ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「総理にされた男」

2017-03-18 22:53:47 | 

 

「総理にされた男」  中山七里    NHK出版    2015.8.25

 

売れない舞台役者・加納慎策は、内閣総理大臣・真垣に瓜二つの容姿とその精緻なものまね芸で、ファンたちの間で密かに話題を集めていた。

ある日、慎策は「国家の一大事」を秘密裏に告げられ、総理の替え玉を引き受けることに。

慎策が直面するのは、政治や経済の課題とは別次元で繰り広げられる、国民の切実な願いを置き去りにした不条理な現実ばかり。

理想の政治とは?

国民の望む政治のかたちとは?

義憤に駆られた慎策は国民の声を代弁して政治を動かすため、その純粋で実直な思いを載せて演説で政治家たちに挑み始める。

 

経済も政治も門外漢の慎策は、秘密に巻き込んだ友人の学者・風間から色々教えてもらったり、アドバイスしてもらう。

風間の説明が、とてもわかりやすかった。

つまり、作者がきちんと理解しているということだ。

 

重鎮のベテラン政治家が言う。

 

「政治が人間の所業である限り、それを動かすのは理屈じゃなくて情だ。そもそも、政治の本質は胡散臭さだ。何といっても、利害の異なる主張を付き合わせて非合理に解決していく作業だからな。理屈だけで固められた信念なんぞ、想定外のことが発生した途端に粉砕されるし、理屈をこねるのなら、官僚の方がよっぽどうまい」

 

震災の復興予算の多くが、復興に関係なさそうなとこりにまで流用されたことについても書かれていた。

 

  元々三党合意で決められたの復興基本法では『被災地の復興の円滑かつ迅速な推進を図ることを目的とする』だった。

  それが国会で成立した基本法案では、いつの間にか『被災地の復興』が『東日本大震災からの復興』に書き換えられ、『活力ある日本の再生』が加筆されていた。つまり、日本を活性化させるという名目さえあれば、被災地の事情に関係なく、予算が執行できるようになってしまっていた。

 

アルカイダに占拠された日本大使館で、

フランスに対する要求を受け入れない限り、

数時間おきに日本人の人質が殺され、

そのシーンがInternetで流される。

 

生命か、国益か、

慎策は苦汁の決断をする。

 

そんなもんかと思っていた政治の世界を

巧みに小説に仕上げている。

重すぎず、軽すぎず、面白く読んだ。

 

 

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