ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

スパニッシュ・アパートメント

2007年11月24日 | 映画レビュー
 これは楽しい!

 ハイテンション・コメディを堪能しました。画面分割や早送りにかぶせる独白もまた粋で、若者の持つ可能性やパワーを表現するにはぴったりの作風だ。舞台をスペインのカタロニア地方にしたことも大正解。ここはスペインの中でも異邦人の町であり、そこに文字通りの異邦人7カ国の留学生達がハウス・シェアする。お国柄・人柄の違いがぶつかり合いいがみ合い喧嘩もするけれど、いざ鎌倉となれば一致団結する微笑ましさ。

 今、ヨーロッパはこの映画のように坩堝状態になっているし、日本も以前に比べればずいぶん坩堝に近づきつつある。グローバリゼーションの深化がハイブリッドな社会を創るのはもう時代の流れなのだ。と同時に、グローバリゼーションが地域ナショナリズムを強化するという二面性をも持つことが面白い(鈴木謙介『<反転>するグローバリゼーション』参照)。

 主人公はフランスからの留学生、グザヴィエ。空港で恋人と涙の別れを経験したけれど、スペインで同じクラスにちょっと美人の学生がいるとちょっかいを出したくなる、という浮気者。それだけではなく、空港で知り合ったフランス人医師の新婚の妻にも惹かれてみたり。勉強も大事だけどアヴァンチュールもやってみたいという、いかにもありそな若者だ。

 バルセロナに留学してきた6人の仲間と一緒に大きなアパートメントの一角に住む。せっかくの大きな住居なのに、学生たちがてんでに汚すからいつも散らかっている。7人のハウスメイトはイギリス、ドイツ、イタリア、スペイン、フランス、デンマーク、ベルギー出身。いかにも学生、いかにも青春。昔の学生寮を思い出してとっても懐かしかった。もちろん住居の雰囲気はかなり違うのだけれど、あの怠惰な雰囲気、勉強に励みながら遊びも一生懸命という感じが学生時代を彷彿させる。

 バルセロナの青空と太陽が眩しい。建物の鮮烈な色彩が魅力的だ(アントニ・ガウディばかりなのだろうか?)。ヨーロッパの行く末を占うかのような本作はとても興味深い。こんな混沌状態の若者達が20年後、どんなヨーロッパを作ってくれるのだろう?

 グザヴィエは留学の最後に近づいて、突然神経の失調状態に陥り、「フランス語がわからない」と言い出す。母国語が理解できないという記憶障害は何を意味するのだろう? 彼にとってはもはや祖国で待っている安定した公務員の道は考えられないという前兆ではなかろうか。最後にグザヴィエは「離陸」する。その疾走に快哉。青春はこうでなくちゃ。(レンタルDVD)

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L' AUBERGE ESPAGNOLE
フランス/スペイン 、2002年、上映時間 122分
監督・脚本: セドリック・クラピッシュ、音楽: ロイク・デュリー
出演: ロマン・デュリス、ジュディット・ゴドレーシュ、オドレイ・トトゥ、セシル・ドゥ・フランス、ケリー・ライリー、クリスティーナ・ブロンド、ケヴィン・ビショップ、クリスチャン・パグ

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