大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 12月9日 子供(1)

2018-12-09 19:39:50 | B,日々の恐怖






 日々の恐怖 12月9日 子供(1)






 前の会社に勤めていた時に出張で姫路に行ったんだけど、いつも泊まってるビジネスホテルが空いてなくて、仕方なく先輩からダメって言われてた○○○○○○○○○に泊まった。
 時間は22時くらい。
ホテルの自販機で売ってる、あの缶のウイスキー飲んで、いい気分になってたら廊下から、

「 おかーさん、あけてよ、おかーさん。」

って声が聞こえた。
 時間も時間だし、大方子供が勝手に部屋から出て、オートロックになっちゃったんだろうと思い、廊下へ出たんだが子供がいない。
 嫌な気分になって部屋に戻れば、また聞こえる子供の声。
もう一回、廊下に出るが、やっぱり子供はいない。

“ ヤベ~よ、ヤベ~よ。”

と思い、布団にくるまってたら子供の声が一部屋毎に移動してるのに気づいた。
だんだん俺の泊まってる部屋に近づいてくる。














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日々の出来事 12月9日 夏目漱石の脳

2018-12-09 10:22:02 | A,日々の出来事_





 日々の出来事 12月9日 夏目漱石の脳






 今日は、夏目漱石が亡くなった日です。(1916年12月9日)
夏目漱石は、“吾輩は猫である”、“坊っちゃん”、“三四郎”、“こゝろ”、“明暗”等で知られる明治・大正時代の大文豪です。
 夏目漱石は病気と縁が深く、疱瘡、肺結核、トラホーム、神経衰弱、痔、糖尿病、胃潰瘍等の数多くの病気を経験していました。
特に“修善寺の大患”で吐血した胃潰瘍は、“明暗”を執筆中に再度大出血、結局これが原因で夏目漱石は亡くなってしまいます。
この時の夏目漱石の最後の言葉は、“死ぬと困るから”であったと言われています。
 夏目漱石の遺体は、翌日、東京大学医学部解剖室において長與又郎によって解剖されました。
そして、摘出された脳と胃は東京大学に寄贈され、重さ1425gの脳はアルコールに漬けられ、現在も東京大学医学部に保存されています。







  夏目漱石

















☆今日の壺々話






       ゴーストライター





「 漱石先生、そろそろ原稿が欲しいのですが・・・。」

“ ブク、ブク、ブク、ブク・・・・。”

「 あの~、漱石先生!
 寝てないで、起きて下さいよォ~。」
「 ん・・・。
 あ、寝てたか・・・。
 あ、悪い、悪い。
 で、何だったかな?」
「 ほら、この前言っていた原稿ですよォ~。」
「 あ、そうだ、そうだ!
 まだ、出来てない、アハハハハハ!」
「 アハハハハハじゃないですよ。
 早く、お願いしますよ。」
「 ああ、分かった、分かった。
 じゃ、口述筆記で行くからな。」
「 ハイハイ、準備OK!」
「 そうだな、まず、作者の名前と作品名を決めなくちゃ・・。
 今度は、何にしようかなァ・・・。」
「 この前のはイマイチでしたよ、先生。」
「 そうか、イマイチだったか・・・。
 “綿谷リサの蹴りたいサカナ”は、ダメだったか・・。
 女性心理をくすぐって、いい線行ってると思ったけどなァ~。」
「 似たような作品に、賞を持って行かれましたよォ!」
「 そうだな、今度はちょっと慎重に考えよう!
 う~ん、う~ん、う~ん、思いつかないな・・・・・・。
 よし、そこの赤いチューブの栄養剤を入れてくれ。」
「 ハイ、入れましたよ。」
「 お、効いて来たかな。
 アハ、アハ、アハハハ!
 ウヒョ~、調子出て来たぞ~!
 ウヒョ~、ウヒョ~、ウヒョ~!」
「 あ、先生、どうしたんですか?」
「 あや、眠くなって来たぞ。
 じゃ、オヤスミ・・・・。
 グゥ~、グゥ~、グゥ~、ムニャ、ムニャ・・・。」
「 ありゃ、寝ちゃった・・・。
 変なもの入れちゃったかな?
 えっと、これは、ウオッカ。
 ヒョェ~、お酒だったんだ。
 先生、先生、起きてくださいよォ~。
 もう・・・・。」

“ ブク、ブク、ブク、ブク・・・・。”




  漱石先生のプロフィール

氏名、夏目漱石
現住所、東京大学医学部の水槽
職業、ゴーストライター
趣味、水泳
嗜好、ウオッカ
好きな言葉、死ぬと困る
脳の重さ、現在、2681g
















   月がきれいですね




 近所の夫婦のなれそめ話です。
奥さんは日本人、旦那さんはアメリカ人です。
 奥さんは夏目漱石の大ファンです。
アメリカに留学に行って旦那さんと出会ったそうな。
日本に何度か行ったことがある旦那さんと意気投合し、
奥さんはよく夏目漱石について熱く語ったらしい。

 ある日、なんかのパーティーの後、夜遅くなり旦那さんに
送ってもらっていると、旦那さんが急に立ち止まった。
どうしたの、と見ると旦那さんはじっと夜空を見上げている。
満月。
旦那さんは奥さんをじっと見つめ、カタコトの日本語で

「 月がキレイですね。」

と一言。
奥さんはすぐ意味を理解し、「私もそう思う」と泣きながら応えたそうな。



解説
 夏目漱石が生徒に英語を教えていました。
生徒が「I love you」という英語を「あなたを愛しています」と訳したところ、
漱石は、「日本人が“愛しています”だなんて言うものか。
『月が綺麗ですね』とでも訳しておけ。
それで日本人は分かるものだ。」 と言いました。

つまり、「月がきれいですね」=「I LOVE YOU」です。
















メリークリスマス




 「メリークリスマス!」と、その手紙には書かれていた。
例年より寒さの厳しい十二月二十四日のことだ。
 僕はその日、珍しく妻より早くに起きた。
枕元にある無骨な安物の目覚まし時計は六時少し前を指していた。
時計が甲高い下品な音をたてるには、まだ三十分あった。
 妻はまだ隣で静かに寝息を立てている。
髪先が顔にかかり、ときどきくすぐったそうに鼻をひくひくと動かす。
呼吸するたびに、肩は僅かに上下した。

 毛布に包まれた彼女の体は、袋に押し込まれた豚の肉塊を想像させた。
豚は死んでいて、それ自体はぴくりともしない。
ときどき豚の体内にいる悪魔が暴れるのだ。
ここから俺を出せ、と。

 僕は急に、横で眠りを貪る女の無神経さに腹が立った。
息苦しくなるほど強烈な憎しみが胸に広がった。
妻にそんな感情を抱いたのは初めてだった。
 友人の紹介でこの女と結婚してもう六年になるが、結婚生活はまず順調と言えた。
もちろんそこには、いくつかの問題と衝突があった。
僕たちは時に話し合いでそれらを解決し、時に我慢することで時間が解決してくれるのを待った。
 他の夫婦のことは分からないが、そう変わらないはずだ。
どの夫婦もそうやって距離を縮めていくはずだ。
僕は当然のように妻を愛していた。

 ただその瞬間だけは隣にある脂肪をどうしようもなく醜いと感じた。
外見的な醜さではない。
醜悪なのはその心だ。精神だ。魂だ。
酩酊してしまうような腐りきった臓腑の臭いが漂ってくる気がした。

 それから僕はふと、それが本当の豚の肉塊ならどんなに良いだろうと思った。
豚なら食ってしまえばいい。
焼いて、煮て、茹でて、蒸して、食ってしまえばいい。
後には何も残らない。
残らない。


 僕は彼女を起こさぬよう、ぬるりとベッドを出た。
冬の早朝のフローリングはひどく冷たかった。
 ハンガーに掛けてあったジャケットを羽織り、履き古したサンダルを履き庭に出た。
庭といっても猫の額ほどの土地に、車一台分の車庫とポストがあるだけの閑散としたものだ。
そこには鑑賞すべき築山も泉地もない。
ただ必要最低限の実用性と機能性を備えただけの庭だった。
それは僕と妻の結婚生活に似ているのかもしれない。

 低くたれ込めた暗い雲が空に覆い被さっている。
乾燥した空気にも確かに雨の匂いが混じっていた。
しばらくしたら雨になるということは、天気に対する知識のない僕にも容易に想像がついた。

 とにかく僕はポストを開けたのだ。
四つ折りにされた新聞を取った。
新聞の間から葉書サイズの紙が落ちた。
それを拾い上げ、表裏を確かめるように二度三度返した。

 それは葉書サイズではあったが葉書ではなかった。
画用紙のような手触りだったが画用紙ではなかった。
和紙のように薄かったが和紙ではなかった。
要するにどんな種類の紙であると同時に、僕の知るいかなる紙とも違っていた。
 紙の表面には(あるいはそれは裏面だったのかもしれない。どちらにしろ確固たる証拠はないし、ここでは些末な問題にすぎない)文字が書かれていた。
端正な字だ。
 僕はその場で流し読みしてみたが、上手く内容を把握することが出来なかった。
一文字一文字が別の言語であるかのような不思議な独立性を保っていた。
仕事柄、文章を速く読むのは慣れているはずなのに、その文字列はほとんど頭に入ってこなかった。
 まるで卵の殼のような文章だった。
ひどく無機質で、中身はどっか別のところに放られてしまっていた。
諦めて家に戻り、コーヒーを入れ、リビングのソファに座って今度はゆっくり手紙を読み返した。

 『メリークリスマス!今日はとても大切な日です。私にとっても、もちろんあなたにとっても。なにも宗教的見地から言っているわけではありません
とにかく大切な日なのです。お気をつけください。これを忘れないでいただきたい。今はこれしか言えませんし、これ以上言うことはありません』

 その他には住所も番地も差出人も何も書いてなかった。
僕はコーヒーを一口飲み、もう一度最初から読み直した。
大切な日?気をつけろ?いったい何のことを言っているのだ。

 三十分ほどして妻が起きてきた。
僕はとっさに手紙をズボンのポケットにしまった。
 なぜそんなことをしたのか自分でも分からなかった。
だってそんな必要はどこにもないのだ。
こんな手紙が来たと、苦笑しながら、あるいは訝りながら彼女に教えるだけでいい。
きっと彼女は「いたずらかしら」と言う。
それで終わりだ。
僕の中から手紙は消え去る。
 しかし僕はそれを隠した。
妻の足音が聞こえた瞬間、不可解な呪縛が僕の腕を縛り、意識を縛った。

「おはよう」と僕は伏せていた顔を上げた。
「おはよう、今朝は早いのね」と妻は言った。

 妻はそのままキッチンに行ってコーヒーを淹れている。
僕はその間、手紙のことをどう話そうか考える。
手紙を見せるタイミングからセリフ、口調、間、視線、表情。
 出来る限り自然に振る舞えるよう、まるで嘘をつく子供のように何度も何度も脳内でシミュレーションする。
そうだ、何も難しいことはない。

 結局妻がリビングに戻ってきた後も、手紙のことは言い出せなかった。
僕の手は錆び付いて完全に制止する直前のロボットのように、膝の上をぎこちなく這い回るだけだった。

 その夜、夢を見た。
暗く深い海の底のような重たい夢だった。
 僕は洗面所にいた。
目前では黒のミディアムドレス姿の妻が鏡を覗いて化粧をしている。
彼女は僕の存在に気付いていない。
 おそらくここには僕の実体はなく、意識だけが波間に漂うゴミのようにぽっかりと浮いている状態なのだ。
現に鏡に映るのは妻の姿だけだ。
「大丈夫よ、絶対に気付かれてないわ」と妻はファンデーションを塗りながら言った。
 僕に言っているわけではない。
鏡の中の自分、あるいはその先にいる何者かに語りかけている。
「彼は石ころのように愚鈍な男だもの、私のことなんか何にも知らないんだから。」
 妻は口紅を馴染ませる。
それから赤い小瓶に入ったオーデコロンを軽く振りかける。
見たことのない小瓶だった。
もっともドレスも口紅もオーデコロンの小瓶も僕は見たことはないし、彼女がそれを持っていることすら知らなかった。

 僕は本当に彼女のことを何も知らないのだ。
六年間で僕たちが積み上げたのは、いや積み上げたと思い込もうとしていたのはただ結婚していたという空虚な事実だった。

「大丈夫、絶対に気付かれていないわ。」
鏡の中の彼女は深く深く笑っていた。

 目を覚ましたとき、外は相変わらず灰色に光っていた。
銀色の矢のような細かい雨が静かに降っている。
今夜はホワイトクリスマスになる可能性が高いと、テレビの気象予報士がまるで自分の手柄のように言っていた。
 僕はなぜか夏目漱石の『夢十夜』を思い出していた。
確かあの作品の中に男が豚の大群に襲われる話があった。
男はステッキで豚の鼻面を叩いて谷底に落としていくが、最後には力尽きる。
僕はその男のことを思い、急に不気味な笑いが込み上げてくるのを感じた。
くつくつと笑っていると、隣の妻が目を覚ました。
 突然重力が増し這いつくばることしか出来なくなった人間のように、気だるげに体を起こしている。
もう憎しみは微塵もなかった。
そうだ、僕はこの女を愛しているのだ。
「メリークリスマス」と僕は喉の奥で小さく呟くように言った。
大丈夫、何も気付かれてはいない。
何も気付かれてはいない。
















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12月8日(土)のつぶやき

2018-12-09 10:21:38 | _HOMEページ_


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