福田ちえのときどき日記

日々の活動や雑感を掲載いたします。

12月議会 本会議一般質問から(2) LRT問題について

2007年12月15日 | 活動報告
12月議会本会議で、今回も「LRT(新交通システム)整備計画」について触れました。

(質問要旨は次の通りです)
コンパクトシティとLRTについて伺います。
現在本市では「第5次宇都宮市総合計画」を策定中です。その中で、ネットワーク型のコンパクトシティの形成を目指すとありますが、目標年次は15年後です。
拡散型の宇都宮市をコンパクトシティ化するための施策と、コンパクト化の実現には何年を要する見通しかを、お伺いします。
また、このコンパクトシティとLRTの関連性についてですが、これまでLRTを導入する目的は交通渋滞緩和に始まり、中心市街地活性化、環境保全対策と、どろなわ的に姿を変えてきました。
次は、コンパクトシティのためにLRTが有効あるいは必要であると理屈付けされることが懸念されます。ついてはコンパクトシティとLRTの関連性についても併せてお考えをお伺いします。

更に、LRTについてでありますが、今年度は導入推進のために8,800万円の予算が計上され、大型看板やチラシなどの広告物の作成、調査研究や業務委託が行われています。
次年度においても同等額の予算を計上し、引き続き広報や調査研究あるいは、整備に向けた次なる一手を進めるおつもりでしょうか。
宇都宮市の人口は平成27年を境に減少すると試算されています。人口の減少により、当初試算されたLRTの乗降人員は当然減少し、維持費が賄えなくなる事態も容易に予測できます。また、LRTの導入には設備投資に加えて、駐車場の確保と整備、JR駅との接続など、本体整備の他にも多大な税金の支出が考えられます。このままの計画ではどう見ても 次世代の子どもにツケをまわし兼ねません。
財政の逼迫している今、公共交通の整備計画は、既存の公共交通のあり方・体系を見直すことにまずは重点を置くべきではないかと考えます。
LRTへの予算配分と併せて、見解を伺います。       以上

この質問に対する市長らの答弁は、将来のLRT事業の実施は、さらに調査研究を進めることにより県民・市民の合意を得る努力をし着実に推し進めたいという内容のものでした。
本市にLRTを導入する理由が、常に一般論に終始している感があって非常にもどかしさを感じるのは私だけではないでしょう。

これまでの市LRT検討会議での議論・報告を見ても、反対意見はそれなりにもっともだが、いちいち聞いていると前に進まないから、といった市長や関係者の本音が明らかに見て取れます。
何か既に約束・合意ができていて、そのシナリオに向かって舵取りをしているかのような印象が拭えません。

現在の知事と市長は積極推進派。県・市両議会の自民党系議員も同様です。
県民・市民の間では賛否両論あり、まだまだ十分な議論が尽くされていない状況ですが、市役所には総合政策部にLRT導入推進室が設けられ検討委員会が定期的に開かれており、住民合意とは別に役所の中でLRTの建設が自己目的化しつつあるとも言われています。

事業の効果をうたった都合の良い資料を山ほど作成し、有識者とされる学者の方々を中心とした権威ある委員会でお墨付きをもらい、住民説明会の手続きも経ました、といったお決まりの役所の事務事業の進め方がなされようとしています。

次なる予算計上項目は何か・・・。
新年度予算案にLRTの概要設計費などの項目が含まれ、それを議会が多数決で容認したとすれば、その時こそ実質的に事業の実施が堂々と認められスタートという事態になります。

原計画に私が反対する理由は・・・、

・いまだに採算性への疑問が拭えない ~ 明らかに赤字となり市民・県民にその負担を強いる大型公共事業であれば、広い理解を得られるよう時間をかけ冷静な議論を行うべきです。

・画期的な交通弱者対策であるとは言い切れない ~ 受益エリアの狭いたった1本のLRTで多くの方々を救済できるとはとても思えない。循環バス、コミュニティーバス、福祉・介護タクシーなどの交通不便地域対策、外出支援サービスの普及・推進などにまずは取り組むべき。

・環境負荷を大きく低減する画期的システムであるとは言い切れない ~ 低公害(電気やハイブリッド)バスで代用できるし、脱クルマ社会を目指すのであれば、まず総合的な公共交通システムの在り方を体系立てて検討する必要がある。

・宇都宮市のまちづくり、活性化に大きく寄与するか ~ LRTを導入しさえすれば中心市街地の活性化などまちづくりが大きく進展するかのような議論には疑問を持たざるを得ない。

公共交通システムを考えるとき必要なのは「何が目的で何が手段か」の議論です。それが私たち市民・県民の判断基準であるはずです。
LRTを整備したらこういう素晴らしいことがある、といったような抽象的で根本を置き去りにしたような議論や広報ばかりが行われています。
必要なことはまず行政課題(目的)を明確にすること。何と何の目的達成のためにはLRTが最良最善のツールなのか?という議論がまだまだ足りないと思います。

LRTの整備を推進したいのであれば、今や将来の私たちの生活の良化や様々な課題の解決といった「目的」を具体的に明確にし、その実現のために考えられる最も最適なツールがLRTであるということを、納得いく形で示していただかないことには早々誰も賛成するわけにはいかないでしょう。

LRTが採算割れになれば市民・県民の負担になる。それでもなお、市民生活に余りある恩恵をもたらすものだから事業に着手するというには、全く決め手に欠けるように思います。
「こういう理由で宇都宮にはバスではなくLRTが必要だ」という、具体的で強い趣旨説明がありません。

地域の足確保対策や高齢者などの交通弱者対策として、バス路線網や小型循環バスの拡充を望む声は多く寄せられており、脱クルマ社会を実現するための公共交通体系の抜本的見直しを実現するためにもLRTのような基幹交通が必要だとする分析もあります。
綿密なバス路線とLRTを連携させることで、効率的に地域の足を確保することは正に理想でしょう。仮にLRTを整備するとしても、既存バスとの連携や自家用車乗り換え拠点(パーク・アンド・ライド拠点)も含めた交通体系とその事業採算性について議論が尽くされるべきです。
その点でも、宇都宮の公共交通体系全体をどうしていくかという視点での検討の成果は見えてきていません。
既存バス業者(関東自動車)との調整が難航しているようですが、LRTの基幹検討会は関東自動車の参加をみないまま進め、同社にはこの先発言の場として交通戦略策定協議会とバスシステム検討委員会を設けるといういびつな形で検討が進められるようです。
問題先送りの良くない不協和音は、さらに市民に不安を煽ります。

また、人と環境に優しいクリーンエネルギーを利用することが目的ならば、軌道に頼らずとも、バスを低公害・低床車にして対応することも可能であるし、また、清原工業団地方面の朝の渋滞解消なら、連結バスなどの大量輸送手段の導入も考えられます。

市民の意見が無視されることのないよう、
今後も市に対しては、事業採算性の詳細な調査分析、交通弱者対策や交通不便地域対策そして市街地活性化対策を含めた総合的なまちづくりビジョンの策定(鬼怒川渡河交通渋滞対策も含めて)への取り組みと市民への提示を求めていきたいと思います。


 「福田ちえ」ホームページ http://www.f-chie.jp