ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「ふたりぐらし」

2019-02-27 23:52:25 | 

 

「ふたりぐらし」 桜木紫乃 新潮社 2018.7.30

 

元映写技師の夫、信好。

母親との確執を解消できないままの妻、紗弓。

一緒に暮らすと決めたあの日から、少しずつ幸せに近づいていく。

そう信じながら、ふたりは夫婦になった。

 

ささやかな喜びも、小さな嘘も、嫉妬も、沈黙も、疑心も、愛も、死も。

ふたりにはすべて、必要なことだったーー

 

 母はたぶん、狡猾な表現を好まぬゆえに直線的なのだ。自分に正直、とはなんと言い得て妙な表現だろう。正直の矛先ひとつで、ひとはいくらでも残酷になれる。

 

 決して祝福される関係ではなかった男と二十四年も付き合えたのは、ひとりで食べて行けるだけの仕事があったからだ、と彼女は言った。

「ひとりで食べて行けるって、けっこうな落とし穴だったのーー」

 

ずっと家族がいなかった岡田が言う。

「自由ってのはあんがい寄る辺ないものなんだな」

 

「健やかな年寄り」という言葉が似合いそうなタキが笑いながら言う。

「年を取れば、どんな諍いも娯楽になっちゃうんだから」

 

そんな風に軽やかに達観できる日が訪れるだろうか……。

 

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