Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

ワードローブ (Part-6)。 - グレイのポテンシャル -

2007-10-07 | 物質偏愛
 秋も深まってくると、就職活動中の大学生を街や電車でよく見掛ける。
かつては、就職活動スーツの定番色は紺だったものだが、今では銀行や行政などごく一部の業種でその伝統が継続されているものの、女性スーツの定番色はグレイか黒が主流となっているようだ。

 最もフォーマルな場面を示すところの紺が鳴りを潜め、代わりに幅広くファジィな「中庸」を演出するグレイが席捲してきたというのは面白いというか、日本らしいというか、そんな気がする。場面に最も相応しい色を求めるというよりも、メニューに拘わらず夕食の席で「取り合えずビール」と云ってしまうのと同じ要領で「地味だしみんな着てるし汚れも目立たないし、じゃぁとりあえずグレイで」な感じが満載なのだ。

 日本人の顔色には確かにグレイがよく似合う。若くても熟年でも必ず似合う。
 なにより、一言でグレイと云っても、明るいものから深いものまで、そしてブルーや紫に寄ったもの、茶色が混ざったものなど明度や色味に様々なバリエーションがある。そこに生地の質感や柄の意匠が加わるわけなので、選択肢は非常に幅広い。一生のうちに自分に似合うグレイを幾つ探すことができるか、それはかなり長い年月を費やして愉しめる遊びになるだろう。

 そんなわけで、今日のオーダーは「遊びのある大人のグレイ」。
さて、【中庸】で【無難】な色をどのように料理すれば、フォーマルな遊び心が出来上がる?




(1) 素材
○生地はダーク寄りのミディアムグレイ
 白と濃目の藤色のピンストライプが交互に


(2) デザイン
○ジャケットにはフロントからバックまで総ハンドステッチ(コバ)
○ステッチを考慮して、センターベント付加
○ステッチを考慮して、襟幅7.5cm
○フロント2つボタン、フロントカットに丸みを付加
○袖口本切羽の4つボタンは、間隔をぎりぎりまで狭く
○チェンジポケットなし
○パンツの裾は3.5cmのダブル


(3) 色
○裏地は藤色。今回は袖裏まで同色
○灰がかった藤色への糸色変更は、フラワーホールと袖口全て
○ボタンは水牛の黒ツヤ消し




【過去関連記事】:
ワードローブ。
ワードローブ (Part-2)。
ワードローブ (Part-3)。
ワードローブ (Part-4)。
ワードローブ (Part-5)。