Sweet Dadaism

無意味で美しいものこそが、日々を彩る糧となる。

真紅の皇帝。

2006-10-23 | 徒然雑記
地中海の空に映える、空を貫く赤い色をした車は

神の被造物である地上の生物たちとも肩を並べるほどの

複雑で生々しい曲線をその身にたくさん纏わせた。


ぐにゃぐにゃしているのにすっくと尖った

赤い車から放たれるエンジン音は

ぱちぱちと小さく軋んだ火花を散らす、太陽の色。

金色。


いつしか魂をもったその車の手綱を両手でしかと握るのは

涼やかな眼をして、車と同じくらいに赤い魂を持つ人であった。



凶暴で貪欲な勝利への執念と

まっすぐで冷酷な、揺ぎない知性と

その双方を繋ぐのは、感謝の笑顔であった。


若き鬼神の如きその鞍使いも

厳しい壁との力比べでその足が破壊された瞬間も

抗議の悪態も

切実なる涙も

それらはいつも、私に赤い光を想起させた。



この世で最も美しい赤は

彼の駆る赤と

この身に脈々と流れる赤のみ。


そのひとつが失われたいま、

赤は光を纏って私の心のゆく先に。




わたしもきっと、赤い色した人生を。