ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「大きな鳥にさらわれないように」

2016-06-28 09:18:56 | 

 

「大きな鳥にさらわれないように」  川上弘美   

   講談社    2016.4.22

 

ファンタジイだけど、

シリアスで、妙にフワッと懐かしいような……

 

人類が滅び行く世界ーー

発達に不可欠な人工知能、そしてクローンなど

数千年後か、数万年後か……

 

それぞれの集落を見守る母たち。

ときに出現する、大きな母の存在。

 

生殖能力が衰えるなか、

生まれてくるのは圧倒的に女性が多い。

これも自然の摂理。

 

人類も種のひとつに過ぎない。

生態系の頂点にいられるのは、

地球にとって、刹那とも言える時間帯かも。

 

 

以下、引用。

 

人類とか世界とかは、つまり、おれたちの集まりなんだろう。おれと、おれと、おれと、あんたと、あんたと、あんたの。人類のことを心配するんだとしたら、その中の自分のことだけ、心配してりゃ、いいじゃない。それだけじゃ足りないっていうんなら、そうだなぁ、あとは自分が直接知ってるのは、まあいいよね。

で、自分と、自分のよく知ってる奴らが楽しくやってたら、それでじゅうぶんじゃない。それ以上のことになんて、手がまわらないし、手がまわると思ってるとしたら、そりゃちっとばかり、えらそうなんじゃない?

あんたの言ってることも、少しはわかる。もっと全体のことを考えなきゃ、ってね。

それは、頭でわかるってことだけどね。おれは、おれの体がわかったことしか、信じないよ。(略)あんたの言ってることは、なんかこう、ふわふわそのへんに浮いている、きれいな虫みたいに感じられる。

 

誰もが、他人に自分のことを理解してもらいたがっていた。でも、あたしがかれらのことを真に理解した時には、かれらの全員が、理解したあたしを憎みはじめた。知られる、ということは、支配される、ということと同じなのだと、かれらは感じるのだった。

 

ここには、何でもあるけど、何もないよ。

 

あなたたち、いつかこの世界にいたあなたたち人間よ。どうかあなたたちが、みずからを救うことができますように。

 

 

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