ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ニューヨーク・ストーリー

2007年12月11日 | 映画レビュー
 マーティン・スコセッシ、フランシス・コッポラ、ウディ・アレンのNY派三人の監督が作ったニューヨークの物語三つのオムニバス。それぞれが完全に独立した作品で、面持ちもまったく異なる。

 第1話。中年の画家と若い助手との恋愛をクールなタッチで描く。画家の創作場面にはなかなかの迫力があった。 

 一緒に暮らしている恋人であり助手である画家の卵に愛想をつかされた男は、それでもなお女の若い肢体に情欲を募らせる。彼は本気で彼女を愛しているのだ。だから彼女の自由は束縛しないし、他の男と寝てもいい、それでも自分の側を離れないでほしいと懇願する。だが実際には男の嫉妬は煮えたぎり、その思いをぶつけるように彼は巨大なカンバスに向かって絵の具を叩きつけながら抽象画を描いていく。腹の出た中年体形のむさくるしい男だが、画家としては成功している彼は、次の個展に向けて創作に余念がない。NYの広い倉庫跡のようなアトリエに大音響で響くのはロックのナツメロばかり。

 中年男の純情に思わず切なさを感じたりホロリとしたり。その挙句にラストシーンではあっけにとられる。なるほどねぇ、これが中年男の純情かぁ。スコセッシの中年恋愛観はかなりシニカルです。


 第2話。NYの高級ホテル暮らしをするセレブ一家の物語。

 主人公は12歳の少女。両親は多忙で世界中を飛び回っているため、彼女はいつもホテルで一人暮らし。専属の執事役のホテルスタッフがついている、超リッチなお嬢様。ある日、アラブの王族の少年が転校してきて同級生に。彼もまた桁違いの大金持ち。はぁ~。目が丸くなるよな生活ぶりにもう口あんぐり。しかしいくらお金があったって、両親が不仲でいつも孤独な子どもって不幸せです。でもこれ、意外と楽しそうでもあり。庶民から見ればおとぎ話のような物語。ちょっとコッポラも遊んでみました、というような作品です。

 第3話。中年男のマザコンぶりは精神分析的には面白そうな話だけど、コメディとしてそれほど爆笑の出来ではない。

 マザコン男はもちろんウディ・アレンが演じています。ところどころでくすっと笑える小ネタあり。母親に結婚を反対された中年男は、鬱陶しい母が消えてなくなればいいと思っていたところ、なんとほんとに母はマジックの脱出ショーの途中で忽然と消えてしまう。このマジック、アレンはお気に入りと見えて、最新作「タロットカード殺人事件」でも同じマジックの場面があった。

 で、この消えた母はどこへ行ったのかと思いきや、なんとある日突然NYの空に現れる。空を見上げれば母親の巨大な顔が! そして息子に向かって大声でべらべらと身内の恥をしゃべるではないか。NYじゅうの道行く人々がそれを聞いて驚くやら笑うやら。

 SFっぽいお話で、奇想天外、なかなか面白かったけど、可もなく不可もなく、といったところか。


 3話それぞれがハッピーエンドと言えるような結末で、まあ、とにかくちょっと変わったニューヨークのお話を三つ見て少し幸せな気分や俗世離れした気分を味わいましょう。わたしは第1話が一番お気に入りです。(DVD)

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NEW YORK STORIES
アメリカ、1989年、上映時間 124分
監督: マーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、ウディ・アレン、脚本: リチャード・プライス、フランシス・フォード・コッポラ、ソフィア・コッポラ、ウディ・アレン
音楽: カーマイン・コッポラ
出演: ニック・ノルティ、ロザンナ・アークエット、ヘザー・マコーム、ウディ・アレン、キャロル・ブーケ、デボラ・ハリー、タリア・シャイア、キルステン・ダンスト、スティーヴ・ブシェミ、エイドリアン・ブロディ