地中海の空に映える、空を貫く赤い色をした車は
神の被造物である地上の生物たちとも肩を並べるほどの
複雑で生々しい曲線をその身にたくさん纏わせた。
ぐにゃぐにゃしているのにすっくと尖った
赤い車から放たれるエンジン音は
ぱちぱちと小さく軋んだ火花を散らす、太陽の色。
金色。
いつしか魂をもったその車の手綱を両手でしかと握るのは
涼やかな眼をして、車と同じくらいに赤い魂を持つ人であった。
凶暴で貪欲な勝利への執念と
まっすぐで冷酷な、揺ぎない知性と
その双方を繋ぐのは、感謝の笑顔であった。
若き鬼神の如きその鞍使いも
厳しい壁との力比べでその足が破壊された瞬間も
抗議の悪態も
切実なる涙も
それらはいつも、私に赤い光を想起させた。
この世で最も美しい赤は
彼の駆る赤と
この身に脈々と流れる赤のみ。
そのひとつが失われたいま、
赤は光を纏って私の心のゆく先に。
わたしもきっと、赤い色した人生を。
神の被造物である地上の生物たちとも肩を並べるほどの
複雑で生々しい曲線をその身にたくさん纏わせた。
ぐにゃぐにゃしているのにすっくと尖った
赤い車から放たれるエンジン音は
ぱちぱちと小さく軋んだ火花を散らす、太陽の色。
金色。
いつしか魂をもったその車の手綱を両手でしかと握るのは
涼やかな眼をして、車と同じくらいに赤い魂を持つ人であった。
凶暴で貪欲な勝利への執念と
まっすぐで冷酷な、揺ぎない知性と
その双方を繋ぐのは、感謝の笑顔であった。
若き鬼神の如きその鞍使いも
厳しい壁との力比べでその足が破壊された瞬間も
抗議の悪態も
切実なる涙も
それらはいつも、私に赤い光を想起させた。
この世で最も美しい赤は
彼の駆る赤と
この身に脈々と流れる赤のみ。
そのひとつが失われたいま、
赤は光を纏って私の心のゆく先に。
わたしもきっと、赤い色した人生を。