉄鉱石輸出者は、交渉のために、市場情報を入手してきたことに対して、中国政府は、その情報は「国家機密」であるとして、それを外国企業に渡したものを、スパイ罪で、逮捕に踏み切っているのである。(the exchange of confidential market data that Beijing now considers state secrets)

いまひとつは、Rio Tintoが、今年2月、中国の政府系アルミニウム大手Chinalcoからの約2兆円に及ぶ投資受け入れを発表したが、オーストラリア政府からの承認が得られなかったことを理由に契約破棄したこと。

中国政府が、探せばいくらでもある数ある贈収賄事件の中でも、Rio Tnitoを狙い打ちにしたのは、この破談が、中国政府の海外投資による資源戦略を狂わせたこと、また中国政府の面子を著しく損ねたことの、意趣返し(retaliation)ではないかとの憶測を呼んでいるとのFinancial Timesなど報道である。




自民党、都議選惨敗 A severe judgement and heavy defeat

2009-07-13 | 世界から見た日本
2009年7月13日(月)

Financial Timesのネット版が、都議選で127議席のうち、民主党が54議席を獲得したのに対して、自民党は38議席しか取れないという大敗北(a heavy defeat)を喫したことを報じ、来るべき総選挙において、戦後50年にわたる自民党体制の終焉(an eclipse)が起こるであろうと予想している。

そして、石原伸晃幹事長代理の、「厳しい都民の審判を受けた」(a “severe judgment” by the public)との発言とともに、自民党内部では、「麻生太郎首相では総選挙の敗北は必至である(he is leading them towards near-certain defeat in a national election)として、同首相の退陣を求める、「麻生降ろし」の声(open internal revolt from party colleagues)が高まっていることを報じている。

また同紙は、今回の敗因分析として、自民党は、野党支持の選挙民が民主党幹部の相次ぐ献金疑惑に愛想を尽かし(cynicism)、投票所に向かわないことをひたすら祈ったが、投票率が前回を10ポイント上回る55%となったことが、その期待を粉砕したことにあるとしている。

また、麻生首相は、「都議選の結果と国政選挙は無関係」と懸命に、敗北責任を否定しようとしているが、今回の選挙中に、「麻生首相が応援演説に来ると、応援にならず逆に足を引っ張る結果になった」との政治評論家の分析を引用してその不人気ぶりを紹介している。

そして、麻生首相が、街頭演説(a stump speech)で「勝利(victory)を目指す」というべきところを、「僅差の敗北(narrow-defeat)を目指す」と失言したことが、メディアの格好の嘲笑の対象(the target of media mockery)にされてしまったことまで紹介している。

昨年は、洞爺湖サミットが福田首相の引き時を決めるきっかけとなったが、今年は麻生首相はイタリアでのG8サミットへの出席にこだわったと言われている。来年のサミットも、日本の首相は新しい人が行くことになると、小泉、安倍、福田、麻生と5年続きで、日本の顔が入れ替わることになる。


オバマ、アフリカに魂の旅ー大地の子 A son of the soil

2009-07-12 | グローバル政治
2009年7月12日(日)

オバマ大統領は、サミットの帰路サハラ砂漠以南(sub-Saharan Africa)に始めて足を踏み入れ、アフリカ大陸でもっとも安定した民主政体を維持しているガーナを訪問して、「植民地支配からの解放闘争が終わった今こそ、自らの手で民主化と、法治国家建設の戦いを」と、力強く呼びかけた。そして、「アフリカに、独裁者(strong men)は要らない。必要なのは強い政体(strong institutions)だ」という呼びかけに、ガーナ国会議員は、“Yes we can”と大合唱で答えた。

オバマ大統領が、モスクワ・ローマのあとの訪問国にガーナを選んだ理由として、「21世紀の世界の形成に、ガーナも加わることになるからだ」と説明し、聴衆を熱狂させた。

「アフリカにもっとも欠けているのは責任ある自治(good governance)である。責任ある政体なくして発展はない。」と呼びかけ、アフリカ諸国にはびこる腐敗(corruption)を退治することを強く訴えた。「アフリカの独裁と暴力と腐敗が根絶されない限り、欧米からの継続的に有効な投資も行われない」と続けた上で、米国はアフリカへ施しの援助国ではなく、真の構造改革(transformational change) のためのパートナーとなりたいのだと力説した。

その後オバマ夫妻は、17世紀以来、奴隷輸出のための「カーゴ集積所」として使用された砦、the Cape Coast Castleを訪問した。ミシェル夫人の先祖は、この西アフリカから奴隷としてアメリカに「輸出」されたと伝えられている。

オバマ大統領は、この場所で:
“As African Americans there is a special sense that on the one hand this place was a place of profound sadness but on the other hand it was here that the journey of most African Americans began,”(アメリカの黒人として、ここがわれわれの先祖の深い悲しみの場所であったのだとの思いにとらわれると同時に、ここから多くのアメリカ黒人の歴史が始まったのだとの特別の思いがこみ上げてくる)と語った。

オバマ大統領は、アフリカの人々に取って、'a son of the soil'(大地の子)として認識されて、特別なまなざしを向けられていることは言うまでもない。



オバマ怒る、G8と国連は時代遅れ antiquated and ill-prepared

2009-07-11 | 米国・EU動向
2009年7月11日(土)

昨日、本欄にて懸念したとおり、残念ながら、イタリアにおける、G8に続いて開催されたその他主要国を加えたG17において、温暖化ガスの削減について合意が成立せず、今後の交渉のヘゲモニーが、G8から中国・インドなどの発展途上国に移動したことが明確となった。

総括会見の中で、オバマ大統領は、「G8も国連も、地球全体が抱える問題に対して、時代遅れで、対応能力を失った」(the G-8 and the U.N.as antiquated and ill-prepared for the challenges facing the globe.)と言い切って、不快感をあらわにした。
して
そして、「こうした首脳国際会議は儀式化してきて、創設時に役目と定められた問題に対する対応能力を失って久しい。席とりごっこ(musical chairs)のような遊びの会議はもううんざりだ。就任以来6ヶ月に開催されたこれに類する首脳会議の回数は多すぎた」とまでいって批判したのである。TVに映された、休憩時間中の首脳間の雑談の風景の中でも、国連事務総長への態度は、見ていて「そそくさ」と応対した印象を与えた。

オバマ大統領としては、今回交渉の中心となるべきであった中国の胡錦涛主席の直前の欠席もあって、十分な存在感を示しえなかったことに、大きな失望感を抱いて帰国することになったと推測される。

そしてG8が、そのかつての「金持ち国」の指導的立場を完全にうしなっているのも明白な事実である。さらには、「米国一国指導体制」も、金融危機の発信源となったことで、自由主義経済の旗手としての地位とともに失った。オバマ大統領の怒りは、米国一国だけが君臨した20年間の「超大国」からの転落の嘆きでもある。

こうした流れを見ていると、9月の国連総会では、国連の非効率・官僚化・肥大化に対して、近年特に米国から不満が高まっているので、国連の機能強化、予算の強化と引き換えに、オバマ大統領は大胆な「行政改革」を、提案するかもしれない。



温暖化ガス削減合意なるか ‘We just don’t trust you guys’

2009-07-09 | 環境・エネルギー・食糧
2009年7月9日(木)

イタリアで開催中のG8首脳会議で、写真のときはいつも笑顔を無理に作って見せているように見える麻生首相は、今回の集合記念写真では、左端に追いやられて、過去の日本の首相が、誰言うともなく真ん中に近いほうに招じ入れられていたのとは大違いで、日本の地位の凋落を、しみじみと考えさせられた。

温暖化ガスの削減目標を定めた京都議定書(the Kyoto Protocol)が2012年に失効するため、2013年以降の新基準に関する合意を、今年12月のコペンハーゲン会議までに大枠が設定されなければならず、今回のG8会議は、昨年の「洞爺湖宣言の具体化」という非常に重要な意味を持っていた。

京都議定書には、米国と中国が不参加であることに加え、定められた数値目標が、日本を含めて守れず、「精神条項化」してしまっているのが実態である。そして排出権取引(cap and trade)の考え方も、「金融デリバティブ市場崩壊」を受けて、拡大の勢いを失った。

この状況を打開するために、先進国側では、昨年の洞爺湖サミットでの「薄氷の」合意である「2050年に、世界全体で50%削減すること」に加えて、中国やインドなどの発展途上国への妥協として「先進国には80%を削減するという条件を課す」ことでほぼ意に達しているようである。しかし発展途上国側は、納得していない。特に、年度を決めた削減の具体的数値目標を設定することには強い抵抗を示している。

発展途上国側の主張は、「産業革命以来、好きなだけエネルギーを使って経済発展をしてきた先進国が、その結果生じた温暖化問題を解決するために、途上国の経済発展を阻害する条件を課する権利はない」ということに尽きる。

そして、2050年目標に対しても、「先進国は途中の達成目標をも示せ。そうでないなら2050年の数字をコミットしているとは取れない」と反論している。要するに、途上国側には、先進国側のエゴと欺瞞性に対して、「皆さん,おっしゃっていることは信用できませんな」(‘We just don’t trust you guys‘)という強い不信感があるのだ。

このG8に向けて、オバマ大統領は、直前の下院の会議で、「2020年までに20%削減」という法案をかろうじてまとめてきて、温暖化ガス削減交渉で国際社会への「復帰」を果たすべくいき込んできた。しかし、肝心の中国の胡錦涛主席が、新疆・ウイグル問題で急遽帰国してしまったので、まさに拍子抜けとなってしまった。

今回の合意文書は、焦点をぼかしたあいまい表現で終わり、中国を入れて秋口に交渉再開とせざるをえず、年内の「コペンハーゲン議定書」は見送られる公算が大である。


オバマ、ロシアで余裕を示す Sasha: Agent 99 in Get Smart

2009-07-08 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月8日(水)

戦略核兵器削減に関するロシアとの合意を取り付けたオバマ大統領は、サンクトペテルスブルクの記者会見でリラックスしたやり取りを行い、余裕のあるところを見せた。
 
まず、対ロシア外交は、目的どおり巻き戻せた(reset)が、本格的な世界の安全保障の実現にはこれからがんばる必要がある(the hard work of actually seeing this produce improvements)と語った。

そして北朝鮮問題では、ロシアと中国と共同歩調で制裁措置をとることができるようになり、イランの選挙後の暴動に対しても国際世論がひとつになっていることを、米国の外交的な成功とはいえないまでも進展であると自信の程を見せた。

また、ビジネススクール(the New Economic School)の卒業式の挨拶の中で、「ロシアは、民主主義の方向へと、バランスをとり始めている。しかし法治国家の確立、政治・経済の透明性(rule of law/ transparency) の重要性への認識がもっと高まることが必要」との趣旨の発言を行い、やんわりとロシア国民に「説教」をして見せたのである。

さらに、砕けた調子になった大統領は、ロシア首脳会談の話題より、米国のマスコミがマイケル・ジャクソンの葬儀の話題を優先していることに対して、「いらいらはしない(not irritated), 国民的大歌手は、アメリカの文化の一部(part of American culture)であり、人の興味も核兵器問題にもどるのも時間の問題だ」といなした。

そして、「緊急経済対策で判断に誤りがあったのでは」との、厳しい質問を受けた後は、同行した家族、特に娘のSashaが、トレンチコートを着て、手をポケットに突っ込んでクレムリンの中を歩き回ったことに触れて、『人気TVスパイコメディ「それ行けスマート」(Get Smart)の主人公Agent 99がロシアに潜入したシーンそっくりだ』との、夫人との会話を披露した。


中国「暴動」発生を公式報道 Unrest in China’s Xinjiang region

2009-07-07 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月7日(火)

北京オリンピックの際に勃発したチベット暴動に加えて、今週に入って新疆・ウイグル自治区でも、イタリアでのG8サミット開催の直前のこの時期に、「回教徒でトルコ族」であるウイグル人の暴動が省都ウルムチを中心に勃発している。現在のところ死者の数は、156人に上がったことを、新華社通信の英語版も報じている。

中国は、本来的に他民族国家であり、広国土を安定的に統治することがむずかしいのは、歴史が証明している。圧倒的な漢民族の数の優位と、軍と中国共産党の力で辺境の少数民族は抑え込まれ、世界から情報遮断されてきた。しかし、インターネットと携帯電話の時代になって、彼らの主張と行動は、世界に同時に報道されるようになった。

今回の暴動と北京オリンピック直前のチベット暴動との大きな違いは、中国政府が「暴動発生を間髪おかずに発表」するとともに、「新華社通信」も淡々と、死者発生と、暴動現場での負傷者の姿まで世界に配信していることである。公式説明では、「暴動は国外勢力に扇動された無法者の悪行」が発生原因であるとされている。これは、亡命ウイグル人が、組織している”World Uyghr Congress”は、ミュンヘンに本拠を置いて活動しているので、暴動はここから指示を受けているということを指している。

新疆には、日本の5倍の国土に2000万人の人口しかいない。しかしその石油と天然ガスの埋蔵量は、それぞれ中国全体の埋蔵量の28%と33%を占めている。西部大開発によって得られたガスは、「西気東輸」(西部地区で生産されたガスを東部沿海地方にはこんで経済発展させよう)政策によって、パイプラインで上海まで送られて、その経済発展を支えている。

一方、経済的恩恵から遠ざけられ、人種差別的待遇に苦しむウイグル族の反抗は、今後も中国にとっても大きな問題である。米国の「国際的なテロ集団との戦い」を中国が強く支持する理由もここにある。

イタリアでのサミット会議中に、中国側は、この事態をどう説明するのか興味のあるところである。



オバマ、ロシアの二匹の熊と対峙 Obama to meet two bears

2009-07-06 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月6日(月)

イタリアで行われるサミット出席を前にオバマ大統領は、ロシアを公式訪問するが、「ブッシュ前政権時代に悪化した両国関係の根本的な巻きなおし(reset relations)を行いたい」と語った。首脳会談の重要なテーマは三つ。戦略核兵器削減条約更改、北朝鮮・イラン問題、そしてアフガニスタン平定のための兵站面でのロシアの協力取り付けである。

1991年に締結された戦略核軍縮条約(START)は、今年12月に失効するので、今回の首脳会談では、その改訂問題の方向付けができるかどうかが最大の注目点である。一方、米国がイランの核脅威対策として、ポーランドとチェコに展開しようとしているミサイル防衛網に、ロシアは強く反対している。米国はSTARTとミサイル防衛網とSTARTは別個の問題とし、ロシアは切り離せない(interconnected)としている。

オバマ大統領を待ち構えているのは、メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領とプーチン(Vladimir Putin)首相という二人の首脳である。メドベージェフは大統領として、プーチン政権を継承したのであるが、実権はプーチンが今でも掌握しており、2012年の大統領選挙では、プーチン再出馬が濃厚視されている。

オバマ大統領は、ABC放送とのインタビューで「メドベージェフとはうまく話ができる(we move forward with President Medvedev)が、一方「プーチンのやり方は冷戦時代のもの。片足を、昔に突っ込んだままだ」(one foot in the old ways of doing business, and one foot in the new)と批判。

オバマ大統領は、月曜日にメドベージェフ大統領と会談してから、火曜日にプーチン首相と別個に会談する。この別個の会談とその順序に意味がありそうだ。

ペーリン、アラスカ州知事突然辞任 A curve ball?

2009-07-05 | 米国・EU動向
2009年7月5日(日)

前回大統領選挙で、敗れたMcCain氏の副大統領候補として突然昨年の秋口に浮上して、数々の「お馬鹿ぶり」を披露して、選挙戦を盛り上げた現職のペイリン・アラスカ州知事(45歳)が、何の前触れもなく(sudden and unexpected)、約2年の任期を残して突然辞任を発表した。

「彼女に関して予測が付くのは、予測の付かないことをするということだけだ」と揶揄され、選挙期間中からあれやこれや取りざたされた倫理問題に関して、「もうアラスカにはもう飽き飽きしてしまった」のだろうとも、「2010年の知事再選すら危うくなったので早々と転進したのでは?」などの憶測を呼んでいる。

とりわけマスコミの興味を引くのは、2012年の米国大統領選挙への出馬準備としての、知事辞任という観測である。自伝が、来春には出版されるので、その印税を軍資金にして、出馬をぶち上げる可能性は十分あるのだ。

共和党は、今年から来年にかけて、約40州で、知事の改選が行われるので、Palin女史が大いに、選挙応援で力を発揮してくれるだろうと期待する向きもあるが、党の中では、「彼女のイメージはマイナス」("She has become a damaging figure on the Republican stage,")という見方のほうが強いようだ。

そして肝心の大統領選挙に関しても、「8か月以上も彼女と付き合える選挙参謀と運動員はいない」だろう、と悲観的で、何よりも彼女に、政治的な経験に不足していることが「不適格」の決定的要因である、との意見が支配的である。

ABC放送切っての論客Cokie Roberts女史のコメントが、全米の意見の公約数を代表していると思われる: 「わけがわからない。(mystifying)」 「いっていることが飛んでしまっている。(a bizarre announcement)」。「意味不明で、とても大統領選に出ようとする人のすることではない(It didn't make a lot of sense, and it doesn't seem to be the kind of thing someone would do if someone was running for president.")

決定的なオバマ大統領への対抗候補を出せない共和党は、本命を絞り込む前哨戦中に、彼女の「反社会主義政策」を、反オバマキャンペーンに大いに「活用」することは十分考えられる。


中国、米国の「炭素輸入税」に反対 carbon import tax

2009-07-04 | 環境・エネルギー・食糧
2002年7月4日(土)

先週、米国において、排出量取引制度を導入する「クリーンエネルギー安全保障法案」(American Clean Energy And Security Act of 2009)が、219対217の僅差ながら、米下院で可決された。この法案は、これから上院の審議に回されるが、最終案がまとまるのは、12月のコペンハーゲンCOP15会議における、京都議定書改訂合意期限のころになると予想されている。

この法案は、「排出権取引(cap & trade)の導入によって、米国全体の温室効果ガス排出量を2005年比で2020年までに20%削減、2025年までに83%削減させる」という意欲的な目標を定めている。オバマ政権としては、ブッシュ政権時に、「京都議定書から離脱するという国際信義違反」を行った米国の信頼を回復し、地球温暖化問題でのリーダーシップ回復のためにどうしても成立させたいものである。

この法案の、2013年以降の温暖化ガスの排出制限目標そのものには一定の評価が与えられるものであるが、問題は、超党派合意を得るために、審議途上で、各種の妥協結果が付帯されてしまっていることである。

今回も、『排出上限を設定していない国からの輸入品に対して、「炭素輸入税」(carbon tariffs)を課す』としていることに対して、早速中国は「グローバル通商戦争」(a global trade war)を引き起こすものだとして、他の発展途上国と声を合わせて反対の声を上げ始めた。

中国の「これは、温暖化対策を偽装した(disguise)貿易制限だ」との批判に、インドも同調している。そしてオバマ大統領自身すらも、「炭素輸入税」は、貿易制限と取られる恐れがあるので、「もっと良い方法があるかもしれない」とほのめかし始めている。

また、法学者の間でも「炭素輸入税」制度が、WTO協定に違反しないかは微妙との意見が支配的である。「炭素輸入税」の導入について、WTOや国連は、「そのような差別関税は、WTO協定内で認められる可能性はなくはない。しかし適法範囲にあると証明することも難しい」と煮え切らないことをいっている。

今後、「ポスト京都議定書」の成立は、今年後半から来年にかけて大きな国際問題として浮上してくる。それに伴って、各国内での利害相反が明らかになり、それがより大きな国際間の論争となることも間違いはない。経済回復を最優先とする、国際協調が支配する中で、「地球環境」問題に、人類的見地の建設的議論ができるかがまさに問われている。

オバマ、グリーンで雇用創出を  smart grid, clean green energy

2009-07-03 | 米国・EU動向
2009年7月3日(金)

オバマ大統領は、地球環境保護と温暖化対策のために、電力網への、ITとエレクトロニクスの導入による電力の効率利用を図る「スマート・グリッド」構想(smart grid)と、再生可能エネルギー(green energy)の導入の加速的推進を、重要な政策課題に挙げている。

そして、昨日も、エネルギー業界のトップとの会談を終えて出てきた大統領は、「クリーンな新エネルギーによる経済再生(a new clean energy economy)が、長期的な繁栄をもたらす」ものであり、「新エネルギーを生産し、貯蔵し、配送することで数百万人分の雇用が創造できる」と力説した。

ところで、6月の失業は、予想値を上回って、絶対数で46.7万人の増加となり、5月の32万人を大きく超え、失業率を9.5%まで押し上げた。 3月に、人々が、”green shoots(緑の若い茎)”がにょきにょき伸び始めたかと期待した経済の底打ち・反転上昇は息切れ状態である。

このところの株価の動きが象徴するように、好材料・悪材料が交錯して現れ、経済学者、政策担当者、相場師、マスコミは、「一喜一憂」を絵に描いたような発言を続けている。昨日、「日銀短観」(tankanは、英語になっている)は、「2年半ぶりの改善」と発表されたが、Wall Streetは、それは無視して、足元の失業増大に目が行き大きく値をさげてひけた。

2007年の後半から始まったとされる今回の米国景気の後退(recession)で、失われた職は600万を超える。クライスラー・GMという大型の、Chapter 11適用の影響が大きく、波及効果が絶大な住宅と自動車の二大産業の不振が続く限り、米国に”green shoots”は現れるはずはない。

消費・サービスが伸びてきても、その商品の生産やサービスの中国への依存は高いので、農業・製造業の雇用増大に即効性はない。そんな中で、息を吹き返しつつあるのは、レストラン業であるという。ただし、来店の客単価は、恐ろしく下がっていて、売れ筋は、4.99ドルのサンドイッチだそうだ。アメリカもワンコイン化している。


中国、ネット世論に敗北 China code ‘delay’ means scrapping

2009-07-02 | 中国・ロシア・インド・ブラジル動向
2009年7月2日(木)

中国政府は、7月1日以降に販売されるすべてのPCに、「青少年をポルノサイトから守る」と称して、特定サイトをブロックできる「Green Dam-Youth Escort」というソフトを搭載してから販売することを、義務付けるとしていたが、その実施を「延期」すると昨日発表した。

中国政府は、この措置を発表して以来、米国からは「インターネット上の自由な情報の流れを阻害する検閲」であるとの抗議を受け、また中国に活動拠点を置くグロ-バル企業からも連名の抗議を受けていたが、何よりも中国国内の、中国人Bloggerたちが、「ネット言論の自由」に対する統制であるとして、ネット上での活発な反対運動を繰り広げたことも大いに、この「延期措置」に貢献した。

中国政府のこの「延期措置」(the deadline is delayed)について、Financial Timesは、実質的には、「撤回」(a quiet death)と解釈してよいだろうとしている。(‘Delay’ is code for total re-evaluation and potential scrapping.)

今回のケースのように、中国政府が唐突にIT産業に対して、その及ぼす影響が計り知れない規格や技術基準を強制するということが、2000年と2004年にも起こっていて、そのつど業界や世論の反対で、政府は面子を保つ形で、引っ込めた例があるからだ。

人民日報は、昨日、「中国政府はインターネットの普及で情報の管制能力を失った。人民の口に、マイクロフォンを取り付けたようなものだと」と論説で状況を認めた。イランの選挙後の騒乱状態では、blogやYouTubeの画像が引き金となり、増幅器の役割を果たしていることも見ながら、中国共産党幹部は、この時代の変化にどう取り組むべきなのか、深く考えをめぐらしているのであろう。



オバマ、‘global war on terror’という言葉を使用禁止に

2009-07-01 | 米国・EU動向
2009年7月1日(水)

言葉は大切である。言葉は思想を体現する。思想は行動を規定する。不注意に使った言葉が、民族の破滅と、人民を不幸に陥れた例は、枚挙に暇がない。わが国でも「大東亜共栄圏」、「八紘一宇」などがそれにあたる。

ところで “global war on terror”(「テロとのグローバル戦争」)というブッシュ政権が、2001年の9/11事件以来使用してきた言葉を、オバマ政権においては、極力使わないようにとの指示が出ていたが、今回訪欧したJanet Napolitano国家安全保障省長官(secretary for homeland security)が、「今後一切使用を禁止する」と決めたことを明らかにした。

イラク侵攻そのものや、テロ容疑者を一方的に逮捕して、理由を開示しないで無期限に拘留しながら、水攻め(waterboarding)などの拷問による自白の強要を正当化してきたのが、この“global war on terror”という言葉である。そして使用禁止理由のひとつとして、「warという言葉は、国民国家間の争いを想起させるが、テロ行為の原因は必ずしも国家間の関係に起因するとは限らないからだ」と説明した。

そして、「テロの根絶のために必要なのは、「社会の柔軟性」( public “resiliency”)であり、この点で米国は欧州、とりわけ英国から学ぶべきことは多い。今回それを学びに来た」のだと言明した。英国は長年のアイルランドのIRAによるテロ対策を行い、それを沈静化させた実績があることを指しているものと思われる。

そして、同長官は、イラク戦争からの帰還兵が、一匹狼(lone wolf)となる可能性を否定できないとし、米国内における反オバマ極右勢力が、テロ行為に走る(大統領暗殺を暗に指している)危険性があることを認め、その対策をとっていることも明らかにした。この意味で、「グローバル」という言葉が、当てはまらないことは明らかである。