サントラほしい。買おうかなぁ。やはり圧巻はラストの演奏シーンです。見事! この演奏シーンをもっと見たいのに、ほんとにあのシーンは4分もあったのかしら?
物語の舞台は女子刑務所。殺人を犯した歳若い囚人ジェニーが収容されているところだ。ここはかつてナチスの収容所があったところで、この刑務所にはピアノを教える年老いた女教師トラウデがいた。トラウデはジェニーの才能をひと目で見抜き、彼女に本格的にピアノを教えることを決意する。刑務所長には、「ジェニーの才能はスバ抜けている。コンクールに出せば必ず優勝する。そうすればあなたの名誉にもなる」と言いくるめて。
ジェニーは暴力的で破壊的な性格をしていて、大柄な男の看守にまで暴行を加えて重傷を負わせるような人間だ。荒れすさんだ表情でいつも人を睨みつけている。ハンナー・ヘルツシュプルングは無名の新人だが、このジェニーをよくぞここまで、というぐらい存在感たっぷりに演じている。ジェニーを演じたのが美人女優ならここまで迫力あるピアニストに見えなかったと思う。ぼさぼさ頭のボーイッシュなジェニーの雰囲気がよく出ている。ところが、後でパンフレットに載っているハンナー・ヘルツシュプルングの写真を見て驚いた。素の彼女はもっと愛らしく清楚な雰囲気の女性なのだ。女優ってやっぱりすごい。
すさんだ女囚と頑固な老教師は、実はともに悲しい過去を秘めていた。エゴのぶつかりあいのような二人のレッスンだったが、諍いながらも音楽を通して二人はやがて心を寄せ合うようになる。いつしかジェニーは自らの傷をトラウデに語るようにまでなる。一方、トラウデの過去はフラッシュバックで観客に知らされる。ナチス崩壊の直前、彼女は愛する人を処刑された。その悲しみが塗り込められたこの刑務所を戦後も離れることができなかったのだ。
愛を失い愛に飢えた悲しい女たちの物語はどこへ向かうのだろう。ジェニーはコンテストの決勝の日、罠に嵌められ外出を禁じられてしまった。一計を案じたトラウデはジェニーをなんとかコンテストに出場させようと…
クラシック音楽しか認めないトラウデと新しい自分の音楽を求めるジェニーとのぶつかりあいはいつも強引なトラウデの勝ちだった。しかし、最後にジェニーが自らを解放するその瞬間こそが素晴らしい。この映画はかなり強引な設定で進むし、説得力のない部分や説明不足も目立ち、そのうえ主役二人の個性が立ちすぎてなかなか素直に入り込めない部分もある。しかし、もろもろの欠点のすべてがラストシーンで一掃されてしまう。圧巻の演奏シーンが終わった後のジェニーの不敵な笑いがカタルシスを呼ぶのだ。
映画だけでは満足しきれなかった部分はサントラを聞いて補うことにしよう。ちなみに、ピアノを弾いているのはドイツ在住の日本人ピアニストだ。
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VIER MINUTEN
ドイツ、2006年、上映時間 115分
監督・脚本: クリス・クラウス、製作: アレクサンドラ・コルデス、マイク・コルデス、音楽: アネッテ・フォックス
出演: モニカ・ブライブトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング、スヴェン・ピッピッヒ、リッキー・ミューラー、ヤスミン・タバタバイ
物語の舞台は女子刑務所。殺人を犯した歳若い囚人ジェニーが収容されているところだ。ここはかつてナチスの収容所があったところで、この刑務所にはピアノを教える年老いた女教師トラウデがいた。トラウデはジェニーの才能をひと目で見抜き、彼女に本格的にピアノを教えることを決意する。刑務所長には、「ジェニーの才能はスバ抜けている。コンクールに出せば必ず優勝する。そうすればあなたの名誉にもなる」と言いくるめて。
ジェニーは暴力的で破壊的な性格をしていて、大柄な男の看守にまで暴行を加えて重傷を負わせるような人間だ。荒れすさんだ表情でいつも人を睨みつけている。ハンナー・ヘルツシュプルングは無名の新人だが、このジェニーをよくぞここまで、というぐらい存在感たっぷりに演じている。ジェニーを演じたのが美人女優ならここまで迫力あるピアニストに見えなかったと思う。ぼさぼさ頭のボーイッシュなジェニーの雰囲気がよく出ている。ところが、後でパンフレットに載っているハンナー・ヘルツシュプルングの写真を見て驚いた。素の彼女はもっと愛らしく清楚な雰囲気の女性なのだ。女優ってやっぱりすごい。
すさんだ女囚と頑固な老教師は、実はともに悲しい過去を秘めていた。エゴのぶつかりあいのような二人のレッスンだったが、諍いながらも音楽を通して二人はやがて心を寄せ合うようになる。いつしかジェニーは自らの傷をトラウデに語るようにまでなる。一方、トラウデの過去はフラッシュバックで観客に知らされる。ナチス崩壊の直前、彼女は愛する人を処刑された。その悲しみが塗り込められたこの刑務所を戦後も離れることができなかったのだ。
愛を失い愛に飢えた悲しい女たちの物語はどこへ向かうのだろう。ジェニーはコンテストの決勝の日、罠に嵌められ外出を禁じられてしまった。一計を案じたトラウデはジェニーをなんとかコンテストに出場させようと…
クラシック音楽しか認めないトラウデと新しい自分の音楽を求めるジェニーとのぶつかりあいはいつも強引なトラウデの勝ちだった。しかし、最後にジェニーが自らを解放するその瞬間こそが素晴らしい。この映画はかなり強引な設定で進むし、説得力のない部分や説明不足も目立ち、そのうえ主役二人の個性が立ちすぎてなかなか素直に入り込めない部分もある。しかし、もろもろの欠点のすべてがラストシーンで一掃されてしまう。圧巻の演奏シーンが終わった後のジェニーの不敵な笑いがカタルシスを呼ぶのだ。
映画だけでは満足しきれなかった部分はサントラを聞いて補うことにしよう。ちなみに、ピアノを弾いているのはドイツ在住の日本人ピアニストだ。
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VIER MINUTEN
ドイツ、2006年、上映時間 115分
監督・脚本: クリス・クラウス、製作: アレクサンドラ・コルデス、マイク・コルデス、音楽: アネッテ・フォックス
出演: モニカ・ブライブトロイ、ハンナー・ヘルツシュプルング、スヴェン・ピッピッヒ、リッキー・ミューラー、ヤスミン・タバタバイ