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とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

バスター・キートンの誕生日

2009年10月04日 03時50分37秒 | バスター・キートンと仲間
今日10月4日は、バスター・キートンの誕生日です。

キートンとの出会いは、映画『キートンの蒸気船』のDVDでした。
このブログを始めてしばらくしたころ、とんねるずだけじゃなくいろんな喜劇について書きたいと思い、ネタのひとつとしてなにげなく観たのがきっかけです。
ネットオークションで、500円くらいで買ったDVDでした。

それが、運命の出会いになるとは・・・

『蒸気船』の記事にも思わず書いてしまっているように、ひとめでキートンに恋をしてしまったのでした。

このブログがなかったら、もしかしたらまだキートンを観ていなかったかもしれません。
キートンを知らない人生なんて・・・ああおそろしひ。


しばらく時がたち、今度はまとめていくつか観てみた。

『キートンの大列車追跡』
『セブンチャンス』
『キートンの海底王』
『探偵学入門』

そして、キューピッドの恋の矢は、わたしのハートを決定的に撃ちぬいた!
『文化生活一週間』という短篇が、完全にとどめをさしました。

キートンの監督・主演作品として最初に公開されたのが『文化生活一週間』です。
この短篇には、キートンの魅力のすべてがつまっている。と、今は冷静に分析できてしまうけれど、はじめて観た時の興奮、衝撃は、とても言葉にできるようなもんじゃなかった。

新婚のキートンが住む不条理な新居に笑い、その家が嵐の中でクルクル回る(ほんとうに回る!)のに爆笑し、災難のあとの引っ越しに笑い、そして衝撃的なラストのおもしろさにのたうちまわって笑った。

こんなすごいもの、見たことがない!
こんな笑い、はじめて!

一方バスター・キートンはといえば、試練も嵐も恋のライバルも、すべての天変地異とすべての幸福を、大きな瞳で上目遣いにながめながら、無表情にただ通りすぎてゆくだけ。

キートンは、台風の目です。
荒れ狂う嵐のなかにいて、ひとり静かに、ひとりうつろに、世界をながめている。
嵐と、警官の大軍と、海と、妄想と・・・キートンはあらゆるものと闘っているように見えて、ほんとうはあらゆるものといつのまにか一体化してしまう。
キートンは、抵抗しません。

キートンは、究極の運命論者です。
囚人服を着れば、なんの罪も犯していなくても、つつしんで刑に服す。
結婚証明書にサインしてしまえば、愛していなくてもすなおに彼女についてゆく。

キートンは、究極の平等主義者です。
機関車も、牛も、犯罪者も、ヒロインも、キートンの目に映るすべてのものは同じ地平に立っている。
なぜなら、すべては笑いのためにあるから。しかも最高級の笑いのために。


しかし、"批評家"や"映画愛好家"たちが並べたがるごたく(つまりここまでわたしが書いてきたような)を、一瞬でふきとばしてしまうのは------バスター・キートンの、身体。

並外れた柔軟性や、跳躍力、瞬発力、筋力、バネ。
人間の能力の限界までつきつめたアクションを、彼はいとも軽々とやってのけてしまう。
まるで、そんなことするつもりはなかったとでも言うように、困った顔で。

キートンの身体が生み出す感動は、他の何物にもかえることができません。
彼が全速力で走るだけで、そこに物語がうまれ、音楽が生まれる。
ピンと立てた上体の下で、カ-トゥ-ンのキャラクターのように、足だけが超高速でグルグル回転する(ように見える)。

そのまま光になって地球の外へ飛び出してしまうんじゃないかと思うくらい、キートンは速く走れます。
だけど、心配御無用。彼のからだには高性能のブレーキもちゃあんとついている。
彼が止まる時は、「キキーッ!」っていうブレーキ音が聞こえてきそうな錯覚すらおぼえます。

たぶん、キートンがただただ走る映像を2時間くらい映画館で流しても、十分おカネはとれるはずです。

キートンの右手の人さし指は、その先っぽが欠けています。
赤ん坊キートンが事故にあってなくしたのです。
人さし指の先っぽのない、ゴツゴツしたキートンの右手が、わたしはいとおしくてたまらない。



バスター・キートンは、1895年に生まれました。
それは映画が生まれたのと同じ年です。

なんて象徴的なことでしょう。キートンは、その存在そのものが映画のようです。
彼は、映画をつくるために生まれてきた人です。しかもドタバタ喜劇映画をつくるために。

バスター・キートンとは、映画である。

重いまぶた、白い顔、うすい唇。頭の上にちょこんとのっかるポークパイ・ハット。
キートンは、美しくて、強くて、可愛くて、ちょっと怖くて、そして淋しい。

ブリッジと野球と鉄道が大好きだったキートン。
その愛らしい魂がこの世界に生まれた日に、心からの感謝と"愛"をささげます。








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