原作も大して面白いと思わなかったが、映画になるといっそう退屈。「キッチン・ストーリー」のベント・ハーメル監督の手にかかると、原作にあったきっぱりとしたスピード感がのっぺりと間延びさせられてしまう。
チャールズ・ブコウスキーの自伝的原作は、作家を目指す若者がひたすらぐうたらに暮らす毎日が描かれている。仕事はすぐにクビになり、女を次々ひっかけてはセックス三昧、朝から酒びたりで小銭をためてもすぐに使い果たしてしばしばホームレスにもなる。そんな生活の繰り返し。それはもう驚くべき単調さで同じことを繰り返すのだ。ブコウスキーの若いころを反映した主人公ヘンリー・チナスキーは反省も前進もしない人物だ。しかし、これは若者だから許されるのであって、映画では原作よりずっと歳を食ってしまっているから、チナスキーのぐうたらで惨めったらしい中年男の汚らしさばかりが強調される。せっかくの男前マット・ディロンが汚れ役をやっているというのに、ほんとに汚れているだけなんだな、これが。
恐るべき自堕落の循環世界を生きているチナスキーの終わりなき日常に驚嘆しつつも呆れつつも軽蔑しつつもなぜかその出口のない世界にどこか明るさや希望があるのは、チナスキーが将来は立派に作家として大成するからなのだ。原作でも映画でももちろんそんなことは描かれない。だが観客は知っている、このぐうたら男が50歳を過ぎて作家になるということを。ポイントはここです、つまり、たんなるぐうたら男には未来がないが、「書くこと」にだけは執念を燃やし続けたある意味「努力の人」にはちゃんと未来がやってくる、ってこと。
原作のたくさんのエピソードを映画はそぎ取ってしまったために、<何の反省も前進もない繰り返し>が生む面白さがなくなってしまった。この物語はこの「繰り返し」がミソなのだが、その面白さ、独特さがなくなったのは減点。
----------------
FACTOTUM
アメリカ/ノルウェー、2005年、上映時間 94分
製作・監督: ベント・ハーメル、製作総指揮: クリスティン・クネワ・ウォーカー、原作: チャールズ・ブコウスキー 『勝手に生きろ!』、脚本: ベント・ハーメル、ジム・スターク、音楽: クリスティン・アスビョルンセン、トルド・グスタフセン
出演: マット・ディロン、リリ・テイラー、マリサ・トメイ、フィッシャー・スティーヴンス
チャールズ・ブコウスキーの自伝的原作は、作家を目指す若者がひたすらぐうたらに暮らす毎日が描かれている。仕事はすぐにクビになり、女を次々ひっかけてはセックス三昧、朝から酒びたりで小銭をためてもすぐに使い果たしてしばしばホームレスにもなる。そんな生活の繰り返し。それはもう驚くべき単調さで同じことを繰り返すのだ。ブコウスキーの若いころを反映した主人公ヘンリー・チナスキーは反省も前進もしない人物だ。しかし、これは若者だから許されるのであって、映画では原作よりずっと歳を食ってしまっているから、チナスキーのぐうたらで惨めったらしい中年男の汚らしさばかりが強調される。せっかくの男前マット・ディロンが汚れ役をやっているというのに、ほんとに汚れているだけなんだな、これが。
恐るべき自堕落の循環世界を生きているチナスキーの終わりなき日常に驚嘆しつつも呆れつつも軽蔑しつつもなぜかその出口のない世界にどこか明るさや希望があるのは、チナスキーが将来は立派に作家として大成するからなのだ。原作でも映画でももちろんそんなことは描かれない。だが観客は知っている、このぐうたら男が50歳を過ぎて作家になるということを。ポイントはここです、つまり、たんなるぐうたら男には未来がないが、「書くこと」にだけは執念を燃やし続けたある意味「努力の人」にはちゃんと未来がやってくる、ってこと。
原作のたくさんのエピソードを映画はそぎ取ってしまったために、<何の反省も前進もない繰り返し>が生む面白さがなくなってしまった。この物語はこの「繰り返し」がミソなのだが、その面白さ、独特さがなくなったのは減点。
----------------
FACTOTUM
アメリカ/ノルウェー、2005年、上映時間 94分
製作・監督: ベント・ハーメル、製作総指揮: クリスティン・クネワ・ウォーカー、原作: チャールズ・ブコウスキー 『勝手に生きろ!』、脚本: ベント・ハーメル、ジム・スターク、音楽: クリスティン・アスビョルンセン、トルド・グスタフセン
出演: マット・ディロン、リリ・テイラー、マリサ・トメイ、フィッシャー・スティーヴンス