ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「ぼんくら」「日暮らし 上・下」

2018-09-17 23:38:22 | 

 

「ぼんくら」 宮部みゆき 講談社 2000.4.20

 

フッと読みたくなって再読。

例により、あらかた忘れているので、面白く読めた。

 

店子を襲った殺し屋、差配人の出奔、謎の新興宗教騒ぎ。

江戸下町の長屋で連続する事件の裏の陰謀に、

怠けもの同心・井筒平四郎と超美少年・弓之助が挑む。

回向院の茂七の手下・政五郎、驚異の記憶力・おでこ、

煮売り屋・お徳、若き差配人・佐吉、伝書烏の官九郎など、

キャラクター一人ひとりが魅力的。

 

 平四郎が事件にぶつかり、「やっちまったもんはしょうがねえ」と思うのは、罪人の申し状を聞いたり、事の成り行きがよくわかってきたりすると、たいていの場合、「俺だって同じ立場に置かれたら同じことをやるよなぁ」と考えてしまうからなのである。 

 

 「(信心は)心の拠り所になれば良いのです。上手くいったときには神仏のおかげさまとする。まずくいったときには神仏の奉じ方が足りなかったとする。そうしておけば、どうしようもない幸も不幸も、運も不運も、取り扱いようが決まるというわけでございますから」

「世渡りしやすくなる、ということかい?」

 

うん、やっぱり、弓之助とおでこが絶妙だ。

 

 

「日暮らし  上・下」 宮部みゆき 講談社 2005.1.1

 

過去の嘘と隠し事の目眩ましに迷って悩む平四郎。

夜毎の悪夢でおねしょをしても必死に謎と向き合う弓之助。

ねえ叔父上、ここはひとつ、まっさらに戻して考えてみてはいかがでしょう?

 

佐吉の態度に疑心暗鬼を募らせるお恵に弓之助が言う。

 

「人は欲深いものだと、叔父上はよく言います」

「一度自分が親しく思ったものが、どんな理由であれ離れてゆく。それが我慢できないというのも、立派な欲だと。それでも、その欲がなければ人は立ちゆかない。そういう欲はあっていいのだ。だから、別れるのが嫌だから生き物と親しまないというのは、賢いことではないーー」

「そして、いつか別れるのではないかと、別れる前から怖れ怯えて暮らすのも、愚かなことだと教わりました。それは別れが怖いのではなく、自分の手にさしたものを手放したくないという欲に、ただただ振り回されているだけのことなのだから」

 

 

宮部みゆきさんの時代小説をしっかり読んでみたくなった。

 

 

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