感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

リウマチ性の徴候を示す悪性疾患

2013-09-25 | 免疫
膠原病の一種である皮膚筋炎と悪性腫瘍との関連はよく知られたところであるが、リウマチ及び/又は筋骨格の症状を持ついくつかの腫瘍随伴症候群が知られている。関節リウマチやリウマチ性多発筋痛症の診断場面では悪性腫瘍にも思いを巡らせる必要がある。ただどの癌がとりわけ多いかは分かっていないようだ。リウマチ性疾患を診断し治療始めても、何か典型的でない経過のときは、いつも悪性腫瘍を疑う必要がある。


まとめ

・リウマチ性疾患とオカルト悪性の徴候や症状の大幅なオーバーラップから、癌は筋骨格系及びリウマチ性疾患の鑑別診断で考慮されることを要する。
・筋骨格系の症状が悪性腫瘍の初期症状かもしれないとの認識は、潜在的に治療可能な悪性腫瘍の早期診断と治療につながる可能性がある。
・リウマチ性疾患を治療するために使用される免疫抑制剤や細胞傷害性薬剤は、悪性腫瘍発展のリスク増をもたらす。
・免疫系による腫瘍低下監視機能の結果であるかもしれない、免疫抑制剤の腫瘍発生リスクも最近検討されている

腫瘍随伴性関節炎

・癌による直接の関節関与は珍しいが、いくつかの腫瘍随伴症候群はその典型的なプレゼンテーションの一部として、関節痛、および/または関節炎がある。炎症性多発性関節炎は、多くの癌に関連付けられている。 
・時には癌性多発性関節炎と呼ばれる炎症性腫瘍性関節症は関節リウマチ(RA)とりわけ遅発性RAと混同されることがある。RAと比べ腫瘍随伴多発性関節炎のプレゼンテーションは発熱と著しく上昇したCRPなど他の全身症状を含める可能性が高い。そのため血管炎やスティル病などのリウマチ性疾患とも混同されうる。
・癌関連のリウマチ性疾患では、免疫複合体形成や抗核抗体、リウマチ因子など免疫活性化の徴候を有しうる
・最も一般的に報告された基礎となる悪性腫瘍は、固形腫瘍、特に肺癌および女性の乳癌である。
・関節炎の症状は通常、DMARDsにほとんど反応しない

RS3PE

・この症候群は、いくつかの症例報告にて種々の癌に関連して記載: 急性骨髄性白血病、肺癌、前立腺癌
・関節炎の発症と悪性腫瘍の診断の間の時間的関連性が密接にあるだけでなく、いくつかのケースでは、リウマチ性疾患の徴候や症状は、基礎となる癌治療の成功で解決した。
・したがって、RS3PE様の提示も、癌関連関節炎のスペクトルの一部と見なされるべきである。


リウマチ性多発筋痛症(PMR)
・一般的に50歳以上で発生し、消耗性の肩と腰の領域の疼痛、著しく上昇した赤沈、および頭痛が特徴。しかし患者のかなりの数が手関節腫脹を含む末梢関節炎を持つ。
・悪性腫瘍発生率はPMR患者の間で増加しているかどうか文献で議論のあるところであるが、潜在性悪性腫瘍の症状はPMRを模倣することができる。 疫学的研究はまた、側頭動脈炎と癌との関連を示唆している。
・いくつかの個々の症例報告では、肺癌、乳癌、子宮頸癌を含む新規癌、多発性骨髄腫、および慢性骨髄性白血病、の側頭動脈炎との密接な関連を報告し、腫瘍随伴プロセスとしてこの血管炎が発生する可能性を示唆している。
・ PMR様症候群は時折播種性癌の最初の臨床表現でありうる。5例の報告ではPMR症状の開始は1~13ヶ月癌の診断に先行。 発熱、発汗、倦怠感などの全身症状はすべての患者に存在。 PMR症候群は、1つ以上の非定型の特徴を明らかにした:すなわち、年齢が50歳未満、典型的な部位1つのみ、典型的な部位であるが非対称関与の関与、追加の関節の痛みを伴う、血沈が40以下または100以上、 そして プレドニゾン10mgの投与後に部分的または遅延して(48時間以上後)改善。癌の原発部位は、肺(n=2)、腎臓(nは= 1)、結腸(n = 3)であり、不明(n=1)であった。  (Arch Intern Med 157. 2381.1997)

・近位筋痛やこわばりの6週間の歴を持つ女性の例。 ESRが138mm/hありリウマチ性多発筋痛(PMR)の診断が行われた。プレドニゾロン20mg /日にて劇的に反応したが、ESRは71-79mm/hの間で上昇したまま。さらなる検査で、IgAκの存在、骨髄検査で多発性骨髄腫と診断された。 (Postgrad Med J 71. 500-502.1995)

参考
Rheum Dis Clin North Am. 2011 Nov;37(4):489-505.

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