最近、写真の「幸せな統一のはなし」という本を読みました。韓国の月刊誌「民族21」の編集主幹である安英民さんが書いた本です。「民族21」は、2000年6月の初めての南北首脳会談と6.15共同宣言を受けて、朝鮮の統一のために統一のパートナーである北(朝鮮民主主義人民共和国)のことを韓国社会に知らせるため創刊された雑誌です。本書は、筆者が創刊当時から「民族21」の一員として何度も北を訪問し取材を重ねてきたことがらをまとめたものです。
本書で筆者は、実際に何度も自分の目で見て感じた北について、いかに韓国で一般的に知られている「北」と違うのか、どのような視点で北を見なければいけないのかを率直に綴っています。そして、平和的な安定、経済的効果など複合的な要素、具体的な例を挙げながら、南北が統一すること(それ以前に南北が敵対せず仲良くすること)のメリットを、繰り返し語ります。本書はもともと朝鮮語(韓国語)で書かれ韓国で出版されたもので、韓国では少なくない反響があったようです。現在、筆者は様々なところから講演を依頼されているそうです。
私は最近、日本語に翻訳されたものを手にとって読みました。言葉のニュアンスが違うので、朝鮮語でも読んでみたいと思っています。
また、在日同胞が読んでもためになる本ですが、それより、多くの日本人に読んでもらいたいと思いました。
最近の在日朝鮮人に関係するニュースで気になったものを二つあげてみます。
一つ目は、自民党の河井克行衆院議員が9月27日の衆議院予算委員会で、平岡秀夫法務大臣が5年前の朝鮮大学校創立50周年記念祝賀宴に出席し祝辞をのべたことに対して、「公安調査庁の大きな役割は、言わずと知れた北朝鮮およびその関連団体の様々な動向を調査・監視することだと聞いております。その公安調査庁を所管する法務大臣が、わずか数年前に、監視調査対象の組織の宴会に出かけてお祝いの言葉を言った」と問題にし追及したというもの。
二つ目は、産経新聞が10月9日にネットで報じた「民主党内で朝鮮学校無償化反対署名開始へ」というニュース。「菅直人政権が退陣直前になって朝鮮学校の高校無償化適用への審査手続きを再開した問題で、民主党の若手国会議員らが今週中にも党内で再開反対の署名活動を始めることが9日、分かった。今月末までに100人を目標に集め、野田佳彦首相に撤回を申し入れる。民主党内で朝鮮学校無償化審査の中止を求める動きが表面化したのは初めて」と伝えています。
これらのニュースを見て思うのは、日本が朝鮮民主主義人民共和国を「敵である」と認識し行動しているということです。「意見が合わない」というレベルではなく、「攻撃対象」「なくすべきもの」として見ています。それが朝鮮学校や在日朝鮮人に対する様々な対応にも現れています。昔から根強く残る「朝鮮蔑視」と拉致以降に顕著化した「朝鮮憎し」が合わさって、国や地方自治体を動かす政治家も、まともで冷静な判断ができていない。
普通に考えて、一番近い国の一つである朝鮮民主主義人民共和国と敵対するよりも仲良くするほうが良いのに決まっています。仲良くすることでメリットこそあれ、デメリットは何もない。アメリカの戦略の中でそのように仕向けられているという問題もありますが、日本側にまず、朝鮮民主主義人民共和国を正しく理解しよう、わかりあおうという姿勢がありません。
そういう意味で、韓国人が書いた「幸せな統一のはなし」という本を、多くの日本人、政治家に読んでもらいたいと思っています。
まず、敵対ではなく仲良くするという立場に立つ、敵対しても何もメリットは生まれない、朝鮮民主主義人民共和国を理解しようとする―このようなところからスタートしないと何も問題は解決しないし、結局、日本自身が(もちろん朝鮮も)損をすることになります。
「幸せな統一のはなし」の中に次のような記述があります。
「北に対する悪意に満ちた報道は、二〇〇〇年代に入り南北関係が改善され民間交流が活発になるにつれなくなった。理由は簡単だ。数多くの国民が平壌と金剛山、開城を行き来し、北の大地と人民たちに直接接する機会が大幅に増えたからである。また、そんな人々がこんな話、あんな話を周囲に伝えることによって反北報道は居場所をなくしてしまった。いくら保守言論と言えども従来の様な『作文』は出来なくなったのだ。」(k)
この本はコリアブックセンター(http://www.krbook.net/)で取り扱っています。もしご希望なら、io@io-web.netに送り先を送ってもらえれば手配します。
原語でも読んでみたいです。