日々の恐怖 10月29日 人形(2)
そしたら親父が来て人形を抱き上げ、人形に向かって、
「 もう寝なさい。」
と言い、今度は木箱を持ってきて、中に入れ蓋を閉めた。
その後、親父に、
「 何をしてたんだ!」
と酷く怒られて、
「 箱の中から猫の鳴き声がした。」
と説明すると、溜め息をついて、
「 今度から何かあったら、まず自分に言いなさい。」
と言われた。
その人形は、その日の夕方に近所のおばさんが持ってきて、まだ親父も中の人形を見ていなかったそうだ。
そして次の日に、その人形は燃やす事になった。
寺に持ってきた人形でも、無害な物は人形部屋で供養しているのだけど、動いたり声を出したりするのは危険だから、燃やす事にしていたらしい。
木箱に入っている人形に、お経を唱えながら親父が火をつけた途端に、中から昨日のミャーミャー言う声が激しく聞こえてきた。
それに構わず親父お経を唱えた。
燃やした人形を出すと、原型を止めていない黒いプラスチックの塊になっていた。
その塊は箱に入れて、無縁仏の墓に埋葬した。
その後何も無く、今では都内で独り暮らしをしているが、夜中に猫の声が聞こえると、
“ ビクッ!”
としてしまう自分がいる。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ