東芝クレーマー事件は私に大きな足跡を残していった。かの「
クレーマーっちゅーの!」というダミ声の録音はRealAudio形式でアップロードされていたので、その声を聞きたいがために初めてRealPlayerをインストールしたのだった。
当時のバックアップCDを調べたら「toshiba.rm」と「toshiba.ra」いう名前が付いたいずれも631KBのファイルが残っていた。クリックしたら、グリーンスリーブスの電話保留音にかぶさって「どういうことなんですか」というAKKY氏の独り言があり、続いて「
もしもし電話代わりました」というドスのきいた声が聞こえた。怖いのでそこで止めた。
音声ファイルのタイムスタンプは1999年6月14日だった。もう10年以上前の事件だったのである。
同じフォルダーにAKKY氏の告発ホームページのHTMLファイルが入っている。いずれ消えるだろうと思ったから保存しておいたものである。確か最初はniftyのフォーラム(パソコン通信時代の遺物。niftyの会員だけしか読み書きのできない掲示板のようなもの)で告発したものの誰にも相手にされず、業を煮やしてWeb上にページを作ったら大騒ぎになった事件だったように記憶している。パソコン通信とWebの影響力の違いをまざまざと見せつけられた。
どこから入手したのか記憶も定かではないが、AKKY氏の自宅のとおぼしき写真まで残っていた。たぶん、当時誰かがAKKY氏宅に突撃して写真を撮って晒していたものをダウンロードしていたんだろうと思う。立派な表札の掛かった邸宅である。
保存してあったHTMLファイルを開いてみると、「1999/6/3 開設」とあった。発端となったビデオ「東芝製A-F88型」を2台、AKKY氏が買ったのはその前年、1998年12月28日。かの暴言電話があったのは1999年2月18日。懐かしくもあり悲しくもあり。私の勤務先も含めて、顧客対応のやり方に大きな影響を及ぼした事件であった。
あのクレーマー事件で一躍有名になった男が窃盗で逮捕(ZAKZAK)福岡大学病院職員のパソコンを
1999年、東芝製ビデオテープレコーダーの修理対応が悪いとして、担当者とのやり取りをホームページ(HP)上にアップ、同社に非難が殺到した「東芝クレーマー事件」で一躍有名になった会社員が今年4月、窃盗容疑で逮捕されていたことが3日までに分かった。個人がインターネットの力で大企業に対抗する時代を先駆けた人物だったが、自身の逮捕もネットを通じて全国に知られることとなった。
福岡県警早良署によると、先月30日に逮捕された会社員(48)は4月11日、母親が入院する福岡大学病院の医療相談の部屋で職員のノートパソコン1台(10万円相当)を盗んだ疑い。パソコンには患者の名前や相談内容など約9000人分の情報が入っていた。パソコンは見つかっておらず、データを取り出したかなどは不明。調べに対し、容疑者は容疑を認めているという。現在のところ、情報流出は確認されていない。
容疑者は同病院を頻繁に訪れては、母親の治療に対する苦情を言っていたというが、事件を報じた読売新聞が、容疑者は東芝クレーマー事件でHPを開設した男性と同一人物と書いたことからネット上でも騒ぎになっている。
東芝クレーマー事件でHPを開設したのは「AKKY(アッキー)」と名乗る人物。AKKYは東芝のビデオテープレコーダーを購入直後、ノイズが発生するとして修理に出したが、勝手に改造され、担当窓口も次々と変更。最後は東芝本社社員から「お宅さんみたいのはね、お客さんじゃないんですよ。クレーマーっちゅうの」などと言われた-として抗議のHPを開設した。
HPでは、電話でやり取りした音声も公開されたため、東芝側がHPの一部差し止めを求める仮処分を申請。これが大きく報じられたことでHPのアクセスが急増し、ネットユーザーらの不買運動にまで発展した。その後、東芝は対応の不手際を謝罪したが、製品の初期不良については仕様どおりと主張した。
通常なら、単なる窃盗事件で終わるところだったが、容疑者=AKKYとの報道はクレーマー事件と同様、瞬く間にインターネット上に広まってしまった。ちなみに、今回盗まれたパソコンが東芝製だったかどうかは分かっていない。
ZAKZAK 2009/07/03