
野猿ライブのステージで、タカさんがファンにむかって何度もハグのジェスチャーをくりかえすたび・・・自分がその場にいなかったこと、野猿に目をむけてさえもいなかったことの、後悔と罪悪感の鈍い痛みを、胸の奥深くに感じます。
野猿ファンとしては新参者の自分が、あれやこれや言うのは、気がひけます。
だけど、だけど・・・書かずにいられない。野猿という現象の、この驚異を。
とんねるずが、昔からよく言っていたことのなかに、
「オレたちを上手く料理してくれ」
と、いうのがありました。
彼らは、デビュー当初から、自らの才能というものに対して、非常に謙虚でした。
そして、経験的にか本能的にかはわからないけれど、スタッフの役割の重要性、良いスタッフたちとのチームワークの重要性、というものをつねに強く意識していました。
タレントだけが肩に力をいれてがんばっても、限界がある。
それよりも、良いスタッフをまわりに集めて、上手くタレントをプロデュースしてもらう方が、良いものがつくれるし、持続可能である。
と、いうことを、とんねるずは知り抜いていました。
彼らが「おかげです」でスタッフをどんどん前面に出していたのは、もしかすると、とんねるずを懸命に輝かせようとしてくれている人々をスタジオの暗闇のなかにうもれさせておくことが、心苦しかったからかもしれません。
ともかく、「タレントを料理」することの大切さは、たとえば次のような方程式で表すことが出来ます。
タレント + 環境 + 良いスタッフ + ちょびっとの幸運 = <真の成功>
じゃあ、この方程式の「タレント」の項を、「そこらへんの人」におきかえたら、どうなるんだろう!?
そこらへんの人 + 環境 + 良いスタッフ + 運 = 成功???
野猿とは、この方程式が成り立つことを証明するための活動でした。
つまり、「環境」と「良いスタッフ」の力が人間にとっていかに大切なことなのかを、野猿は間接的に証明することになったのだと、わたしは思っています。
しかも、野猿のメンバーは、単なる「そこらへんの人」ではない。
彼らこそ、そもそもは「良いスタッフ」のみなさんだったわけです。
ここに、とんねるずをめぐるすべての物事はぐるりとひとめぐりし、その円環はみごとに完結した。
良いスタッフだったみなさんは、タレントを経験してみることによって、タレント自身が黙って背負う大きなものに気づかされたでしょう。そして、タレントを支えるスタッフの役割の大切さも、あらためて実感したでしょう。
タレントは、スタッフたちをプロデュースする側にまわり、彼らを輝かせることによって、スタッフの苦労をあらためて知り、畑違いの活動に必死についてきてくれたそこらへんの若者たちに、限りない愛情をそそいだのです。
「タレント」と「スタッフ」のあいだの境界線が消えて、たがいのアイデンティティが交換された。いりまじり、ひとつになった。
こうして彼らの世界が完全なる循環運動をはじめたということこそが、あれほどまでに、とんねるずと、野猿と、それをささえるスタッフたちと、ファンの、情熱をかきたてたのではないでしょうか。
わたしは、野猿を応援した、そしていまも応援しつづけているファンのみなさんもまた、野猿の一員だと思います。
とんねるずは、とんねるずファンには言いたくても言えなかったようなこと---「応援してくれてありがとう!」「みなさんのおかげで頑張れました!」といったセリフを、野猿ファンには素直に言う。
それは、もちろん野猿がとんねるずとは別物であるから、というのもあるでしょうが、それよりも、
「オレたちの実験につきあってくれてありがとう。ド素人集団をこんなに愛してくれるなんて思わなかった。本当にありがとう」
と、いう思いがあったのではないでしょうか?
実際、それはすごく重要なことだったのです。
野猿の活動は、一曲か二曲適当に歌って、適当に売れて終わったのでは、なんの意味もなかった。
大ヒットしたこと。そして、3年のながきにわたって活動を持続したこと。
これこそが、野猿のもっとも偉大な功績です。
そしてそれをささえたのは、野猿を応援したファンのみなさんなのです。
たかが歌や踊りだろ、と言われればそれまでです。
べつに彼らは人道援助したわけじゃないし、戦争を止めたわけでもない。
彼らの歌や踊りだって、一流のアーティストを超えるレベルまでいったとは言えないのかもしれない。
しかし、だからといって、野猿の意義が過小評価されていい理由にはならないでしょう。
野猿は、「環境」と「良いスタッフ」、そして血の滲むような努力とすばらしいファンがいれば、だれだって成功できるんだぜ!という、とんねるずから花の芸能界への挑戦状だった。
そして、「環境」と「良いスタッフ(仲間)」がそろえば、「そこらへんの人」だって何かを達成することはできるんだ!という、わたしたち一般人への強いメッセージでもあった。
それはとりもなおさず、<とんねるず>の成功の軌跡を、とんねるず自身がいかに客観的に自覚してきたか、の証左でもあるのです。
われわれから見れば、とんねるずの成功は、タカさんとノリさんの豊かな才能の当然の結果なのだけれど、御大本人たちは、そうではない、と考えているのではないでしょうか。
ついこないだまで「そこらへんの人」だった貴明&憲武は、「環境」と「良いスタッフ」に恵まれたからこそトップにのぼりつめることができたんだ---彼らは、そう考えているのではないでしょうか。
だから好きなのです。とんねるずが。
だから拍手を送りたいのです。野猿のみなさんに。それをささえたスタッフに。そして、野猿ファンに。

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