日々の恐怖 12月12日 跳ね返り(3)
Bさんは仕事は量も質も激しく落ち、煙草の量が増えたのか血色も悪く、痩せて来た。
今までBさんは誰のことも見下していたが、仕事だけはきちんとこなしていたし、こんなに疲弊しきったこともなかったので不思議だった。
そんな折り、A君と飲みに行くことになった。
仕事後に付き合ってくれないかと、A君に誘われたのだ。
A君と2人で飲むのは初めてではなかったが、あまり明るい雰囲気ではなかったので、愚痴や相談があるのだろうと思った俺は、いつもよりちょっと良い飲み屋に連れて行った。
個室の座敷でぼちぼち食べて飲んでいると、A君が言いにくそうに切り出した。
思った通り、Bさんのことだった。
でも、A君が語り始めたものは、俺が思ていた内容とは少し違っていた。
A君は、
「 俺、ちょっと特異体質というか、俺を嫌った人とか嫌がらせをしてくる人を不幸にしてしまうんです。」
と言った。
一瞬で、
“ 嘘だろ、まさかの電波・・・?”
と思った俺だが、そうではないらしく、A君は自身のことを話してくれた。
彼が言うには、これまでにA君を苛めたり、A君に害を与えた人は軒並み不幸になっているらしい。
例えば、A君を仲間外れにしようとして自分が孤立したり、A君の足を引っ掛けて転ばせようとした子が骨折したりとかだった。
俺が、
「 その程度なら偶然の一致だよ、気にすんな。」
と慰めると、A君は、
「 自分も最初はそう思っていたが、それで片付くレベルじゃない。」
と言った。
なんでも、その人がA君に、
“ した、言った、しようと思った。”
ことが、そのまま本人に返るのだそうだ。
いくつか例を聞いたが、一番酷いのが、中学時代の話だった。
中学生の時、A君にはとても頭の良い同級生がいたが、その子は数学の成績でA君を抜けないことをずっと悩んでいた。
そしてある日、A君の数学のノートと教科書を机から盗み、それを燃やしてしまった。
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