「天空の蜂」 東野圭吾 講談社 2015.6.16
これは、再発行された愛蔵版。
初出は1995年。
地下鉄サリン事件と阪神大震災が起きた年だ。
2015年、東日本大震災を経て映画化。
巨大ヘリを奪った犯人の標的は原発。
要求は日本全土の原発廃棄。
政府はどのような決断を下すのか……。
「個人の主義主張なんか、あんまり意味がない。自分の立っている地面がどういう色をしてるかによって、その人間の色も決められてしまう」
「世の中には、ないと困るが、まともに目にするのは嫌だってものがある。原発も結局は、そういうものの一つってことだ」彼がこの台詞を口にした時、おそらく自衛隊のことも頭にあったに違いない。
ごく最近、福島出身というだけで、放射能と結びつけた心許ない言動を講師に投げつけられた女子大生がいた。
自殺に追い込まれた小学生もいた。
彼らに何の責任も落ち度もない。
電力が間に合わないと言う。
だけど、原発を停止しても特に困らなかったのではないか……。
原発は安価だと喧伝する。
だけど、そこに廃炉費用は含まれてない。
『宇宙戦艦ヤマト』は放射能除去装置を求めて
イスカンダルに飛び立った。
現実には残念ながら、
イスカンダルは存在しない。
大震災で、はじめて原発関連を直視した。
吉田茂のときだったか、そもそも、
いつでも核兵器に転用できる準備のため、
というような文書があった。
そうか、そういうことだったのか。
どうしても
原発を再稼働させたいわけだ。
福島でも、古くなった原発でも、
廃炉、後始末に莫大なお金がかかるとわかっても
全ては税金で賄うわけだから、
政治家の懐が痛むことはない。
彼らの目は、どこを見ているのだろう……。
「糸車」 宇江佐真里 集英社 2013.2.10
立て続けに宇江佐さんの本を読んで
記憶にないっぽい作品を借りてくるのだが、
やはり、これも再読だと
かなり読み進んでからわかった。
まあ、いつものことだ (笑)
松前藩の家老で江戸にいた夫が、
藩内の不平分子の手によって命を落とす羽目に
なった。
そればかりか、一人息子の勇馬も
藩邸を飛び出して行方知れずという。
江戸に向かったお絹は深川の裏長屋に落ち着き、
小間物の行商をしながら、勇馬を探す。
茶屋のお君や、船宿のおひろ、
おひろの娘・おいねなど、
情で一杯ながらも、シャキッとしている女たちが
なんとも好ましい。