エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

“抵抗勢力”戦略は成功しない

2011-09-13 05:51:25 | Weblog
こうした中で、「スマートグリッド革命」により市場で活躍するプレイヤーの顔ぶれも変わります。例えばインターネットの登場によって,コンピュータの世界のプレイヤーはずいぶん変わりました。私がシリコンバレーにいた1993年当時,IBM社は倒産するのではないか,と言われていました。メインフレームから始まったコンピュータの流れからいえば,インターネットはそれを駆逐するほどのものでした。
しかし,IBMは倒産するどころか,さらに大きく飛躍を遂げました。それは、95年にソフトウェア会社のロータス・ディベロップメントを買収したことが象徴するように、毎年のようにソフトウェア会社を買収し、ビジネスモデルをソリューション提供企業としてのものへと大きく転換してきたからです。そのIBMが今,スマートグリッドに並々ならぬ力を注いでいるというのは、大きな意味を感じさせることです。今のIBMはかつてのIBMではありません。今後の「スマートグリッド革命」でさらに変革を遂げることでしょう。
アメリカの電力会社の顔ぶれも変わるでしょう。発電事業、送電事業、配電事業にもっと多様なプレイヤーが参入するという時代に入ってくるのは間違いありません。そこには通信事業者のようなところもあるでしょうし,分散型電源に取り組んでいる企業などもあるでしょう。情報通信企業も参入するでしょう。象徴的な例は、Google社やGE社の地熱発電への参入です。アメリカには世界で最大の地熱資源があります。Google社やGE社はここに着目し、ビジネスモデルを構築できると踏んでいます。
ここで注意を要するのは、クリステンセンの分析において、既存の企業はヴァリューチェーンに組み込まれているがゆえに、過去の技術の延長線上にある“持続的イノベーション”の担い手ではあっても、”破壊的イノベーション”の担い手となりえず、むしろそれに対する“抵抗勢力”として描かれている点を誇張しすぎてはいけないということです。『イノベーションのジレンマ』では、”破壊的イノベーション”によって。既存の優良企業がうまくビジネスを遂行できなくなる例が紹介されています。
 しかし、現実の世界では、”破壊的イノベーション”の登場によりはじめは苦境に陥ることの多い伝統的産業の主体が、やかては立ち直り、大きく拡大した市場へのビジネス戦略の転換により、結果としてはより優良な企業として存続を続けるケースが多くみられます。トランジスタのケースでは、ソニーがパイオニアでしたが、松下、日立、東芝、NECなどの電気メーカーは健在です。デジタルカメラのケースでは、ソニー、カシオが新規参入者で、それにより既存のカメラメーカーは一時的に停滞しましたが、やがては立ち直り、順調に売り上げを伸ばしています。スマートグリッドの世界でこれに相当するのは、電力会社や自動車会社などでしょうが、これらの会社が“抵抗勢力”として機能することは、むしろ自ら市場からの退出を選択するようなものです。