日々の恐怖 3月20日 仕出し(3)
俺は、
「 ええ覚えてますよ、よく俺もありがたくいただきましたから。」
って答えた。
そしたら、親父さんが言うんだ。
「 教えてあげるよ、ひとつ配達で多いのは、この店の常連さんが亡くなった時なんだ。」
そして、親父さんが言うには、あとはなぜか男の人だと言うこと。
女の人の時は、そういうことがないらしい。
それで、さらに親父さんが、
「 覚えてるかい?
一個多い時は、必ず戻ってきた時にAちゃんに塩かけてたろ?
きっと、この店の味が恋しくて付いてきちまってるから、やってたんだよ。
俺としちゃあ、死んでも食いたいと思ってくれるなんて、ありがたいけどね。」
そういえば、そうだった気がする程度で、俺は全然覚えていなかったけれど、
“ そうだったのか・・・・・。”
と、妙に納得した。
閉店少し過ぎまで飲んで帰ったけれど、帰り際に親父さんと友達に、
「 俺が死んだ時も、夜食の数は増えるかもね。」
って言ったら、
「 お前の通夜の時は、もったいないからひとつ減らして持ってくよ。
でも、それだとAは化けて出てきそうで嫌だね。」
なんて笑われた。
今でもうちの嫁さんには、
「 あんたが死んだら、きっと食べたがるだろうね。」
なんて笑われる。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ