日々の恐怖 6月20日 彼の妹(1)
彼には八歳離れた妹がいるのだが、その妹について、彼は子供の頃から不思議な感覚を持っているという。
彼に言わせると、
“ 時折、妹が妹でない時がある。”
というものだ。
どこがどう違うのか、それを説明することはできない。
ただ、朝起きておはようと言った時、食事中、歩いている後ろ姿、何気なくこちらを向く仕草、あくびの後、眠っている最中でさえ、
“ 今は、違う。”
という違和感を感じるのだという。
両親にそれを告げても、意味がわからないと相手にされなかった。
彼自身、意味がわからなかったのだから、仕方のないことだった。
妹が妹でないと感じる時間は、一瞬の時もあれば、長くても三十分程度だった。
なので、そのうち彼も気にしなくなった。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ