
このブログの更新はかなり滞ってしまいました。来週に浜松市の内科医会で「免疫不全患者の感染症」と途方もなく大きなタイトルを話すことになったため、予想以上に大量の文献の読み込みを要し時間がかかってしまいました。(よろしければお近くのかたは、19日午後7時半から浜松医療センターで行いますので、お越しください)
その中で印象的だった文献を紹介いたします。
・生物製剤での感染症予防のための現行のガイドラインは、結核予防を除いてはない。
・生物学的製剤での感染症では、結核との関連以外にニューモシスチス、リステリア、レジオネラ、サルモネラなど多数の報告がある。
・これらの微生物は、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(以下ST合剤)に感受性で、この薬はこれらの感染症を防ぐかも。
・ST合剤は実際HIV患者や臓器移植患者など他の免疫不全の患者集団での研究で、罹患率と死亡率の大幅な削減につながっている。
・生物学的製剤使用患者におけるPJPリスクは、合計でPJPの36例を報告した2つの日本の症例対照研究で評価。これらの研究は、IFX治療で0.4%、ADAで0.3%、ETNで0.18%のPJP発症リスクを見いだした。
・一つ目の研究では、ETN治療におけるPJP危険因子 ≥65歳、肺疾患併存、およびMTX使用共存 と同定
・二つ目の研究では、IFX治療では、年齢>65歳、肺併存疾患、およびプレドニゾロン投与量>6 mg /日 関連因子とした
・ST合剤を使用することの潜在的な利点は、この予防のいずれかの特定のリスクと比較検討しなければならない。
・リスクはアレルギーや血球減少などの副作用がある。 これら有害作用はHIV陽性患者や移植レシピエントの21-34%で発生する可能性がある。
・明らかにST感受性微生物の日和見感染発生率は、STで恩恵を受ける他の免疫不全患者集団よりも生物学的製剤を受けた患者でははるかに低い。
・RABBIT研究では、感染リスク特性の経時的変化は、抗TNF-α治療を導入した最初の年で最高であることを示した。
・生物学的製剤を受けている患者は、ST合剤から最良の潜在的な利点を持っているかを予測するため、現在のデータでは不可能であると結論付け。
生物学的製剤によるニューモシスチスなど日和見感染症の発生増加はみとめるもののそのベネフィットと、副作用などのリスクとのバランスに関する正確な分析が困難であること、大規模な臨床試験が必要なことがよく分かります。この論文の面白かった点は、ST合剤はニューモシスチスの予防だけではなくリステリアやレジオネラなどの予防効果なども加えて吟味しているところです。
参考文献
Clin Infect Dis. 2013 Jun;56(11):1621-8.