前にも触れた「世界が見た福島原発災害」 大沼安史 緑風出版 2011.6.10
読めば読むほど、政府や東電が姑息で怒りが込み上げてくる。
3月31日ニューヨークタイムズ、エドウィン・ライマン氏の警告――
「日本政府は避難圏を拡大し、飯舘村の人たちを避難させなければならない」として
日本政府を非難。
英国の「スカイ・テレビ」は更に厳しく
「日本、国連の避難圏(勧告)を無視」と――
この段階で世界はこう見ていたのである。IAEAはとにもかくにも、遅ればせながら、
飯舘村の測定値を見て、日本政府に避難を勧告した。しかし、日本政府が勧告を
無視した、と。
チェルノブイリの被爆者の追跡調査を続けているアレクセイ・ヤブロコフは
日本の文科省が「直ちに退避が必要なレベルではない」と言った2日後の3月25日
チェルノブイリの事故による死者が、この25年の間に、癌やその他により
「100万人、あるいはそれ以上」に達していることを明らかにした。
更に「チェルノブイリ」はすでに2世代にわたって深刻な後遺症を残しており、
影響は今後、最低でも5世代(合せて7世代)にわたって続く、と警告。
「フクシマ」の場合、
①複数の炉の多重事故であり
②それもプルトニウムを燃料とする炉を含んだ多重事故であり
③200キロ圏内に3000万人が生活する人口密集地域での多重事故
なので、「チェルノブイリ」をはるかに上回る被害になるであろうと。
「もしも『いま直ちに危険はない』と(当局者が言うのを)聞いたら、なるべく遠くに
なるべく速く逃げなさい」
4月17日、クリントン長官の来日前後を境に、それまで吹き出ていた米国の日本政府
批判が、一気に鎮静化したという。(p120)
著者がこの時点で考えたのは、
原発推進国である米国が主導しフランスが補佐するイニシアチブの下、日本政府および
IAEAなどが協調して「フクシマ」を処理していく国際的な管理体制の構築が完了
したのではないか、ということ。
4月11日、「グーグル」「フクシマ核」のメールアラート
9日フランスで、「フクシマ」発の放射性ヨウ素で汚染された牛乳、葉野菜を、妊婦や
乳幼児は飲んだり食べたりしてはいけないという警告が出た。
人体への被爆問題を研究するフランスのNGO、CRIIRADが「フクシマ」から
放出されたヨウ素131が欧州に到達しており、既に無視できないレベルに達していると
して、「リスクある行動」を避けるように警告したのだった。
事故発生以来、1ヵ月以上、世界の人にあれだけ援助を受けながら、メッセージを
発して来なかった菅直人がパリで発行されている英字紙、インターナショナル・
ヘラルド・トリビューンとワシントン・ポストに寄稿したのは前述警告が出た6日後、
4月15日。しかも、うわついた中身のないメッセージ・・・
著者も言うように2紙だけでなく、せめて近隣諸国や世界中に出すべきだったのに~
p134 4月17日付ガーディアン氏に掲載された水村美苗さんのエッセイに全く同感。
日本政府の指導者たちの「敬語(もどき)」の乱発振り――やたらご丁寧な、逃げ道を
たくさんこしらえた、責任回避の言葉――について
『公僕なら、公の場で、身内の公務員に敬語を使うのは、もうやめなさい。あなたは
私たち民衆が税金で支えている公僕集団の一人なんです。公僕が互いに敬語を使う
のはやめなさい』
ウィキリークスが開示した機密情報は多々あるが有名な「米国務省機密電」の中に
「フクシマ」を引き起こす「日本政府の真実の姿」を暴露するものもあった。
この機密電を報じたのはガーディアン。2011年3月14日。
2008年10月21日、米政府当局者との夕食会での河野太郎の発言。
『河野太郎衆議院議員は、とくに書くの再処理におけるコスト、安全面の問題を
取り上げ、日本の原子力業界に対する強い反対を表明した。
また、「日本の官僚、電力会社が事態遅れの原子力エネルギー戦略を続け、
代替エネルギーの開発を抑圧し、国会議員や国民に情報を隠し続けている」と
厳しく批判した』
注意すべきことが2点。あくまで米大使館側の記録によるものであるということと、
米政府の当局者が来日して河野議員の意見に耳を傾けたという事実。つまり
米政府もまた「日本の原発・原子力の問題」を懸念していた。米政府はかねがね、
安全を軽視して対策をとらない日本政府に対して不信感を抱いていた。
電力会社・経企省とともに河野氏が問題点として挙げているのが
メディアの追随ぶり。電力業界が広告料を武器にメディアを押さえ込んでいる。
(事例を上げ)・・・ここまで来ると「フクシマ」は起こるべくして起きたもの、と
言わざるを得ない。業界と官界の利害が一致したところに、政治家さえも
ないがしろにする傲慢な「日本の原発権力」が聳え立っていた。(p148)
[その権力に乗っかる政治かも多かったと、著者に付け加えたい。]
河野発言を報じた翌3月15日、こんどは英紙デイリー・テレグラフが
IAEAが2008年12月時点で日本政府側に「日本の原発の地震対策は時代遅れの
ものになっており、重大な問題を引き起こす」
と警告していたことを暴露した。
この警告に対し日本側は「フクシマ」に関していえば「救急対応センター」を
建てただけで済ませ、抜本的な対策を怠っていた。
IAEAはまた、日本の原発は過去35年の間に、地震対策を三回しか行っていない
とも指摘した。更に国務省機密電は
「IAEAによれば、日本で最近、いくつかの原発の設計基準を超える地震が起きて
おり、地震安全対策は急務になっている」
「日本政府は裁判所による日本西部の原発の運転を停止する命令に抵抗し…判決を
覆すことに成功している」
などと・・・
麻生内閣の時代、経済産業省大臣は二階俊博氏。彼らがこの警告をどう扱ったか
究明されるべきだ。届いていなかった可能性もあるし・・・
タラレバを言いたくないが、著者も言うようにこの2年以上の無策が残念だ。
日本特有の「原子力村の文化」・・・内部告発を封じ批判を窒息させる「共謀の文化」
その「原子力村」のエネルギー源である「日本の原発」は特殊である。
「キャパシティー・ファクター(運転効率)」が著しく低いことに起因する。
2009年、原発の実働時間はアメリカ90%に対し日本は66%。
米国では24時間メンテを行い、運転しながらもメンテを続けている。
運転期間が短いと・・・一箇所の発電所に多数の原子炉を設置しがちになる。
米国の場合、一ヶ所の発電所に設置できる原発は三基まで。
東電の場合、わざと原発の運転を必要以上に長く止めたりもしているという。
地元の人に入念な点検をしていると思わせるためだというからあきれる。
現場での(作業員の)被爆被害に備え、ヨーロッパの医療機関が骨髄移植の準備態勢を
素早くとった。作業員の被爆問題で日本政府は被爆基準を引き上げながら
「造血幹細胞採取」を拒否するありさまだが、ヨーロッパでは現場の被爆者のために
急性白血病対策の骨髄移植手術の準備に」っていたのだ。
第1報は3月16日のガーディアン。「27カ国500の施設で、準備態勢に入った」と
3月29日の続報では「もし要請があれば日本人被爆者を治療することに、すでの
50以上の病院が同意している」
日本の医師たちも政府に「造血幹細胞採取」を提言しているが、日本政府は
「作業員の負担になる」などと・・・(p182)
今はどうなっているのだろう?
あまりにお粗末だった東電の緊急時マニュアル、
米国では80キロだという避難圏
被爆基準の引き下げ
etc・・・
本当に切実で情けない。
身を守りつつ、できることを探したい。
読めば読むほど、政府や東電が姑息で怒りが込み上げてくる。
3月31日ニューヨークタイムズ、エドウィン・ライマン氏の警告――
「日本政府は避難圏を拡大し、飯舘村の人たちを避難させなければならない」として
日本政府を非難。
英国の「スカイ・テレビ」は更に厳しく
「日本、国連の避難圏(勧告)を無視」と――
この段階で世界はこう見ていたのである。IAEAはとにもかくにも、遅ればせながら、
飯舘村の測定値を見て、日本政府に避難を勧告した。しかし、日本政府が勧告を
無視した、と。
チェルノブイリの被爆者の追跡調査を続けているアレクセイ・ヤブロコフは
日本の文科省が「直ちに退避が必要なレベルではない」と言った2日後の3月25日
チェルノブイリの事故による死者が、この25年の間に、癌やその他により
「100万人、あるいはそれ以上」に達していることを明らかにした。
更に「チェルノブイリ」はすでに2世代にわたって深刻な後遺症を残しており、
影響は今後、最低でも5世代(合せて7世代)にわたって続く、と警告。
「フクシマ」の場合、
①複数の炉の多重事故であり
②それもプルトニウムを燃料とする炉を含んだ多重事故であり
③200キロ圏内に3000万人が生活する人口密集地域での多重事故
なので、「チェルノブイリ」をはるかに上回る被害になるであろうと。
「もしも『いま直ちに危険はない』と(当局者が言うのを)聞いたら、なるべく遠くに
なるべく速く逃げなさい」
4月17日、クリントン長官の来日前後を境に、それまで吹き出ていた米国の日本政府
批判が、一気に鎮静化したという。(p120)
著者がこの時点で考えたのは、
原発推進国である米国が主導しフランスが補佐するイニシアチブの下、日本政府および
IAEAなどが協調して「フクシマ」を処理していく国際的な管理体制の構築が完了
したのではないか、ということ。
4月11日、「グーグル」「フクシマ核」のメールアラート
9日フランスで、「フクシマ」発の放射性ヨウ素で汚染された牛乳、葉野菜を、妊婦や
乳幼児は飲んだり食べたりしてはいけないという警告が出た。
人体への被爆問題を研究するフランスのNGO、CRIIRADが「フクシマ」から
放出されたヨウ素131が欧州に到達しており、既に無視できないレベルに達していると
して、「リスクある行動」を避けるように警告したのだった。
事故発生以来、1ヵ月以上、世界の人にあれだけ援助を受けながら、メッセージを
発して来なかった菅直人がパリで発行されている英字紙、インターナショナル・
ヘラルド・トリビューンとワシントン・ポストに寄稿したのは前述警告が出た6日後、
4月15日。しかも、うわついた中身のないメッセージ・・・
著者も言うように2紙だけでなく、せめて近隣諸国や世界中に出すべきだったのに~
p134 4月17日付ガーディアン氏に掲載された水村美苗さんのエッセイに全く同感。
日本政府の指導者たちの「敬語(もどき)」の乱発振り――やたらご丁寧な、逃げ道を
たくさんこしらえた、責任回避の言葉――について
『公僕なら、公の場で、身内の公務員に敬語を使うのは、もうやめなさい。あなたは
私たち民衆が税金で支えている公僕集団の一人なんです。公僕が互いに敬語を使う
のはやめなさい』
ウィキリークスが開示した機密情報は多々あるが有名な「米国務省機密電」の中に
「フクシマ」を引き起こす「日本政府の真実の姿」を暴露するものもあった。
この機密電を報じたのはガーディアン。2011年3月14日。
2008年10月21日、米政府当局者との夕食会での河野太郎の発言。
『河野太郎衆議院議員は、とくに書くの再処理におけるコスト、安全面の問題を
取り上げ、日本の原子力業界に対する強い反対を表明した。
また、「日本の官僚、電力会社が事態遅れの原子力エネルギー戦略を続け、
代替エネルギーの開発を抑圧し、国会議員や国民に情報を隠し続けている」と
厳しく批判した』
注意すべきことが2点。あくまで米大使館側の記録によるものであるということと、
米政府の当局者が来日して河野議員の意見に耳を傾けたという事実。つまり
米政府もまた「日本の原発・原子力の問題」を懸念していた。米政府はかねがね、
安全を軽視して対策をとらない日本政府に対して不信感を抱いていた。
電力会社・経企省とともに河野氏が問題点として挙げているのが
メディアの追随ぶり。電力業界が広告料を武器にメディアを押さえ込んでいる。
(事例を上げ)・・・ここまで来ると「フクシマ」は起こるべくして起きたもの、と
言わざるを得ない。業界と官界の利害が一致したところに、政治家さえも
ないがしろにする傲慢な「日本の原発権力」が聳え立っていた。(p148)
[その権力に乗っかる政治かも多かったと、著者に付け加えたい。]
河野発言を報じた翌3月15日、こんどは英紙デイリー・テレグラフが
IAEAが2008年12月時点で日本政府側に「日本の原発の地震対策は時代遅れの
ものになっており、重大な問題を引き起こす」
と警告していたことを暴露した。
この警告に対し日本側は「フクシマ」に関していえば「救急対応センター」を
建てただけで済ませ、抜本的な対策を怠っていた。
IAEAはまた、日本の原発は過去35年の間に、地震対策を三回しか行っていない
とも指摘した。更に国務省機密電は
「IAEAによれば、日本で最近、いくつかの原発の設計基準を超える地震が起きて
おり、地震安全対策は急務になっている」
「日本政府は裁判所による日本西部の原発の運転を停止する命令に抵抗し…判決を
覆すことに成功している」
などと・・・
麻生内閣の時代、経済産業省大臣は二階俊博氏。彼らがこの警告をどう扱ったか
究明されるべきだ。届いていなかった可能性もあるし・・・
タラレバを言いたくないが、著者も言うようにこの2年以上の無策が残念だ。
日本特有の「原子力村の文化」・・・内部告発を封じ批判を窒息させる「共謀の文化」
その「原子力村」のエネルギー源である「日本の原発」は特殊である。
「キャパシティー・ファクター(運転効率)」が著しく低いことに起因する。
2009年、原発の実働時間はアメリカ90%に対し日本は66%。
米国では24時間メンテを行い、運転しながらもメンテを続けている。
運転期間が短いと・・・一箇所の発電所に多数の原子炉を設置しがちになる。
米国の場合、一ヶ所の発電所に設置できる原発は三基まで。
東電の場合、わざと原発の運転を必要以上に長く止めたりもしているという。
地元の人に入念な点検をしていると思わせるためだというからあきれる。
現場での(作業員の)被爆被害に備え、ヨーロッパの医療機関が骨髄移植の準備態勢を
素早くとった。作業員の被爆問題で日本政府は被爆基準を引き上げながら
「造血幹細胞採取」を拒否するありさまだが、ヨーロッパでは現場の被爆者のために
急性白血病対策の骨髄移植手術の準備に」っていたのだ。
第1報は3月16日のガーディアン。「27カ国500の施設で、準備態勢に入った」と
3月29日の続報では「もし要請があれば日本人被爆者を治療することに、すでの
50以上の病院が同意している」
日本の医師たちも政府に「造血幹細胞採取」を提言しているが、日本政府は
「作業員の負担になる」などと・・・(p182)
今はどうなっているのだろう?
あまりにお粗末だった東電の緊急時マニュアル、
米国では80キロだという避難圏
被爆基準の引き下げ
etc・・・
本当に切実で情けない。
身を守りつつ、できることを探したい。