4年半のドイツ勤務で、ドイツと日本の労働環境の相違をいろいろ体験した。
なかでも、日本に比してドイツが優れているというか進んでいるというかドイツの労働環境の素晴らしさを紹介したい。
ドイツでは休暇優先主義というか、遊ぶために働くというか、会社によって異なるかも知れないが、まず、年次有給休暇が年間で30日(日本は20日)であり、もちろん次年度への繰り越しも可能。残業した場合は、残業分をお金で受け取るか、休暇に振り替える(Compensation)かの選択ができる。例えば、8時間残業したら、1日の休暇に振り替えることが可能で、ドイツは税金が高いせいか、ほとんどの人が休暇に振り替える。
また、風邪を引いたりして病院に行く場合、日本では半休や年休を取ったりする人が多いが、ドイツでは、Doctor’s Appointment として、年休とは別枠で、休暇を取ることができる。病気で年休を食いつぶすようなことはないのである。従って、残業も含めると、年間40日以上の年休を持っている人がほとんどである。
ある時、下記のような会話が職場であった。
休んでいた社員に上司いわく「顔色がいいじゃないか、元気になったようだね。」
社員いわく「医者から暫くスパに行って療養したほうがいいと言われたので、明日から2週間ほど休暇をいただきます。」---これは医者の診断書があるので、もちろん特別休暇。
日本だったら、その会話は……
上司いわく「顔色があまりよくないね。病院で見てもらったほうがいいのでは?」
社員いわく「大丈夫です。仕事がたまっているので、薬でも飲みながら頑張ります。」
この違いは一体何ですかね?
もともと年休の日数が多い上、残業は休暇に振り替え、病気で年休を使うことがないのであるから、当然、長期の休暇(ウアラウプ)を取る人がほとんどである。多くの同僚は年に3週間位の長期休暇を最低2回は取っていた。休暇を取るために仕事をしている印象さえあった。
また、ドイツでは、社員が年休を使用せず、余らしてしまった場合、会社が罰金を支払わなければならない制度が導入されている。従って、会社としては、社員に年休の完全消化を促すことになるので、必然的に、年休消化率100%となる。
年休を取らないのが美学ともなりうる日本とは大違いであり、日本でも罰金制度を導入したら労働環境が改善されるのではないか。ドイツの素晴らしさは、社員にそれだけ年休を消化させても、仕事がしっかり回っていて、産業技術レベルも日本に決して負けていないということである。
また、最近、日本でもどの会社も業績評価制度なるものを導入していると思うが、問題は、上司が勝手に部下を評価し、給与やボーナスにリンクさせていることである。
ドイツの評価制度では、上司が部下を評価し、点数とコメントを書いて、部下の署名を取得しなければ有効にならない。上司が評価内容を部下に文書できちんと説明し、双方で納得する必要がある。人によっては評価内容で数カ月もめたこともあったが、本人が納得の署名をしなければならないとするあたりが画期的である。
評価制度自体は必要だと思うが、日本の多くの会社では評価が一方的になっていて、部下にとっては、結果しかわからず、不満が残っているのではないか?日本の会社もドイツ式の評価制度を学ぶべきであろう。
上記のような労働環境は、ドイツに限らず、欧米の企業も同じかも知れないが、今の日本では、サービス残業は当然で、多くの人が年休は完全消化どころかなかなか取れないことも多く、憂慮すべき状況にある。
今どきの若いサラリーマンを見ていると皆余裕がなく、仕事に疲れている気がする。日本では長期休暇旅行など夢のまた夢の世界かもしれないが、社員にきちんと休暇を取らせる環境を整備し、会社も業績もあげているドイツのような国もあることを見習うべきであろう。