いつものように、母の部屋で母とおしゃべり。
母の部屋にはたくさんの写真が飾ってあって、「この写真が元気をくれる」と言うのが母の口癖。
虫太郎の生まれたばかりの頃の写真を指して「この子がね…」と近況を報告したり、七五三の晴れ着で微笑むricoちゃんの写真を指して「この間の運動会では…」と可愛い様子を話したりする。
この頃の話題の中心は、もっぱら我が家の末っ子Y子ちゃんの結婚。
ところが、母は、誰の話をしても、「あなたはいいオバチャンだわね」と評する。
「虫太郎やricoちゃんは私の孫で、Y子ちゃんは私の娘よ」
家族の関係性を説明するのだが、母はどうも誰が誰やら把握できていない模様。
今まで怖くて聞いたことがなかったが、一度聞いてみることにしようと、決心した。
「お母さん、お母さんには何人子供がいたの?」
「そう言うことを聞かれてもねぇ、よくわからないのよねぇ」
「じゃあ、私は誰なの?」
「あなたは、K子さんよ」
「K子はお母さんの何?」
「娘でしょ!」
どうやら私の事はわかるらしい。
「他に子供はいなかったの?」
「さあねぇ…、どうだったんだか」
あんまりはっきりとはしないらしい。
そこで、家族関係を写真で示しながら説明した。
孫の名前を聞けば、聞き覚えはあるらしく、「うんうん」と頷いている。
曾孫達のことも、一緒に過ごした時のことを少しは思い出せるよう。
でも、いろんなことがかなり霧の中でぼんやりとしているらしい。
この話を他の人にすると、「幸せだわね」と言われたりする。
確かに、失うことが幸せな時もあるのかもしれない。
ただ、失った中、霧の中で暮らすことの心細さは、私たちには理解できない。
今回はちょっと聞いてみたけれど、これからはしばらくそうっと聞かずにおいて、できるだけ忘れていることをむりやり白日の下に晒すのは止めようと反省している。
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