大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

日々の恐怖 6月7日 大将軍

2014-06-07 19:09:05 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 6月7日 大将軍



 俺が住んでいる県の内陸部には、大将軍という土着の信仰がある。
陰陽道の神様で、東西南北を3年ごとに移動し、この大将軍が宿る方角の土を動かしてはいけないといわれる。
 具体的には、家の中心から見て大将軍のいる方角は、その年はリフォーム、増築などをしないということだ。
そんな大将軍が発端となった出来事です。

 ずいぶん前の話になるが、小学生の頃、T君という同級生がいた。
彼の家は古くからの庄屋の家系で、でっかい敷地のでっかい家に住んでいた。
庭には池もあって錦鯉なんかもいた。
 そんなT君のお爺さんはY太郎さんといい、地域の顔役として地元では有名人だったが、このY太郎さん、迷信やらそういったことは一切信じない人で、ある年、敷地内の蔵を解体することになったが、その蔵が件の大将軍の方向だった。
 家族や工事業者は時期をずらすようにY太郎さんを説得したが、Y太郎さんは大将軍なにするものぞと工事の強行を指示し、業者も地元の有力者故に逆らえず蔵は解体された。
 それで、その蔵の土台までバラしたところ、石が出た。
実物を見たT君によると、田舎の道端に地蔵と一緒に並んでいるような、石碑状の石が3つほど出てきたそうだ。
 表面は磨耗していて、なにか彫ってあった跡はあるものの、なんと彫ってあるかは誰もわからなかったらしい。
家族および工事関係者は、それみたことかと不気味がり、供養とかお祓いをしたほうが良いのではないか、という話になったそうだが、やはりY太郎さん、そんなものは必要ないと、出土した石を敷地の端にただ転がしておいた。
 そこから一連の怪異がはじまった。
まず、池で飼っていた錦鯉が十数匹、原因不明の突然死をした。
さらに、T君の家の前の国道で、やたらと動物が死ぬようになった。
 この道路は当時オレも通学路にしていたので実際目にしたが、彼の家の敷地が面している数十メートルの範囲内でだけ、10日と待たずに犬、猫、時には野兎や狸までが、車に轢かれ死んでいた。
通学路は1キロ程の道のりだったが、それまでは動物の礫死体など見かけた事もなかったのにである。
 このころから、近所ではこの異変が、Y太郎さんが大将軍に触ったからだとの噂が立ち始めたが、Y太郎さんは気にするでもなく、件の石もそのまま放置され続けた。
 そんなある日、部活で遅くなったオレの姉が、真っ青な顔をして帰宅した。
自転車通学だった姉は、交通量の多い国道を避け、T君の家の裏手を通る農道を利用していた。
 姉がT君の家の裏手を通ったところ、突然低いうめき声のようなものが聞こえたらしい。
誰か倒れているのかと思い、自転車を止めてあたりを見回したが誰も見かけず、聞き間違いかと自転車を漕ぎ出そうとした時に、今度ははっきりと聞こえたらしい。

「 ・・・・Y太郎・・・・。」

もごもごとした声でなにか言っていたそうだが、Y太郎さんの名前ははっきりと聞いたそうだ。
 恐ろしくなった姉はあわてて帰って来たらしい。
他にもその声を聞いた人がいるらしく、さらに姉が声を聞いたのは例の石が放置された場所のすぐ近くだったため、

「 例の石がY太郎さんを呪っている。」

と言う噂が瞬く間に広がった。
が、当のY太郎さん本人はそんな噂さえどこ吹く風だった。
 ところが、そのY太郎さん、石が出てから半年ほどたったある日、突然亡くなった。
動物が変死し、Y太郎さんが無くなるに至って、近所では、

「 ほれ見たことか、大将軍をいじるからだ。」

と年寄りたちが口々に言っていた。
 Y太郎さんは、病気も何もしていなかったし、前日まで全く普通にすごしていたらしく、死因は心不全だか心筋梗塞だかで片付けられたように覚えている。
もちろん近所はおろか学校でさえ「祟りだ!」と大騒ぎになった。
 とうとう人死にがでてしまったため、T君の一族ではそれはもう大騒ぎになったそうで、川向こうの“オナガマ”(おそらく、お仲間。イタコのようなものらしい。神様を降ろしてお告げをしてくれるらしい。)にお伺いをたてた。
 以下、当時小学生だったT君からの又聞きのため詳細不鮮明だが、おおよそこんな感じだったらしい。

「 この石碑は○○○を供養していたが、T家の先祖がそれを○○○してしまい、忘れられ上に蔵を建ててしまった。
石碑の○○○はそれを恨んで祟りをおこしている。
社を建ておまつりしろ。」

 それで、T家の敷地のはずれに社が建ち、3つの石碑はそこに収められた。
さらにお祓いだか供養だかが行われ、以来T家の周囲での不審な動物の死は見られなくなった。
 俺は怖かったので,高校を出て家を離れるまで、日が暮れてからT家の裏の道は通らないようにしていた。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« しづめばこ 6月7日 P308 | トップ | 日々の恐怖 6月8日 櫛 »
最新の画像もっと見る

B,日々の恐怖」カテゴリの最新記事