感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

HACEK心内膜炎:その特徴とアウトカム 大規模多国家コホートから

2013-07-30 | 感染症
当院に長引く発熱で紹介され受診した中年男性。研修医が聴診器でMR雑音を聴いてすぐに心臓エコー検査を実施して発見してくれました(fine play!) すでにマクロライドやレスピラトリーキノロンを使用されており、血液培養から菌が生えてくるか懸念されましたが、幸いにも(?)複数からグラム陰性菌が生えてきたとのこと(同定中)。あまりHACEKは経験がないので文献で調べました。



PLoS One. 2013 May 17;8(5):e63181.
HACEK infective endocarditis: characteristics and outcomes from a large, multi-national cohort.
Chambers ST, Murdoch D, et.al


要約

・HACEK微生物(Haemophilus 種、Aggregatibacter種、Cardiobacterium.hominis、Eikenella.corrodens、とKingella種)は感染性心内膜炎(IE)のまれな原因
・これらは頻繁に咽頭に定着する偏好性の、グラム陰性菌の小さな不均質なグループであり、長期心内膜炎感染の原因として認識されている
・28カ国64病院の心内膜炎前向きコホート研究で、77人(1.4%)がHACEK endocarditis (HE)を持っていた
・HEは若い年齢(47対61歳、P <0.001)、免疫/血管徴候の高い率(32対20%、p <0.008)と脳卒中(25対17%、p=0.05)と関連していた。
・他の病原菌(N =5514)IEと比較して、うっ血性心不全有病率(15対30%、p =0.004)、院内死亡(4対18%、P =0.001)、1年後フォローアップ(6対20%、P =0.01)はより低率。
・多変量解析では脳卒中は、僧帽弁の疣贅(OR3.60; CI 1.34-9.65、p<0.01)、 よりと若い年齢(OR0.62; CI 0.49-0.90、p <0.01)と関連。
・人工弁心内膜炎は、非HE(24%)よりもHE(35%)の方が一般的

・菌種では、Haemophilusが最も一般的な菌種(40%)
・HACEK種のうち、Kingella sppのみは人工弁心内膜炎(PVE)のエピソードと関連せず
・PVEはH.parainfluenzae IEよりも、A.actinomycetemcomitansでより一般的(10,67% vs 5,18%; p <0.01)
・1ヶ月以上の期間のIEの臨床症状は、H.parainfluenzae(3, 11%)よりも、より頻繁にA.actinomycetemcomitans(8,53%)とCardiobacterium IE(6,55%)を記録した。 (both p<0.01)
・心エコー検査で大動脈弁疣贅は、H.parainfluenzae(6,32%;p<0.05)およびA. actinomycetemcomitans IE(2,29%;p<0.05)よりも、 Cardiobacterium IE(8,89%)でより一般的に同定。
・僧帽弁心内膜炎はH.parainfluenzae(10,53%)そしてA.actinomycetemcomitans(6,86%)で一般的
・Oslers'結節の発生した5例のうち、4例がA.actinomycetemcomitansのIEで発生

・感受性テストをした分離株で、24/25(96%)はペニシリン感受性 (A.aphrophilusで1耐性株)、48/49(98%)はアンピシリン感受性 (A.aphrophilusで1耐性株)、50/50(100%)はセフトリアキソン感受性、および30/32(94%)はゲンタマイシン感受性(H. parainfluenzae で2耐性菌)。

・抗菌薬治療は50名(65%)の患者で報告。37名(74%)はセフトリアキソン(17名でアミノグリコシドと、6名でアンピシリンとの組み合わせで)、6名はペニシリン誘導体(3名でアンピシリン、2名でペニシリンG、および1名でペニシリナーゼ耐性ペニシリン、アミノグリコシドとの組み合わせで)、3名でセファゾリン/セファロチン(アミノグリコシドとの組み合わせ)。
・心臓手術は31名(40%)の患者で入院後中央値4日(IQR1-19)で行われた。

・HEでの院内死亡率は非HEのIEの1/4未満(3,4% vs 998,18%; p<0.001).  黄色ブドウ球菌性IEの1/6
・心不全はHE症例の15%、非HEで30%、黄色ブドウ球菌性IEで37%
・脳卒中は非HEと比較して、HEで一般的(25%)。 黄色ブドウ球菌性IE(20%)、ビリダンス連鎖球菌IE(8%)

・抗凝固療法は、脳卒中の発生に寄与することはほとんどなく、塞栓の出血事象への転換を増加させうるかもしれない

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1 コメント

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コンサルト (motoyasu)
2013-07-31 09:44:51
以前Kingella kingaeのIEを経験しましたが、僧帽弁、大動脈弁ともに弁破壊が強く、準緊急にDVRとなりました。循環器内科と心臓血管外科の関係性にもよりますが、IEは診断した時点で心臓血管外科にお話をしておくことが大切と思います。手術適応になってからでよいとおっしゃる先生もお見えになりますが、もし緊急となった時に、院内にIEの患者さんがいらっしゃるとあらかじめ知っておいた場合には、対応もしやすいと言われたことがあり、自分としてはそうしていました。内科的におさえこめる場合はそう多くなかったので。
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