ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ラン・ローラ・ラン

2007年12月10日 | 映画レビュー
 MTVのようなカット割、ハイスピード・ノンストップ映画でございます。せわしないことこの上なし。しかし、この構成、実に面白い。バタフライ・エフェクト(風が吹けば桶屋が儲かる)と過去の生き直しという着想はよかったと思う。

 ローラという娘が恋人のためにひたすら走る。あまりにも猛スピードで走り続けるので、観ているほうの息が切れてくるというすぐれもの。「お前が遅れたせいで、オレは殺される! あと20分で10万マルク用意しないと殺されてしまうよ!」と恋人が公衆電話から半泣きになって電話してきたのが11時40分。ローラは「わかった! 任せて!」と言ったが早いか、走り始める。目的地はパパが頭取(?、たぶん)を務める銀行。パパに無心したけれど断られ、哀れ恋人は殺されてしまうのか? 彼は12時になったらスーパーに強盗に入ると宣言している。さあ、どうする? ローラ!

 という物語のパターンをなんと3回繰り返す。そのたびに途中経過が微妙に変化し、その結果、結論は違うものになる。アニメを挿入するハイブリッドな演出は斬新で楽しい。「あの時ああしていれば」という願いは誰もがもつ。その願いをこんなに簡単にかなえてしまう映画というのは観客の心をくすぐる。しかも、3回繰り返す物語の途中経過の変化が面白いのだ。すれ違う人々の反応が違えば彼らの未来も変わる。繰り返しと言いながら、まったくのゼロから出発するわけではなく、2回目は1回目の経験を無意識にを踏まえているし、3回目もまた1、2回目を踏まえてその「反省」の上に成り立つ。

 しかしまあ、所詮はバカップルの話なので、後味はそれほどよくない。「ヘヴン」が気に入ったのでトム・ティクヴァ監督の作品を見てみようと思ったまで。なるほど、この人は逃走劇ならお手の物なんだ、と納得。それにしてもキエシロフスキーの脚本を「ラン・ローラ・ラン」の監督に演出させようと発想したプロデューサーは偉いね、意外な組み合わせが成功してます。(レンタルDVD)

--------------------------

LOLA RENNT
ドイツ、1998年、上映時間 81分
監督・脚本・音楽: トム・ティクヴァ、
出演: フランカ・ポテンテ、モーリッツ・ブライブトロイ、ハイノ・フェルヒ、ヨアヒム・クロール