野に還る

ペンタックスをザックに
野山に花や鳥、虫たちを追う。
身を土に返すまでのほんの一時
さあ野遊びの時間の始まりだ。

尾瀬沼の朝

2018-06-22 06:16:52 | 散歩

  最近のエピソードを一つ。先だって知人の古希を祝う会に出たのだが、その席上で

思いもよらぬことがあった。その席を設えた人が突然、私には縁もゆかりもない人の

書いた書物を買ってくれと言い出した。しかも買うのが当然の義務であるかのように言う

一体どういうつもりなのか知らないが、私は勿論買う理由も意志もないので

断ったのだが、それによって相手も無論私も嫌な気持ちになってしまった。

どうしてそんなことをいきなり言い出したのか…、今もって私には全くわからない。

長年の付き合いのある人なのだが、暫く付き合いをやめなくてはと思うと

何かいたたまれない思いになる。

 

  さて、尾瀬沼に泊った翌朝5時、ようやく外は明るくなり始めた。

前夜からの雨で木道は湿って滑りやすい。

 

 長蔵小屋の岸に繋がれたボートがやけに寂しげだ。

 

 もう陽は上がった時刻なのだが……。湖面はまだ深い霧でおおわれている。

 

 人の気配は全く感じられない、一幅の墨絵の中を歩いているようで不思議に心地良い。

 

 聞こえるのは目覚めたばかりのカッコウとホトトギスの鳴き声。そして時折ウグイスや

アカゲラのドラミングが混じる。

 その声も音もたちまち深い霧の向こうに消え失せていく。

 

 前方を歩いているのは先ほど、挨拶を交わした老人だ。今年85歳になるという御老人は、

もう尾瀬に100回以上も来ているのだという。しかも3泊した今回で尾瀬は打ち止めだという……

 その声はきっぱりとしていたものの、寂しさは拭い去れなかった。

人は否応なく老いてゆくのだ。私にも近い将来そんな時が訪れるのだろう。

 その時私は御老人のように晴れやかに顔を上げていられるのだろうか。

 

 

 湖面と空が溶け合った白一色の世界。

 

 雨に濡れたミネカエデの花が吹き始めた風に小さく揺れている。

 

 この辺りはミズバショウの絶景ポイントなのだが……。

 

 少しだけガスが薄まってきたようだ。

 

  夜が明けたのだろうか。

 

 何事もなかったかのように今日も一日が始まる。

 

 

 再びカッコウが近くの枝先に止まり、鳴き始めた。自然の営みのように

何度も何度も同じ調べを繰り返している。

 

 生まれた喜びを謳歌するかのように、コバイケイソウの花が

雨にうたれながら煌めいている。

 

  朝の光を浴びたオオカメノキの花

 

 しばらく歩いていたら気合の入った枯れ株に出会った。生も死も超越した

 随分と年輪を感じさせる風貌だ。

 

 再び深い霧が湖面に立ち込めてきた。

 

 じっと開花の時を待っているハクサンチドリやコバイケイソウ

 

 

 

 

 早朝に深い霧が立ち込める日は晴れるという。今日はいい天気になるのだろうか。

 

 今日はこの辺で。