日々の恐怖 10月14日 IPad(2)
姉は赤ちゃんを膝に乗せなおし、
「 はい、おじいちゃんって言ってごらんー!」
と赤ちゃんにIPadを向ける。
赤ちゃんはその日一番長々と、
「 うあうあー!きゃきゃー!!あーい~、きゃきゃ~!」
とIPadの画面を叩きながらはしゃいだ声を上げた。
すると画面に、
”大宮さんがきよる”
と表示された。
姉が、
「 えー、なんか文章になった!
すごい~!
大宮さんて誰かな~??」
と笑う。
すると祖父母が、
「 えっ!?」
と画面に顔を近づける。
「 大宮さんて、この機械に入れよるんかね?
名前を入れよるんかね?」
祖父が不思議そうに画面を眺める。
姉は、
「 えっ??」
と祖父を見る。
祖母が、
「 大宮さんて網元の、おじいちゃんのお友達じゃった人じゃが。
大宮さんが来よる、いいよるね・・・・。」
と、同じく不思議そうに画面を見る。
すると母親が、、
「 あの・・・・・。」
と窓を指差す。
「 離れの方に・・・・。」
全員が窓の外を見ると、庭の向こうの離れの前に、日よけの帽子を被ったような人影が
俯きがちに立っているように見えた。
祖父はすぐに、
「 大宮さんじゃね・・・。」
と呟く。
祖母も、
「 大宮さんじゃあ。
2月に亡くなりはったんじゃけどね、なしてじゃろうね・・・。」
と窓の外を見つめる。
俺たちは、
「 え?え・・・・?」
と、よく分からずに、窓の向こうを覗き込むように首を伸ばしていると、祖母が、
「 いけんいけん、いけんよ。」
と立ち上がり、カーテンをスッと閉めた。
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