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オバマ発言、人種偏見に基づく捜査問題を再燃 Racial Profiling

2009-07-25 | 米国・EU動向
2009年7月25日(土)

昨日取り上げた、黒人ハーバード大学教授逮捕事件に関するオバマ大統領のコメントが、米国内で大きな波紋を起こしつつある。金曜日の日刊紙には、この16日に起こった誤認逮捕事件の詳報を、教授が手錠をかけられて家から連行される場面の写真を掲載しながら伝えた。

一方、逮捕したほうの警官は、「一切謝罪しない」と強硬に反発しており、地区の警官の労組も、正当な捜査であったとして抗議行動に出ている。オバマ大統領は、こうした事態の思わぬ方向への展開と拡大に、「自分は、逮捕した警官を、『馬鹿だ』(stupid)と呼んだつもりはない」と、発言内容を後退させた。(オバマ大統領は、馬鹿な行為(stupid conduct)とは言ってはいる。)一方渦中の教授は、容疑を解かれて解放されているが、沈黙を守っている。

この騒ぎ自体は、いつか収束するのであろうが、この騒ぎの焦点にあるのが、Racial Profilingというキーワードである。まだ、日本語には定訳が定まってはいないので、『人種偏見に影響された犯人像の予見』、またはそれに基づく捜査とでも訳すよりほかない。ある種の犯罪や、不法行為を犯しやすい人種の存在をあらかじめ想定して捜査を進めることである。

米国では、多くの黒人が、「白人に比べて、車を運転しているときに、はるかに多くの頻度で、停車を命じられたり、車内の捜索を受けている」と感じているとの統計が存在する。黒人は麻薬密売にかかわる率が高い、などの先入感が支配的なため、誤った捜査が行われたり、誤認逮捕につながったりするのであると、黒人人権団体は、"racial profiling"にこれまでも強く反対してきた。

今度のケースでも、「白人が容疑者が、その場でハーバード大学教授とわかれば、手錠まで掛けて、「錯乱行動」で連行されることは、なかったであろう。教授が黒人がゆえに、「押し入り強盗が鍵を壊している」と即断され、説明も受け入れなかったという差別を受けた、これこそRacial Profilingそのものである」ということになりつつある。

しかし、オバマ大統領は、この問題が拡大して、健保改革法案の審議の遅延することをより心配しているのである。