大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 10月22日 古い電車

2019-10-22 09:35:16 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 10月22日 古い電車




 小学校低学年の頃だった。
家の近所に市電、つまりちんちん電車が一両捨てられていた。
原っぱの一角に、錆びだらけで放置された車両だ。
 今考えてみればちょっと薄気味悪いが、当時の子供たちにはかっこうの遊び場だった。
子供のよく作る秘密基地、この車両も当然ながら秘密基地化していた。
 その日、私はひとりで秘密基地で遊んでいた。
いつものメンバーがほかで遊んでいることは知っていたが、なぜか猛烈にここに来たくなった。
 ひとりということで妄想全開で遊んでいると、急にひとりの女の子がはいってきた。
同じくらいの歳の子だが、見たことのない子だった。
 そして入ってくるなり、こう言った。

「 あっ、ほんとにいた!」

 普通、この手の話だとこの女の子が実は・・、ってなことになるのだが、昨日引っ越してきたばかりの生身の女の子だった。
 彼女は続けてこんなことを言った。

「 昨日夢を見たの。
きれいな女のひとが、古い電車を見つけることができたら友達ができる、って言う夢。」

 夢を信じ、来たばかりで右も左もわからない街で、電車を探してまわったそうだ、そんなものがあるかどうかもわからないのに。
 でも、原っぱでほんとうに電車を見つけ、ほんとうに同い年の私を見つけたのだという。

「 友達になってくれるよね。」

不思議な出会いであるが、断る理由はなかった。
 彼女とは現在も付き合いがある。
と言うか、今、私の嫁になってます。









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