日々の恐怖 3月25日 心霊現象(2)
そんな生活が続いて1年ちょっと経った頃だ。
新入社員も入ってきて先輩になっても、家計は火の車だった。
生活レベルは落としたくない、でも金はない。
今から考えればこの頃もまだ学生気分と言うか若いから何とかなるだろう、と言った気持ちがあったんだと思う。
最後に心霊現象を体験してからは2年以上経っていたと思うがそれは突然やってきた。
深夜、おそらく2~3時ぐらいだとは思うが、俺は急に目が覚めて自分が金縛りにあっていることに気づいた。
金縛り自体は正直嫌というほど経験してきたので、抜け出し方のコツも掴んでいた。
大体寝不足とかで金縛りにあうときはどこか一点(腕とか頭とかどこでもいい)に力を入れて思いっきり動かせば解放されることがほとんどだった。
しかし、金縛りの中でも所謂霊的な事象が絡んでいる場合は明確な解除方法なんてなかった。
死ぬほど怖い思いをして、ヤバイと思った瞬間に解けるとかそういうこともよくあった。
今回の金縛りは紛れもなく後者のものだった。
こういった場合にお約束で首さえも動かす事ができなかったので、目だけを動かして後は耳から聞こえる音を頼りに現状を把握しようと頑張っていたと思う。
そうすると、階段を上って誰かが廊下を歩いてきている音が聞こえた。
いや、正確には何かの気配が自分の部屋の扉の前までやってきている、ということを直感的に感じていたんだと思う。
ここまできて俺はこれが学生時代に散々嫌というほど経験してきた現象と同類のものである気づいた。
幽霊とかお化けとかそういう類はもう卒業したんだよ、マジで勘弁してくれ、とか考える暇もなく、唐突にその気配が乱暴に扉を開けようとしている音が聞こえてきた。
鍵のかかっているドアノブをやたらめったら回して、俺は解けない金縛りの中で心臓だけがばくばくと鼓動を早くするのを感じていた。
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